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【オバマ回顧録】鳩山元首相への手厳しい批判と、天皇皇后両陛下への「お辞儀」の真実 2020年11月19日(木)17時00分

2020年11月19日 20時59分00秒 | アメリカ

【オバマ回顧録】鳩山元首相への手厳しい批判と、天皇皇后両陛下への「お辞儀」の真実

2020年11月19日(木)17時00分   冷泉彰彦  Newsweek

<外交も含めたオバマ政権8年の政治的決断を克明に記録した本書は、歴史的な記録として貴重>

かねてから話題になっていたバラク・オバマ前大統領の回顧録『約束の地(A Promised Land)』が、今月17日に発売になりました。紙版では768ページでこれだけでも大冊ですが、実は今回の『約束の地』は前編であり、後編に当たる部分はこれから完成するようです。その後編が仮に同じ分量だとすると2冊で1500ページになるわけで、これは相当な分量です。

肝心の内容ですが、シカゴ時代や上院議員時代から書き起こし、大統領職にあった8年間に、自分がどのように国内外の情勢を認識して、合衆国大統領として判断を下し続けたかが克明に記録されています。もちろん、政治的影響力ということではまだ「現役」であるオバマ氏ですから、自分の判断が正しかったという観点からはブレていませんが、とにかく情報量が半端ではないので、歴史的な記録として貴重であると思います。

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ところで、本書における日本に関する言及ということでは、鳩山由紀夫元総理への批判が入っていることが話題になっています。この点に関しては 鳩山氏に関しての "A pleasant if awkward fellow," という形容をどう解釈したらいいかが議論になっているようです。例えば朝日新聞(「不器用だが感じの良い男」)はマイルドな訳、一方で時事通信(「感じは良いが厄介な同僚」)や毎日新聞(「感じは良いがやりにくい」)は辛口ということで、訳し方にも幅があります(いずれも電子版)。

この部分ですが、直前には鳩山氏との日米首脳会談で、経済危機、北朝鮮情勢に加えて「沖縄海兵隊基地の移転問題」が話し合われたとして、その直後にこの表現が来ているというのが大切です。また、この部分の後には、当時の日本では総理がコロコロ変わっており、"a symptom of the sclerotic, aimless politics"(硬直して目的を失った政争という病状)が10年近く続いたという厳しい指摘がされています。それが、段落の終わりにある"He'd be gone seven months later."(鳩山氏はその7カ月後に辞任した。)という記述に繋がっています。

手厳しい批判であることは間違いない

ですから、この箇所の全体は普天間基地移転問題で迷走した鳩山氏への批判と理解するのが妥当です。こうした文脈を踏まえると、"A pleasant if awkward fellow," は、「一緒に仕事をする相手(つまり同盟のパートナー)としては困った存在であるかもしれないが(多少の皮肉も込めて)好人物ではある」という意味になると思います。

鳩山氏本人は「不器用だが陽気な」という訳を掲げて、「強烈な批判ではない」とか、「メディアが叩くのは政権への忖度か」などとしているようですが、前後の文脈を考えると、かなり手厳しい批判であることは間違いありません。

沖縄海兵隊の問題は、当時のオバマ政権にとってはその後の2011年に発表された「リバランス政策」でより明らかになるように、中国に対するパワーバランスの最前線でした。ですから、普天間移設問題というのは、オバマ氏にとっては東アジアにおける安全保障上の重要な問題だったわけです。本書の記述はその意味で、オバマ政権の記録を歴史に残す上では、全く自然だと思います。

 

では、本書では日本について、そのようにネガティブな形容で一貫しているのかというと、そうではありません。同じく2009年の訪日に関しては、当時の天皇皇后(現在の上皇と上皇后)両陛下との面会について、多くの文字数を割いて記述されています。

ここでは、上皇さまが昭和天皇の息子として困難な歴史の中を歩んでこられたことに思いを馳せるとともに、上皇后さまが「2600年の皇室の歴史の中で初」の民間出身の皇太子妃として皇族に入られたことによるご苦労などに、オバマ氏は深い感銘を受けたとしています。とりわけ、上皇后さまからは別れ際に「自作のピアノ曲の楽譜」を贈られ、その際に驚くべき親密な姿勢で「音楽への愛、詩歌への愛が自分の(皇室における)孤独な痛苦を慰めてくれた」ことを語られたというエピソードを紹介しています。

後編にも期待

その上で、オバマ氏はそのような両陛下に対して深い畏敬の念を抱いたことが、自然な形で「お辞儀」につながったのだとしています。その「お辞儀」についてアメリカの右派から「裏切り者」、つまり合衆国大統領が他国の君主に屈服しているとして批判を浴びたことについては、最大限の表現で怒っていました。

ということで、この部分の全体としては、「鳩山外交に関しては明確に批判」しつつ、「当時の天皇皇后両陛下への畏敬」を異例なまでの強い表現で述べて、日米関係全体に関する記述としてはニュートラルにし、加えて「お辞儀問題への国内からの批判に強く反駁した」という構成になっています。いかにもオバマ氏らしい多面的なロジックであり、また知的なバランス感覚の発露であると思います。

ちなみに、2期目における「オバマ=安倍外交」、とりわけ中国に対する「リバランス」と日米韓連携を含むアジア外交、そして安倍前総理との広島と真珠湾における「相互献花外交」については、本書では言及されていません。こちらについては後篇にあたる2冊目を待つことにしましょう。

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