その結果、アフリカの人々が遺伝的に大きく関与している点は、歴史記録に基づいた研究者らの予想とほぼ一致したが、大きな例外がいくつかあった。

 例えば、米大陸全体のアフリカ系住民の大部分のルーツは現在のアンゴラやコンゴ民主共和国にあり、これは主要な奴隷貿易ルートに沿っているが、米国のアフリカ系ではナイジェリアにルーツを持つ人が大きな割合を占めていた。彼らはカリブ海経由の大陸間奴隷貿易で連れてこられた人々だと思われる。

 対照的に、アフリカ系米国人とセネガンビア(Senegambia)地域(セネガルとガンビア周辺の西アフリカ)との遺伝的つながりは、北米で奴隷船を下船した人数と比較して予想されていたよりも少なかった。これは下船後に北米のプランテーションで働いた奴隷の多くが、マラリアで死んだためという悲惨な理由が推測される。

 調査に参加した集団遺伝学者のスティーブン・ミチェレッティ(Steven Micheletti)氏はAFPの取材に対し、「セネガンビア人はアフリカでは一般的に稲作を行っていたので、米大陸でも稲作のプランテーションへ送られることが多かった」「それらのプランテーションではしばしばマラリアが流行し、死亡率が高かったため、現在のアフリカ系米国人におけるセネガンビア人の遺伝的痕跡が少なくなっているのだろう」と述べた。

■「白人化」政策

 政府や奴隷所有者らの行いはアフリカ系の人々の遺伝的特徴にも多大な影響を与えた。

 米大陸に連れてこられ奴隷となった人々の60%以上が男性だったという事実にもかかわらず、遺伝子データを比較すると、米大陸全体の現代の遺伝子プールにおけるアフリカ女性の関与が偏って強いことが明らかになった。その多くは、白人男性が奴隷化されたアフリカ女性をレイプしたことや、子どもをたくさん産めば奴隷状態から解放するという約束のような性的搾取が原因とされる。

 しかも、この偏りは米国よりも、大西洋の航海で生き残った奴隷の70%が下船した中南米でいっそう顕著なことが示された。一方、米国では奴隷所有者が奴隷同士の結婚を促し、その子どもたちに次の世代の奴隷労働力を形成させていた。