小池百合子・東京都知事(71)がついに3選を目指して知事選に立候補することを宣言した。既に出馬表明している蓮舫氏との事実上の保革一騎打ちの様相なのだが、支援するはずの都議会自民内部はどうも一枚岩ではない様子。微妙な距離感ばかりが浮かび上がる。
都議会の最終日の6月12日午後。終了後、小池知事が向かった公明党都議団の控室。にこやかに居並ぶ都議一人ひとりを回りながら、両手で握手を交わし、相思相愛ぶりを見せつけた。
■微妙な空気
自民党会派の控室ではいささか様子が異なった。双方ともに若干緊張した面持ち。小池知事を迎える拍手はまばらだった。
「ぜひ一緒に、都政改革3.0実現に向けて力を合わせていきたいと思います」
都議は、直前の出馬宣言で小池知事が語ったキーワードをあいさつに込める気配りを見せた。しかし小池知事の反応はあっさりしたものだった。
「ありがとうございます」
改革に触れることも、握手を交わすこともなく、控室を後にした。
裏金問題で逆風下にある自民党は、今回独自候補を立てず、無所属で出馬する小池氏支持を早々に表明した。「不戦敗」を避けるためだというのが大方の見方だ。 しかしその決断は必ずしも自民で一致した考えではないという。
「われわれの中には、今でも腹の中で面白くないと思っている人もいるんです」
自民党都議の1人が言う「今でも」は、8年前の小池氏初当選時にさかのぼる。当時小池氏は自民党都連について、「どこで誰が何を決めているのか不透明なブラックボックス」と揶揄し、対抗心を燃やした。
ブラックボックスの中心にいたのが、都連のドンと呼ばれた内田茂氏(故人)。小池氏は内田氏と真っ向から対立した。しかし、小池氏はその後、対決姿勢を緩め、自民との距離を徐々に縮めてきた。
「内田氏が2013年の都議会選挙の時に掲げたスローガンなんですよ。小池さんはそれを継承している」
そう話すのは、元テレビ朝日アナウンサーで、自民党都議の川松真一朗氏。 川松氏は小池氏の変化に理解を示す。
「2期目に入ったこの4年間ですね。小池さんの政策が自民党に近よって来た。現実的になって、地に足がついてきたということ。都民ファーストだけではなく、自民党の築き上げて来た政策をやってくれるのはいいことだと思います」
別の自民党都議は小池氏の立候補表明に冷ややかだ。
内田氏を慕ってきた都議は今も多く、小池氏に対して抵抗感がある。
「ブラックボックスをぶっ壊すと息巻いていたのに、その舌の根が乾かないうちに…。彼女はただ権力を求めている」
「見せかけで応援している人も多いと思う。党内一致している訳ではない」
■裏金問題の影響は
自民党の裏金問題は依然として、都連に大きな影を落としている。
萩生田光一衆院議員の裏金は5年で2728万円にのぼった。「党の役職停止1年」の処分を受けたが、5月15日、都連の会長に再任された。この再任が都連のためにならないと思っている議員が多いという。
「再任にはみんなブーイングですよ。党内の自浄作用能力を疑われる」 (前出都議)
小池氏が選挙活動で自民にどの程度の応援を求めていくのかは注目されるところだ。
「萩生田氏が街頭演説にやってきたとしても小池さんは離れるでしょう。マイナス(効果)だから」
小池氏が特別顧問を務める都民ファーストはどうか。
4月の衆院東京15区補選で、都民ファースト推薦の乙武洋匡氏は5位に沈み、ここもまたかつての勢いに翳りを見せている。 結果について内部で不協和音もあるという。
小池氏支持でそれぞれの議員の態度が明快で頼もしい存在なのは公明党だけかもしれない。
「蓮舫さんが共産党と連携していますからね。そうなると、公明党が黙ってない。共産党が応援すればするほど、公明党が小池さんの応援に熱心になっていく」(同)
当選後の都政運営を見据えれば、小池氏にとって都議会自民の存在は大きい。
「都民ファーストに加えて自民、公明が都議会で小池さんについてくれれば、磐石な体制を築けるわけですよ」
小池氏が出馬表明した都議会で、小池氏の不信任案が提出される一幕もあった。提出したのは、上田令子都議。都民ファーストの創設メンバーの1人だったが、小池氏の政治手法を批判して離党。現在は地域政党「自由を守る会」代表となっている。
不信任案に「賛成」して起立したのは上田都議のみで否決された。
上田氏は不信任案を出した理由をこう話す。
「小池知事の2期8年を私は全く評価していない。学歴詐称に関しても何の説明もない。もう政治から引退すべきだと考えています」
8年の長きに渡る小池体制には、評価と批判が相半ばする。知事選の行方は混迷を極めそうだ。
(AERA dot.編集部・上田耕司)
上田耕司
福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。
保育料を巡り、都は2019年以降、国の助成に上乗せする形で、第2子からの無償化を段階的に進めてきた。関係者によると、公約ではこれを第1子にまで拡大するという。子育て環境のさらなる充実を図り、少子化に歯止めをかけたい考えだ。
行政手続きのデジタル化では、補助金の申請や施設の利用予約など都への手続きをスマホで行えるアプリを開発する。世界で活躍する人材を育成するため、幅広い人を対象にした独自の海外留学制度も創設する。