「これで満床です」
2日午前、東京都文京区の日本医科大学病院高度救命救急センター。横堀将司センター長は、看護師からの電話を切ると、厳しい表情を見せた。
この日、脳卒中で救急搬送された70歳代の男性患者が、検査で新型コロナ陽性と判明。脳卒中用の病床で受け入れる予定を、コロナの重症病床に切り替えた。同病院が確保していたコロナ重症病床の8床は、すべて埋まった。
ただし、重症病床の8人のうち、コロナ感染で重症化している患者は1人のみ。残りは、コロナ自体は軽症で、脳卒中や糖尿病、敗血症など別の病気の重症患者だ。横堀センター長は「ほかの病気で救急搬送された患者が、実はコロナだったと分かるケースが急増している。オミクロン株は重症化しにくいと言われるが、思いのほか重症病床が逼迫してしまう」と話す。
内閣官房によれば1日時点の都内の重症病床使用率は56%。だが、コロナの感染対策を講じた上で、緊急手術など高度な医療が提供できる医療機関は限られ、救急患者の搬送はすでに難しくなっている。
同病院は、コロナの重症病床を確保するため、一般の重症病床も半分程度に減らしている。普段なら救急搬送の要請を9割は受けていたが、今は半分を断らざるを得ない事態に陥っている。横堀センター長は「都内の救急医療は破綻し、助かる命が助からなくなりつつある」と警戒を強める。
同様の状況は、ほかの地域でも生じ始めている。堺市立総合医療センター(大阪府堺市)では、2日時点でコロナの重症病床に入院する3人のうち、コロナ自体が重症なのは1人。残りは、持病の悪化や脳卒中で救急搬送され、検査でコロナ陽性と判明した。
同センターでは、コロナとコロナ以外の救急医療を両立させるため、感染状況に応じて、コロナ用の重症病床を9段階で最大22床に増やせる独自の取り組みを進める。西田幸司・感染症対策センター副センター長は「これまでは両立できていた」としつつも、「感染拡大で、一般救急とコロナの両方を診られる病院に搬送が集中し始めている。このままでは一部の医療機関に負担が偏る」と懸念する。
【速報】東京の新規感染者は3万8940人 新型コロナ(2022年8月3日)
3日に東京都が確認した新型コロナウイルスの新たな感染者は3万8940人でした。 3日時点の重症者用の病床使用率は前の日から1.0ポイント下がって29.5%、そして全体の病床使用率は0.4ポイント上がって55.4%になっています。
都では医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を緩和するため、3日から自主検査で新型コロナの陽性が確認された場合に医師の診断を受けて保健所に発生届を提出するまでの一連の手続きをオンライン上で完結できる「陽性者登録センター」を新たに開設しました。
これは基礎疾患や重症化リスクのない20代の人が対象で、一日3000件の登録を上限としているということです。 これについては医師2人、看護師15人、職員50人ほどで対応するということです。
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【速報】全国の新型コロナ感染者が過去最多の24万人超え(2022年8月3日)