「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」を名乗る人物が8月下旬以降、全国各地の消費生活センターを訪れ、「被害相談があれば連絡してほしい」などと問い合わせていたことが朝日新聞の取材でわかった。各地のセンターに確認したところ、訪問は44都道府県にまたがっていた。旧統一教会は取材に対し、消費生活センターへの訪問は2009年に「コンプライアンス宣言」をして以降行っているもので、今回の訪問については「各地が独自に行っている」と述べ、組織としての指示は否定した。
旧統一教会による霊感商法被害の相談を35年前から受け付けている「全国霊感商法対策弁護士連絡会」も同様の事例を複数把握している。同会は、相談内容を元にして一部だけ返金するなど、被害の「火消し」を図ろうとするものだなどとして、各地のセンターを束ねる国民生活センターに教団側の要請に応じないように注意を求めた。
消費生活センターは2021年時点で全国に854カ所あり、多くは都道府県や市区町村ごとに設置されている。
専門の相談員が商品やサービスなどに関する苦情や相談を受け付け、トラブルの解決にあたる。事業者への情報提供は個々の自治体の判断で行うこともあるが、副次的な業務だ。
■44都道府県、消費者庁検討会設置後に集中
朝日新聞は、旧統一教会の関係者が各地の消費生活センターを訪れているとの情報を元に、その広がりを把握するため、都道府県ごとに1~数カ所のセンターを取材した。
その結果、訪問を受けたとするセンターが44都道府県に及んでいた。時期は、消費者庁で霊感商法に関する検討会を始めた8月29日から数日の間に集中していた。
多くは、教団側の地元の教会関係者が面会予約なしで突然来訪し、「被害に関する相談があれば連絡してください」「(教団側で)誠実に対応したい」と申し出る内容だった。
一方、取材に応じた消費生活センター側から相談内容を教団側に伝えたケースはなく、その場で「相談内容は言えない」と伝えたり名刺を受け取ったりした対応にとどまっていた。