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羽田衝突事故 JAL機の「奇跡の18分」なぜ実現? 燃える“満席の大型機”から全員生還...その経緯 乗りものニュース 更新日:2024/01/04

2024年01月04日 14時30分41秒 | 災害

脱出ドアは3つだけ&ほぼ満席…でも全員生還

2024年1月2日17時47分頃、JAL(日本航空)の新千歳発羽田行きJL516便が、羽田空港第2ターミナル前のC滑走路で海上保安庁の飛行機と衝突し、炎上しました。衝突後のJAL機はみるみる火がまわり大破しましたが、この機の乗客367人、乗員12人の計379人は、18時5分に全員が脱出しています。

損壊状況から見て犠牲者が多数出ても全く不思議ではなさそうな状況下、今回同機の乗員・乗客が“全員生還”を遂げたことについて、海外メディアでは同機の搭乗していた乗員の行動に対し「奇跡」「信じられない」などとも報じられました。この“奇跡の18分”実現の要因には、どのようなものがあったのでしょうか。

JALのエアバスA350-900(乗りものニュース編集部撮影)。

JL516便に使用されたのは、JALの国内幹線向け主力機「エアバスA350-900」。この機の客席数は369です。発表された乗客数からすると、ほとんど満席の状況であったことがわかります。

さらにこの機体は左右に各4つ、計8か所にドアがあり、地上での緊急脱出時には、これらのドアから「脱出用スライド(すべり台)」が出て、乗客はそこから滑り降りる形態をとっています。旅客機では実用化に不可欠な「型式証明」取得の際、「機内の半分の脱出ドアを使用して、乗客・乗員全員が90秒以内に機内から脱出できる」という、いわゆる「90秒ルール」があり、機体はそれに基づいて設計されます。

しかし、以下のJALの報道発表によると、同便は満席であるだけでなく、「脱出ドアの半数以上が使用不可」という状況だったことがわかります。

「脱出時に機内のアナウンスシステムが不作動となったため、客室乗務員がメガホンと肉声でご案内を実施した。安全に脱出できる出口を客室乗務員が判断し、3箇所の非常脱出口から乗客乗員全員が脱出した」(JALの広報発表資料より)

この状況下で全員脱出を達成したプロセスについて、JALが3日夕刻に記者会見を実施。同社の幹部の一人は「非常ドアの操作などの緊急脱出訓練は全乗務員が年に1回、丸1日かけて行い、ブラッシュアップしています。個人的には、その結果が出たのではないかと考えています」とコメントしています。

そしてJALの経営陣は、事故機から乗客が脱出するまでのプロセスについて、以下のように説明しています。

「奇跡の18分」実現の経緯

「まずパイロットは着陸接地後、突然の衝撃を察知しました。その後結果的に機体は滑走路の右側に反れました。機体停止後、パイロットは当初、火災の認識はなかったそうですが、CAからの報告をうけ、所定の手続きを踏んだうえ、脱出を指示しました。パイロットは脱出前の最終客室チェックをした際に、取り残されていた方も何名かいたため、機長がお客様に脱出するようご案内し脱出を確認したうえ、最終的に後方左側のドアから脱出しています」

「客室では機体が完全停止した後、まずお客さまのパニックのコントロールをしました。そのさい、CAが左側のドアから火が見えると報告をうけ、機長に報告し脱出指示をもらい、脱出を開始しています。客室は着陸の際に煙が入り始め、機内に充満していたようです」

「脱出時、機長の指示で左右の最前方ドアから脱出を実施したものの、客室最後部は、右側のドアの近くから出火が確認されたために開けることができないとCAが判断しました。一方で、左側は出火がないことを確認したため、ドアを開放しています。なお、何らかの理由で機内のインターホンや通信システム(PAシステム)が故障したため、機長の承認を得る前に、日頃の訓練のケーススタディをもとに、CAの判断でドアを開放しています。ほかのドアが開けられなかったのは、その部分のドアの保安を担当したCAが『火災が確認され、危険を伴うため使わない』という判断をしたと考えられます」

JALの経営陣は脱出までのプロセスをこのように話します。

JALのエアバスA350-900の客室(乗りものニュース編集部撮影)。

また、報道されている現地の動画などを見ると、同便の乗客の多くが、CA(客室乗務員)の指示に従い冷静に行動している様子も見られます。迫る恐怖のなか、乗客の方がプロの判断をしっかり仰いでいたことも、「奇跡の18分」を生み出した要因のひとつであることは間違いなさそうです。「安全のため『手荷物を持たずに脱出していただきたい』というお願いを、お客様が受け入れて下さったことが、今回の迅速な脱出につながった要因のひとつと認識しています」(JAL)

なお、JL516便と衝突した海上保安庁機の乗員は、機長を除く5人が亡くなっています。事故原因の調査については、今後、国土交通省傘下の運輸安全委員会(JTSB)の調査官に委ねられ、JALも全面協力する姿勢を示しています。

松 稔生(航空ライター)

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