毎日新聞
学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻雅子さん(49)が2019年3月、赤木さんの元上司と面会した際の詳細なやりとりが、雅子さん側が大阪地裁に提出した録音データの記録で判明した。同省理財局長だった佐川宣寿氏について、元上司は「(改ざんは)佐川さんの判断」と断言。国有地を売却する際、約8億円を値引きした点については「8億の算出に問題がある」などと明かしていた。
国有地売却を中心的に担った元上司の発言が明らかになるのは初めて。雅子さんは国と佐川氏に計約1億1000万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしており、14日午後に第2回の口頭弁論が開かれる。
財務局は16年6月、大阪府豊中市の国有地を1億3400万円で学園に売却。土地の鑑定価格から、地中に埋まっていたごみの撤去費などとして約8億円を値引きしたことや、学園が設置を計画した小学校の名誉校長に、安倍晋三前首相の妻昭恵氏が一時就任したことが発覚した。財務省は学園との交渉に関する決裁文書を改ざんし、その作業に加担させられた赤木さんは18年3月に自殺した。
雅子さんと面会した際の音声記録によると、元上司は改ざんについて、「赤木さんは涙を流しながら抵抗していた。僕自身も抵抗したけど止めきれなかった。やる必要もないと思っていた」と言及。国有地売却については、「確実に撤去する費用が8億になるかというところの確信というか、確証が取れてない」などと説明した。
一方、元上司は安倍前首相や昭恵氏の関与について、「あの人らに言われて(売却額を)減額するとか、そういうようなことは一切ない」と話し、そんたくについても否定した。
赤木さんは改ざんを指示された際の経緯を記録したファイルを残しているとされ、元上司は「これを見たら、我々がどういう過程でやったのか全部分かる」と発言。雅子さん側は訴訟で、国にこのファイルの提出も求めている。【伊藤遥】
主な発言は以下の通り(録音データより)。( )は補足。
改ざんについて
・初めから赤木さんは改ざんに抵抗していました。正直、涙を流しながら抵抗していた。本省(財務省)に、僕自身も抵抗はしていたんですけれども、止めきれなかった。
・(赤木さんが改ざんの経緯について記したファイルを)パラッとだけ見たんです。「めっちゃきれいに整理してあるわ」と。全部書いてあるやんと。どこがどうで、何がどういう本省の指示かっていうこと。これ見てもうたら、我々がどういう過程でやったかというのが全部分かる。
・なんか変な口ごもった話になったら申し訳ないですけど、もちろん(改ざんの)判断は佐川さんの判断です。
・(改ざんを)手放しでは受け入れてはないです。抵抗はしました。やる必要もないと思っていましたし。僕自身もやはりあの当時、かなり追い込められているところもあって。赤木さんと同じように、朝遅くまで仕事をして。何人けがするか分からないような状況の中で、「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したい」ということでやりました。そこはもう追い詰められた状況の中で、少しでも作業量を減らすためにやった。僕自身はそういう理解です。当時、「なんで国会議員の名前を消さなあかんねん」みたいなのはあったんですけど、僕自身も少し引け目はありました。
安倍晋三前首相の関与について
・僕は安倍さんとかから(国有地売却について)声がかかったら、正直売るのはやめていると思います。だから、あの人らに言われて減額するとか、そういうようなことは一切ないです。
・そんたくとかっていう言葉が出てますけど、そんなことはしてません。そういうことをしたというのであれば、僕は検察でもお話しして、背任でも何でも、ろう屋にでも入ります。
国有地の売却額について
・(値引きの根拠となる)地下埋設物がどれだけ埋まっていて、どれだけの(撤去)費用がかかって、どれだけ売り払い価格から控除しなければならないかというところを、自分たちは最後まで調べようと努力したんです。(国有地を管理していた国土交通省の)大阪航空局のせいにするつもりも今さらないんですけど、彼らは動かなかったんです。売り払いの鑑定評価をするにしても、地下埋設物の調査をするにしても、航空局が(財務省の)主計局に言って予算を取って、それで動かす。我々は予算を取る権限がない。自分らでスコップで掘って調べるわけにはいかないですから。
・航空局が持ってきたのが8億だったということで、それを鑑定評価額から引いたというだけなんです。8億の算出に問題があるわけです。確実に撤去する費用が8億になるかというところの確信というか、確証が取れてないんです。