1966年に静岡県でみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判で、無罪を言い渡した国井恒志(こうし)裁判長(58)は、1994年に任官した。前橋地家裁部総括判事や東京高裁判事などを経て、2021年10月に静岡地家裁部総括判事に就いた。
【異例の経緯】なぜ死刑囚にされたのか 袴田巌さん58年後の無罪
前橋地裁時代の20年3月には、前橋市内で当時16歳の高校生らが車にはねられて死傷した事故で、事故原因とされた意識障害の危険性を「運転手が予見できたとはいえない」として無罪を言い渡した。
今年7月には、静岡県内の認定こども園で当時3歳の女児が通園バスに取り残されて死亡した事件で、前理事長兼園長に実刑判決を言い渡した。判決理由を述べた後、「(女児は)両親を幸せにするために生まれてきた。子どもの命を守る大切さを考えなければならない」と声を詰まらせながら説諭した。
国井裁判長らは、袴田さんの再審の初公判前の昨年9月、静岡地裁浜松支部で本人と面会した。弁護団が長年の拘禁生活で精神を病んで意思疎通が難しい袴田さんの出廷免除を求めており、この可否を判断するためだったとみられる。面会を経て、地裁は出廷免除を認めた。(金子和史)
袴田巌さんに再審無罪判決、死刑確定事件で戦後5件目…みそタンクの衣類で証拠捏造に言及
読売 2024/9/26
静岡県一家4人殺害事件の再審判決で、静岡地裁は26日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)に無罪(求刑・死刑)を言い渡した。死刑が確定した事件で再審無罪となるのは戦後5件目。
事件発生から1年2月後に現場近くのみそタンクから見つかり、確定判決が「犯行着衣」と認定した「5点の衣類」について、国井 恒志 裁判長は「捜査機関が加工して隠匿したものだ」と述べ、証拠の「 捏造 」に言及した。
事件は1966年6月30日に起きた。静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社の専務宅が全焼し、専務(当時41歳)と妻(同39歳)のほか、次女(同17歳)と長男(同14歳)の他殺体が見つかった。
同社従業員だった袴田さんは逮捕後に「自白」したが、公判では一貫して無罪を主張。だが、80年に死刑が確定した。2008年からの第2次再審請求で昨年3月、再審開始が決まった。袴田さんは14年に釈放されている。
(画像はネットから)