とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信:3回ワクチンの必要性 &オミクロン株各系統に対する効果

2022年06月28日 14時56分29秒 | 感染症

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

3回ワクチンの必要性

2022/6/19

ファイザーやモデルナ社のmRNAワクチン2回接種は、従来型やデルタ型のウイルスに対して非常に高い感染や発症の予防効果を示し、効果も半年以上継続します。
一方、オミクロン型に対しては2回接種後の効果は弱く、持続時間も短いことが複数の論文により報告されています。例えば、アメリカで約10万人を対象とした解析は、mRNAワクチン2回接種はデルタ型ウイルスの発症を80%程度抑制し、接種後11カ月においても60%程度の効果が持続しているのに対して、オミクロン型に対しては40%程度の抑制効果しかなく、接種後3カ月程度で効果が消失することを報告しています(図1)。
 
一方、3回接種は、2回接種に比べるとデルタ型ウイルスの発症を約6分の1に、オミクロン型ウイルスによる発症を約3分の1に抑えると報告しています。
 
イギリスの約250万人を対象にした解析でも、ファイザー社製ワクチン2回接種は、デルタ型ウイルスに対して当初は約90%の発症抑制効果を示し、半年後においても約70%の抑制効果が続くのに対して、オミクロン型に対しては当初より効果が70%弱しかなく、15週後には20%以下に低下することが示されています(図2)。一方、3回目接種によりオミクロン型による発症抑制効果は約70%に増加し、3回目接種後10週目においても50%程度の効果が維持されることが示されています。
 
イギリス政府は、ワクチンのデルタ変異ウイルスに対する効果に関する情報をその信頼度と共に発信し、毎週更新しています。情報の信頼度を表のように色分けして示しています。2022年6月16日の報告によると、オミクロン株に対するワクチンの効果については証拠がまだ不十分なものが多いとしていますが、3回目接種後6ヶ月以内の発症や入院の抑制効果については、中程度の確からしさであるとしています。3回目接種後3カ月以内の効果は、ファイザー社製、モデルナ社製ともに、発症に対しては65%程度、入院に対しては90%程度であるとしています。
 
3回目接種後4から6ヶ月においては、ファイザー社製の発症に対する効果は45%と減少するものの、入院に対しては85%と高い効果を維持するとしています。
図1 mRNAワクチン2回接種の効果
図2 mRNAワクチン3回目接種の効果
表 イギリス政府によるワクチン効果の推定
 

オミクロン株各系統に対する効果

B2.12.1、B.4、B.5系統は免疫をすり抜け易い (2022年6月24日)

オミクロン株には複数の系統が報告されている(図1)。

最初に世界で拡大したのはBA.1系統であったが、その後、世界的にBA.2系統に置き換わった。さらにアメリカなど海外ではBA.2.12.1系統が主流となり、さらにBA.4、BA.5系統が急増している(図2、CDCの報告)。

6月22日にNew England Journal of Medicine誌で発表された論文では、ワクチンや既感染によって獲得された抗体の、各系統に対する中和活性(感染を防ぐ能力)を測定している。

 

ファイザー社製ワクチン3回接種を完了し、かつ新型コロナウイルスの感染歴の無い27名を対象として調査を行った。2回接種後6ヶ月の時点では、いずれの系統に対しても中和活性はほとんどなかったが、3回目接種2週間後には中和活性が獲得されていた(図3)。

しかし従来株に比べてオミクロン株に対する活性は弱く、BA.1やBA.2系統では約6分の1、BA.2.12.1系統に対しては約14分の1,そしてBA.4やBA.5系統に対しては約21分の1の中和活性しか示さなかった。

論文ではさらにBA.1もしくはBA.2に感染した27名の中和活性も測定している。このうち26名は何らかのワクチン接種を行っていた。感染後平均29日目において、ワクチン3回接種かつ未感染の27名に比べて、既感染の27名においてより高い中和活性が観察された(図4)。

ワクチン接種群と同様に、オミクロン株に対する中和活性は従来株に対してよりも低かった。BA.1やBA.2系統に対しては約6分の1、BA.2.12.1系統に対しては約10分の1,そしてBA.4やBA.5系統に対しては約19分の1の中和活性しか示さなかった。

これらの結果は、BA.2.12.1、B.4、B.5系統はB.1やB.2系統よりもワクチンや既感染により獲得された免疫をすり抜ける力が強いことを示す。

イギリス政府は、ウイルスの遺伝子解析データを毎週、報告している。6月17日のデータでは、B.2系統が主流となっているが、B.4およびB.5系統も増加している。

国立感染研が6月3日に発表した報告によると、我が国ではBA.2系統が主流をしめている。欧米との往来が増加していることを考えると、我が国においてもBA2.12.1、さらにはBA.4/5系統が主流となっていく可能性がある。

図1 オミクロン株の各系統における遺伝子変異
図2 アメリカにおける各系統の割合(6月18日現在)
図3 ワクチン接種者における中和抗体活性
図4 B.1またはB.2系統既感染者における中和抗体活性

 


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