不明の陸自ヘリか 水中で機体のようなもの発見 隊員らしき姿も
隊員10人を乗せて消息を絶ったヘリコプターと同型のUH60JAヘリ=陸上自衛隊ホームページから
沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリが消息を絶った事故で、現場周辺海域を捜索している海上自衛隊の掃海艦「えたじま」が13日午後10時ごろ、宮古島の西にある伊良部島の北側海底で、ヘリの機体とみられるものを発見した。防衛省関係者への取材でわかった。隊員らしき姿もあるといい、防衛省は水中カメラを使うなどして確認作業を進めている。
【写真】沖縄県の宮古島沖で陸上自衛隊のヘリが消息を絶った事故で、発見された物品と発見場所=陸上幕僚監部
事故は6日に発生した。同日午後3時46分ごろ、陸自第8師団第8飛行隊所属の多用途ヘリ「UH60JA」が、宮古島の航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸。予定されたルートを飛んでいたが、同56分ごろ宮古島北西、伊良部島北の洋上でレーダーから消えた。不明になった機体には坂本雄一師団長(陸将)ら10人が乗っていた。
事故後、海上保安庁も巡視船を投入するなどして周辺海域を捜索。事件当日から7日にかけ、レーダー消失地点の北側海域でスライドドアや回転翼のブレードなどが見つかった。8日以降は消失地点の南側で機体の部品が相次いで発見されたが、機体の大部分や隊員10人は不明のままだった。
沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊員10人が乗ったヘリコプターが消息を絶った事故で、13日に見つかったヘリの機体主要部分とみられる物体は水深100メートル前後の海底にあることが、政府関係者への取材で判明した。
海上自衛隊の掃海艦がソナーで探知し、水中カメラで調査したところ、機体らしきものを見つけたという。周辺に隊員らしき人影があるとの情報もある。自衛隊はダイバーによる確認が必要と判断し、深海での作業の準備を進めている。【内橋寿明】
陸自ヘリ不明 隊員と機体とみられるもの発見(2023年4月14日)
機体と隊員発見か 陸自ヘリ 不明から8日
2023/04/14
ヘリ捜索に「飽和潜水」 ダイバーを加圧して通常は潜れない深さに
ボートで捜索する陸上自衛隊員=10日午後3時ごろ、宮古島市・伊良部島沖
沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリが消息を絶った事故で、防衛省は14日午後にも、機体とみられるものが見つかった現場にダイバーを投入する方向で調整に入った。隊員数人とみられる姿も確認されており、詳しい状況を確認する。現場の水深は約100メートルとされ、潜水艦救難艦「ちはや」に乗り込んでいるダイバーによる「飽和潜水」が実施される見通し。
水深が深い場所への潜水は、水圧に体が耐えられないため特殊な装備や対策が必要だ。海上保安庁の場合、通常の潜水士が潜れる深さは40メートルまでで、精鋭の特殊救難隊員でも60メートルまでとされる。
今回の捜索で実施される飽和潜水は、体をあらかじめ深い海の水圧に慣らすことで、通常は潜れない場所にも潜水できる方法。船上で特殊な装置に入り、ヘリウムなどの混合ガスを使って加圧。数時間から1日かけて潜水士の体にガスを取りこみ「飽和状態」にすることで、水圧に慣れた状態にする。地上に戻った際に減圧症になる危険性も防ぐことができる。
飽和潜水は訓練を受けた潜水士が担う。通常は海中の掘削工事や油田開発の現場で活用されるが、事故の捜索では、無人潜水機と異なり直接機内を目視できるため、詳しい状況の確認が可能になる。
北海道・知床半島沖で昨年4月、観光船「KAZUI(カズワン)」が沈没した事故でも、水深約120メートルの海底で発見された船体の調査で飽和潜水が実施された。(江戸川夏樹)