毎日新聞2018年4月6日 22時09分(最終更新 4月6日 23時31分)
東京電力福島第1原発事故の慰謝料増額を求め、福島県浪江町民約1万5000人が申し立てた国の裁判外紛争解決手続き(ADR)について、原子力損害賠償紛争解決センターが町と東電に和解手続きの打ち切りを通知した。通知は5日付で、町が6日発表した。センターの和解案を東電が繰り返し拒否したためで、町民は民事訴訟を起こすかどうかの選択を迫られる。
町は2013年5月、町民の代理人として1人あたり月10万円の精神的賠償を35万円に増額するよう求めてADRを申し立てた。申立人は町民の約7割に上った。センターは14年3月、月5万円(75歳以上は最大月8万円)を一定期間上乗せする和解案を示した。
町は和解案を受け入れたが、東電は一律の和解を拒否。75歳以上の1人とは和解が成立したが、センターの説得に対して、6回にわたり拒否回答を続けた。この間、高齢者など申立人約850人が亡くなったという。
町と弁護団は町民説明会を開き、対応を話し合う方針。弁護団事務局長の浜野泰嘉弁護士は「町民の意向が大前提だが、和解手続きが打ち切られた以上、民事訴訟の提起も考えるほかない」と話した。馬場有町長は「避難者に寄り添うどころか、突き放しているとしか思えない残念な結果だ」とコメントした。東電広報室は「今後も個別の事情に応じた請求ごとに誠実に対応したい」としている。
同センターによると、原発ADRの申し立てはこれまで約2万3000件あり、約1700件が打ち切られている。【宮崎稔樹】