本格論戦、静かなスタート 岸田首相低姿勢、立民は提案に力点―衆院予算委員会
2021年12月14日07時03分 jiji.com
岸田文雄首相にとって初の本格論戦となった衆院予算委員会が13日行われた。首相は野党側の追及に丁寧に答弁して低姿勢で臨む一方、立憲民主党も政策提案に多くの時間を割くなど静かなスタートとなった。かつて与野党が鋭く対立、紛糾した安倍・菅政権時代とは雰囲気が様変わりした。
「なぜクーポンにこだわったのか。(来夏の)参院選対策という見方もある」。立民の小川淳也政調会長は、首相が焦点の10万円相当給付で一括現金給付を容認する方針に転じたことを受け、理由をこうただした。
小川氏は、新型コロナウイルス感染で収入が減少した事業者らに支給される雇用調整助成金問題も取り上げた。自らの政治団体が受給していた自民党の石原伸晃元幹事長を内閣官房参与に起用した首相の判断を問題視。同様の事例が発覚した大岡敏孝環境副大臣の辞任も求めた。
政策提案も連発。マイナンバーカード取得者に最大2万円分のポイントを付与する新たなマイナポイント事業に約2兆円が計上されていることに関し、その財源を使って国立大学の授業料無償化や困窮者支援などを行うよう提案した。
質疑からは、先の衆院選で落選した辻元清美氏が安倍晋三首相(当時)を攻め立てたときのような「口撃」で見せ場をつくるパフォーマンスは影を潜めた。枝野幸男前代表が進めた追及一辺倒の路線からの脱却を図ろうとしているようにも映る。
一方、受けて立つ首相にも独自のスタイルがのぞく。
10万円相当給付の方針転換に関する小川氏の質問に「さまざまな関係者の意見、国会での議論を踏まえ、より柔軟な制度づくりを検討してきた」と説明。野党側の主張も考慮して方針を変更したことをにじませ、理解を求めた。石原氏辞任についても「混乱は否めない。申し訳ない」と、あっさり陳謝した。
さらにこれまでの政権との違いが際立ったのは質問を聞く際の態度だ。安倍氏の場合、腕組みして組んだ足を投げ出し、時折やじを飛ばすこともあった。これに対し、岸田首相は「聞く力」を意識してか、いすに浅く腰掛け、野党側の提案にうなずきながら何度も手にした書類にメモを取るしぐさが目立った。
もっとも、滑り出しは静かでも、こうした雰囲気が続く保証はない。自民党の閣僚経験者は「怖いのは大臣の失言やスキャンダルなど、首相がコントロールできないことが出てくることだ」と指摘する。来夏の参院選が近づけば与野党対決ムードも高まる。
立民の泉健太代表は党会合で10万円相当給付に触れ「大きな失敗だ」と批判。「われわれは国民に届く政策とは何なのか国民の立場に立って訴えていきたい」と強調した。