財政悪化、ブレーンなしで「資質なし」が露呈
今後は目立つ機会もなく「落日の小池百合子」
専決処分とは、災害など緊急時に自治体の首長が議会の議決を経ずに条例や予算を決める手続きのことだ。地方自治法で認められたルールだが、都以外の自治体ではコロナ禍でも議会の議決を経ていた。つまり、小池知事は他の自治体よりも格段に多く、議会審議をすっ飛ばしてきたのである。
こうした議会軽視の手法を臆面もなく利用できたのは、ひとえに都議会の最大会派が都民ファだったからだ。都民ファ都議が“オーナー社長”に盾突くはずもない。こうして機能不全に陥った都議会を尻目に、小池知事は好き放題に振る舞うことができた。
「国際金融都市構想」やら都庁のDX(デジタルトランスフォーメーション)やら、一見華やかだが実体のない、浮ついた政策に予算をつぎ込む余裕もあった。
しかし都民ファが議席を減らし、他会派が一定の議席を持つ「群雄割拠」の都議会を前に、小池知事は残り3年の任期中、もはやおいそれと専決処分は使えない。コロナ対策一つとっても、自公のご機嫌をうかがわなければならなくなった。
一方で都財政を見ると、潤沢だった貯金(財政調整基金)を使い果たし、税収の3割を占める法人税は、コロナ不況の影響で大きく落ち込むことが予想される。都財政は“冬の時代”を迎えようとしている。
議会運営は思うに任せず、財政運営では緊縮予算を組まざるを得ない。つまり、小池知事は両手両足を縛られた状態で都政運営のかじ取りに当たらなければならない。
しかも、東京オリンピック・パラリンピック後は大きなイベントが予定されておらず、小池知事が目立つ機会はほとんどない。
確かに都議選で都民ファ候補者の窮地を救い、改めて存在感を示した小池知事だったが、前途はそれほど明るくはない。得意のパフォーマンスは封印され、残りの任期をさしたる出番もなく過ごすことになるのではないか。もはや、小池氏が都知事の座に座り続ける意味がなくなっていると言ってもいいだろう。
さらに「過労」による体調不良は今後も尾を引く。選挙戦では劇的なサプライズ効果をもたらしたが、自治体トップとしては致命的だ。
突然の入院は、コロナ再拡大の局面で首都東京のトップが戦線を離脱するという、危機管理上の欠陥をさらけ出した。また、都民ファ代表で今回再選を果たした荒木千陽都議は、3日に応援に来た小池知事が息も絶え絶えの様子で、クルマには酸素ボンベが積まれていたと明かした。
小池知事は本来なら、信頼を寄せるナンバー2に全権を委任して治療に専念してもいいのだが、実際には有能なナンバー2もブレーンもいない。都庁官僚にしても、多羅尾光睦副知事をはじめ、周りをイエスマンたちで固めてしまった。
つまり、孤立したワンマン社長の一番リスキーな部分がまさに露呈したのだ。小池知事は巨大な都庁組織を牽引する資質を欠いていると言わざるを得ない。
入院9日目に退院した小池知事は、7月1日の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議にリモート参加したものの覇気はなく、翌2日、2時間遅れで始まった定例記者会見では時折せき込むなど、完全復活にはほど遠い姿が目を引いた。そこには、フリップを片手にドヤ顔を見せる女帝はいなかった。どこか「落日」を予感させる雰囲気すら漂っていた。