鹿島川の近くでは、27日も水が残り、田畑や道路が水没している地域があった=2019年10月27日午後3時22分、千葉県佐倉市、諫山卓弥撮影
今秋に東日本を襲った台風15、19号による農林水産業の被害額が、27日までの国の集計で1700億円を超えている。まだ把握できていない被害があるうえ、千葉県を中心に浸水被害をもたらした先週末の台風21号の被害も加えれば、さらに膨らむ見通し。実りの秋を迎えていた農業に大きな爪痕が残されている。
農林水産省が27日までに各都道府県から受けた報告の集計では、9月に上陸した台風15号の被害額は509億2千万円、10月の台風19号は1221億7千万円。この二つの台風により、計約3万3千ヘクタールの農作物や果樹、67万匹を超える家畜のほか、農業用ハウスなどでも約2万6千件の被害があった。
農地の損壊は約8千カ所、農業用施設の被害は約9千カ所で確認されている。ただ、都道府県が把握していない被害が数多く残っているとみられ、被害の全容はいまもつかめていない。特に台風19号の被害額は1日で数十億円規模で積み上がっており、今後も拡大することが確実だ。
また、25日には台風21号に…
残り:269文字/全文:691文字
【台風19号】目立つ想定域外の浸水 栃木市のハザードマップ
台風19号により広範囲が浸水した栃木市では、ハザードマップで浸水想定区域に指定されていない地域での浸水が目立った。市内では多数の小河川が氾濫したが、ハザードマップの対象でなかった。一方対象河川の流域でも、浸水想定区域外にもかかわらず浸水した場所があった。ハザードマップは今年4月に改訂したばかりだが、早くも見直しが必要となってきそうだ。同市は「区域ではないからといって安心はできない」と注意を呼び掛けている。
ハザードマップは、国、県が管理する洪水予報河川などを対象に、国と県が「1千年に1度」の降雨量を想定し洪水浸水想定区域図を公表。同市がそれを踏襲し、4年前の関東東北豪雨の浸水実績なども踏まえ今年4月に改訂した。
対象河川は台風19号で堤防の複数箇所が決壊した永野川、巴波(うずま)川など6河川。しかし今回決壊した三杉川、越水した柏倉川をはじめとした小河川は、国、県の管理ではないためマップの対象外だった。皆川城内町、岩舟町小野寺などが浸水想定区域でないのにもかかわらず浸水した。
同市危機管理課によると、小河川については河川の多くに水位計が設置されていないため、浸水区域の推計が難しいという。今後複数河川で水位計を設置する方針だが「データの蓄積がないと浸水区域の推計は難しい」といい、反映には時間がかかるとみられる。
一方、県が管理する永野川の流域では、大平地域を中心に浸水想定区域の広範囲で浸水したが、区域外だった大平西小でも10センチほど床上浸水するなどした。県が作成した区域図について、県河川課は「今後大きく見直す必要は出てくる」とし「今後は河川監視カメラ、水位計の設置も含めて、どうあるべきか検証する必要があると思う」とした。
同市危機管理課はマップの改訂後、説明会などで「大雨の際は浸水想定区域外でも浸水する恐れがある」と注意喚起してきた。同課は「マップに含まれていないものには小河川の氾濫や(雨水が用水路に流入しあふれるなどの)内水氾濫もある。想定以上の水が来る危険性があるということは理解しておいてほしい」と話している。
台風19号、13都県の図書館被災 「ぬれても復元できる」保全呼び掛け
「一週間も水に漬かってしまった。本を助けたいけど…」。泥と消毒液の臭いが立ち込める東京都市大学(世田谷区)の図書館で、スタッフらはそうつぶやき、かびた本の整理や清掃をしていた。蔵書二十九万冊のうち九万冊を置く書庫を含めた地下が水没し、一階も足首まで水に漬かった。
地下の水抜きは二十日に終えたばかりで、被害の全容把握はできていない。貴重図書約九千冊は四階の専用室に保管し、図書館前の道路には水の浸入を防ぐ緩やかな傾斜も付けていたが、企画・広報室の山本卓課長は「結果を見ると対策は不十分。同じことを起こさないよう原因を調べ、検証する」と話した。
国立大学図書館協会によると、東京大(文京区)、東京学芸大(小金井市)、東北大(仙台市)、富山大(富山市)などでも雨漏りや建物の一部が破損。国立市の一橋大付属図書館では屋上から水が漏れ、四階から地下一階で推計一万~二万冊がぬれた。
一方で、過去の水害の教訓を生かした図書館もあった。栃木県小山市の白鴎(はくおう)大総合図書館大行寺分館は、地下が約四十センチ、一階が約三センチ浸水したが、図書の被害はなかった。
