山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
古川俊治先生
2021/3/18
Significant Scientific 1000 Evidences about COVID-19 (kansensho.or.jp)
ワクチンはどれくらい有効でしょうか?
2021/3/19
ファイザー製のワクチンはイギリス型変異を含む新型コロナウイルス感染に対して高い効果があることを示す報告が複数なされています。発症だけでなく、感染そのものも80%以上防止するという報告もあります。南アフリカ型やブラジル型の変異株に対しては実際の人での効果はまだ報告されていません。
最新の報告は世界的に有名なアメリカの病院であるメイヨークリニックからの報告です。
Impact of the COVID-19 Vaccine on Asymptomatic Infection Among Patients Undergoing Pre-Procedural COVID-19 Molecular Screening | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic (oup.com)
同病院では、全身麻酔が必要な外科手術など、特定の治療を受ける患者の全員に対して、症状の有無に関わらずPCR検査を行っています。4万件以上の検査の陽性率をmRNAワクチン(ファイザー社製およびモデルナ社製)接種者と非接種者で比較しました。その結果、1回目接種後10日目以降で79%、2回目接種当日以降では80%、PCR陽性の発生率が低下したとのことです。2回目接種の効果は、2回目接種後1週間程度以降に出現すると考えられますので、抑制効果は80%より高い可能性が考えられます。mRNAワクチンは、感染そのものを80%以上、抑制することを示唆しています。
次の報告は3月11日にファイザー社から公開されたものです。
Pfizer Inc. - Real-World Evidence Confirms High Effectiveness of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine and Profound Public Health Impact of Vaccination One Year After Pandemic Declared
同社ワクチンの接種が世界最速で進むイスラエルからの報告で、2回目接種して7日目以降の人と、年齢や性別をマッチしたワクチン接種をしていない人と比較すると、無症候性の感染を94%、有症状の感染を97%以上抑制したとしています。別の言い方で、ワクチンを接種していない人では、新型コロナウイルスに感染し発症する確率が44倍、死亡する確率が29倍高いとしています。調査期間(1月17日から3月6日)において同国で同定されたウイルスの80%以上がイギリス型変異(B.1.1.7)であったとしています。詳細なデータは報告されておらず、他の研究者による検証(査読)も受けていません。今後のさらなら解析と検証が求められますが、同社のワクチンがイギリス型変異にも高い効果があることが示唆される実社会(Real world)におけるデータです。
人での有効性を報告した査読付きの論文は3つあります。
一つ目は、臨床試験の結果の報告です。
Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine | NEJM
この報告によると、ファイザー社製ワクチンを2回接種して1週間以降に新型コロナウイルス感染症を発症したのは、18198名中8名であったのに対して、ワクチン非接種群においては、17511名中162名でした。ワクチン2回接種により、発症した人の数は20分の1に減少しました。すなわち、有効率は95%でした。
2つ目と3つ目の論文は、世界で最もワクチン接種が進んでいるイスラエルからの報告です。
2つ目は2月19日にLancet誌に報告された論文です。
Early rate reductions of SARS-CoV-2 infection and COVID-19 in BNT162b2 vaccine recipients - The Lancet
ワクチン接種を行った病院職員約7000名の追跡調査から、1回のみの接種であっても、新型コロナウイルス陽性者の数が85%減少したと報告しています。
3つ目は2月24日にNew England Journal of Medicine誌に報告された論文です。
BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting | NEJM
イスラエルの最大の医療保険グループであるClalit Health Servicesは、国民の53%にあたる470万人が加入しています。加入者のうちファイザー社製のワクチン2回接種を完了した約60万人の一人一人について、年齢、性別、人種、居住地などをマッチさせた非接種者をコントロールとして選び、新型コロナウイルスの陽性者、発症者、入院数、重症者数、死亡者数を比較しました。2回接種後7日目以降の比較では、陽性者数、発症者数、入院者数、重症者数が、ワクチン接種群ではコントロール群に比べて、それぞれ92、94、87、92%低下しています。また1回目接種後14から21日目において、死者数は72%低下しています。
3つの査読後論文で有効性が支持されていますので、ファイザー社製ワクチンが新型コロナウイルスに対して有効である可能性は高いと考えられます。
一方で、これら査読後論文では、被験者全員のPCR検査を行っていませんので、無症候の感染は見逃している可能性があります
被験者全員に対してPCR検査を2週間に一度、行った調査としては、査読前の報告ではありますが、イギリス公衆衛生局からの報告があります。
SIREN Study
この報告によると、1回接種の21日後において、ファイザー社製ワクチンの有効率は72%、2回接種の7日後においては86%であったとしています。
査読前の報告であり、さらなる検証が必要ですが、1回接種でも、感染を70%以上抑制できる可能性が示されています。
入院数に対する効果に関しては、スコットランドから査読前の論文が公表されています。
scotland_firstvaccinedata_preprint.pdf
これによると、ファイザー社製のワクチンを1回接種した場合、ワクチン接種後28から34日目において、新型コロナウイルス感染症での入院が85%減少したと報告されています。
アストラゼネガ社のワクチンでは94%の減少効果があったとのことです。
査読前の論文ですので、さらなる検証が必要です。
モデルナ社製mRNAワクチンの有効性
2021/3/20
モデルナ社製ワクチンはファイザー社製と同様にmRNAワクチンです。アメリカを中心に接種が広がり、感染や発症を予防する効果が報告されています。イギリス型変異に対しても有効であることを示す複数の論文が公表されています。南アフリカ型やブラジル型変異株に対しては効果が減弱する可能性が報告されており、さらなる解析が必要です。
最新の報告は世界的に有名なアメリカの病院であるメイヨークリニックからの報告です。
Impact of the COVID-19 Vaccine on Asymptomatic Infection Among Patients Undergoing Pre-Procedural COVID-19 Molecular Screening | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic (oup.com)
同病院では、全身麻酔が必要な外科手術など、特定の治療を受ける患者の全員に対して、症状の有無に関わらずPCR検査を行っています。4万件以上の検査の陽性率をmRNAワクチン(ファイザー社製およびモデルナ社製)接種者と非接種者で比較しました。その結果、1回目接種後10日目以降で79%、2回目接種当日以降では80%、PCR陽性の発生率が低下したとのことです。2回目接種の効果は、2回目接種後1週間程度以降に出現すると考えられますので、抑制効果は80%より高い可能性が考えられます。mRNAワクチンは、感染そのものを80%以上、抑制することを示唆しています。
臨床試験の結果では
Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine | NEJM
約3万人の被験者をワクチン接種群と非接種群に分け、新型コロナウイルスの発症を見ていますが、ワクチン接種により94%の発症予防効果が報告されています。
変異型ウイルスに対する効果については実験室内での結果が報告されています。
Neutralizing Antibodies Against SARS-CoV-2 Variants After Infection and Vaccination | Infectious Diseases | JAMA | JAMA Network
によると、モデルナ社製のワクチンを接種した人の血清中和活性(ウイルス感染を防ぐ力)は、感染して回復した人よりも強く、イギリス型変異株に対しても、従来のウイルスと同程度の効果が報告されています。
別の論文
Serum Neutralizing Activity Elicited by mRNA-1273 Vaccine | NEJM
では、ワクチン接種者の血清中和活性は、イギリス型変異株に対しては低下しないが、南アフリカ型、ブラジル型、そしてイギリス型にE484K変異が加わったウイルスに対しては、数分の1に低下する可能性が示唆されています。この程度の低下が、実際の人での感染にどれくらい影響するかは、今後の解析が待たれます。