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山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信 イギリス型と南アフリカ型について    2021/3/04

2021年03月05日 19時47分49秒 | 感染症

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

2021/3/04

変異ウイルス(南アフリカ型)の影響は?

南アフリカ型変異株に対しては効果が弱い可能性(2021年2月17日)

Liu et al., Neutralizing Activity of BNT162b2-Elicited Serum — Preliminary Report. New England Journal of Medicine 2月17日オンライン
Neutralizing Activity of BNT162b2-Elicited Serum — Preliminary Report | NEJM
(内容)
新型コロナウイルスの変異型としてイギリス型(B.1.1.7株)、南アフリカ型(B.1.351株)、そしてブラジル型(P.1株)が問題となっている。本論文では、ファイザー社製ワクチンの2回接種を受けた15名から、2回目接種後の2から4週後に採血した血清を用い、新型コロナウイルスの各変異株(図1)に対する中和活性(ウイルスを不活性化する力)を測定した。中活性の測定は、血清を段階的に希釈し、何倍希釈までウイルスの増殖を50%抑制できるかで測定した。
昨年1月にアメリカで分離されたウイルス(USA-WA1/2020系統に)対しては、平均501倍の希釈まで50%の抑制効果(中和活性)が認められた(図2)。
その後、日本を含む多くの国で主流となったD614G変異を導入したウイルスに対しても、同程度の中和活性があった(図2)。この変異はワクチンの効果には影響がない可能性が示唆された。
B.1.351株で見られる受容体結合部位(RBD:ウイルスが細胞に感染するときに重要なSタンパク質の一部分で、受容体と実際に結合する部位)の変異(E484K変異を含む)を導入したウイルスでは、中和活性は331倍希釈まで認められた。RBD部位の変異により、中和活性は3分の2程度に減少する可能性が示唆された。
一方で、B.1.351株でみられるSタンパク質の変異をすべて導入したウイルスでは、184倍希釈でしか中和活性が認められなかった。
ファイザー社製ワクチンのワクチンはSタンパク質全体に対して設計されており、Sタンパク質に多数の変異が生じた南アフリカ型変異では、ワクチン効果への影響が多い可能性が示唆された。

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図1 本論文で調べられた変異

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図2 ワクチン接種後血漿の変異株に対する中和活性

 

イギリスから広がった変異型ウイルス

ロンドンからイギリス全土に拡大した変異型ウイルスについて、イギリスのジョンソン首相が感染力が最大で70%高いと発言されていましたが、イギリス公衆衛生局の発表に基づいていると考えられます。
Variant of concern technical briefing (publishing.service.gov.uk)
この発表は、他の研究者による検証(査読)は受けていませんが、変異型のウイルスの実効再生産数(Rt:一人の感染者から何人に感染するか)は、従来のウイルスより0.52から0.74程度高いと報告しています。

これが本当であれば影響は極めて深刻です。今回の第3波における日本国内のRtは最大で1.5程度であったと推定されています。
新型コロナウイルス 国内感染の状況 (toyokeizai.net)
緊急事態宣言による国民の努力で、2月上旬には0.7程度まで減少し、現在でも0.9弱と1未満を維持しています。緊急事態宣言のRtに対する効果は0.8程度であったと言えます。もしイギリス変異株で0.74上昇するとすれば、緊急事態宣言による全国民の努力が帳消しになってしまうことになります。もしこの変異株が主体で第4波が起これば、今回と同様の緊急事態宣言の内容では、収束には向かわない可能性があります。またRtが1未満の現状でも、変異株に限ってみれば1をはるかに上回っている計算になり、どんどん増えていることになります。実際、神戸市内では変異株の割合が急速に増加していると久元市長が会見されていました。
神戸市で変異株36件確認 英国由来など、独自発表 | 共同通信 (kiji.is)

変異株による第4波を防ぐため、水際対策の強化と、変異株感染者に対する徹底的な追跡調査が必要と思われます。

イギリス公衆衛生局からの追加発表(未査読)によると、ウイルスに感染した人から2次感染の割合は、従来のウイルスでは9.8%にあったのに対して、変異型ウイルスでは15.1%に増加していると報告されています。
Investigation of novel SARS-CoV-2 variant (202012/01): Technical briefing 2 (publishing.service.gov.uk)

病原性については、上記の報告では従来のウイルスと差は認められないとされていました。
しかし、その後の報告によると、変異型ウイルスの致死率は、従来のウイルスと比べて1.3から1.9倍程度高い可能性があるとされています。
NERVTAG_note_on_B.1.1.7_severity_for_SAGE_77__1_.pdf (publishing.service.gov.uk)

いずれの方向も査読を受けておらず、今後のさらなる研究が必要です。


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