四年前の台風では、地下の書庫が浸水し、十六世紀に出版された貴重な本を含む約五万冊が被害に遭った。そこで地下にできるだけ本を置かず、学習スペースを整備。台風19号時には、避難所だった同大にいた学生約百人が、自主的に地下と一階の書籍約二万冊、電子黒板、パソコンなどを二階へ移した。同分館の田沼泰彦事務長は「学生が研究にモチベーションを持つには、本が存在すること自体が重要。知的財産が守られ、ありがたい」と話す。
災害で被災した資料の保全に取り組む筑波大の白井哲哉教授(歴史学)は「地下書庫は、外気の温湿度の変動による本の劣化を防ぐため珍しくないが、地上でも二重壁や空調で対応できる」と指摘。棚の下段に本を置かない、貴重本は別の場所に保管するといった対処法もあるとし、「残されてきた遺産をないがしろにしてはいけない。ぬれても復元する技術があり、捨てないでほしい」と呼び掛ける。
(東京新聞)
台風19号で水没した東京都市大学の図書館=23日、東京都世田谷区の東京都市大学で(松崎浩一撮影) |
![]() |
【千葉の大規模な被害】経過
冠水続く千葉・佐倉市 ポンプ車で夜通し排水作業(19/10/26)
大規模冠水の千葉「ここまで被害大きくなるとは・・・」(19/10/26)
豪雨の千葉 15河川氾濫 商業施設浸水で「残念」 10/26
大規模冠水の千葉・佐倉市 ポンプ排水で水位低下も(19/10/27)
浸水する車中から家族に最期の電話 迂回路で氾濫に(19/10/28)
デイリー新潮
2019年10月28日 10時15分
台風19号の影響により、停電や断水が続いた武蔵小杉の「高級タワマン」
ある住民は「台風後すぐに停電してしまい、まだ復旧していません」と語った
トイレも使えず、便意のたびに47階から1階まで階段を上り下りするという
(後略)
台風21号や低気圧の影響に伴う記録的な大雨による住宅の浸水被害が、千葉、福島、群馬など6県で計3241棟に上っていることが分かった。今月12日に上陸した台風19号に次いで、再度被害を受けた被災地もある。各地では水が引いた28日以降、家屋などの調査が本格化するため、被害はさらに増える見込み。
25日の大雨による死者は28日午前10時現在、10人で、行方不明者は2人。読売新聞が被災自治体に取材したところ、建物被害は7都県計3390棟で、大半は浸水によるものだった。
浸水被害の内訳は、床上1270棟、床下1971棟。千葉県の浸水家屋は16市町1237棟で全体の約4割に上った。福島県999棟、群馬県786棟、山形県168棟、茨城県49棟、埼玉県2棟と続いている。
被害が最も大きかった千葉県では、中心市街地が大規模冠水した茂原市で717棟が浸水。同市は調査を始めたばかりで、27日に住宅地の水が引いた佐倉市も未集計のため、被害の全容はわかっていない。
国土交通省の28日午前8時半時点での集計では、大雨で河川が氾濫したのは千葉や福島など5県が管理する34河川で、約2400ヘクタールが浸水した。福島県の夏井川など7河川では、台風19号でも浸水被害が起きていた。土砂災害は、千葉など4県で計17件に上った。
JR東日本千葉支社によると、運転を見合わせていた総武線榎戸―成東間は28日正午過ぎに再開した。一方、久留里線久留里―上総亀山間は11月上旬に運転再開を見込んでいる。
29日は低気圧や前線の影響で、西日本や東日本の広い範囲で雨が降る見込み。気象庁は、被災地では、少ない雨でも土砂災害や洪水の危険性があるとして、注意を呼びかけている。
倒壊したゴルフ練習場 鉄柱の撤去開始 千葉・市原市
9月の台風15号の影響で、鉄柱が倒れ住宅を直撃した、千葉・市原市のゴルフ練習場で、10月28日、ようやく鉄柱の撤去作業が始まった。
倒れてから一か月経つ、撤去には二か月かかる。
“仮堤防が未完成”で氾濫 4河川で 25日の大雨
2019年10月28日 12時43分気象 NHK
今月25日の低気圧などの影響による大雨では、千葉県と茨城県、埼玉県、福島県、宮城県の合わせて34の河川で越水などの氾濫が発生しました。
このうち、宮城県角田市の高倉川、宮城県丸森町の新川、福島県いわき市の夏井川、福島県相馬市の小泉川では、台風19号で堤防が決壊した場所から氾濫が発生したということです。
この4つの河川では、まだすべての仮堤防が完成しておらず、土のうを積んで対応していたということです。
仮堤防が完成していない場所では、まとまった雨が降った際に川から水があふれやすくなっていることから、国土交通省は、早めの避難を心がけてほしいと呼びかけています。