政府は15日、安定的な皇位継承に向けた政策調整を担う内閣官房参与に、山崎重孝元内閣府事務次官を起用する人事を発表した。皇室制度連絡調整総括官も兼ねる。山崎氏は2021年9月から両ポストに就いていたが、昨年9月に退任していた。
林芳正官房長官は同日の記者会見で「昨秋以降、与野党において安定的な皇位継承の確保策の検討がいっそう進められている。皇室制度に関係のあるポストを歴任した山崎氏を改めて任命し、国会の議論を受けた政府の対応について助言をいただく」と述べた。
山崎氏は15~17年に内閣総務官として天皇退位に向けた政府の有識者会議の実務や、17年6月に成立した退位特例法を担当し、皇室制度をめぐる政府の対応に深く関わってきた。(笹川翔平)
(山崎重孝氏)
やまさき しげたか
山﨑 重孝 |
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生誕 | 1959年12月12日(64歳) |
国籍 | 日本 |
出身校 | 山口県立宇部高等学校 東京大学法学部 |
肩書き | 内閣官房参与・皇室制度連絡調整総括官 |
羽毛田信吾・元宮内庁長官が15日、福岡市であった毎日・世論フォーラム(毎日新聞社主催)で「皇位継承論に思う」と題して講演した。羽毛田氏は、安定的な皇位継承に向けた制度改正が進まない現状に「改正に向かって具体的な動きを起こすことは待ったなしだ」と強い危機感を示した。
現在の皇室は17人で、うち12人が女性。未成年は秋篠宮家の長男悠仁さまのみで、65歳以上は7人となっている。羽毛田氏は「皇室も一般社会と同様、少子高齢化の様相が色濃くなっている」と指摘。女性皇族の婚姻による離脱などで今後、皇族の数が急激に減る可能性があるとして「皇族の活動に非常に支障が生じ得ることになる」と強調した。
改正の方向性は、旧宮家の男系男子が養子縁組で皇族に復帰する案や、女性・女系天皇を認める案を例示。ただ、「皇室に女性がいなくなれば、女系に広げる選択肢はそもそも成り立たなくなる」として「今のうちから十分な論議を尽くして取りかかるべきだ」と国民的な議論を早急に進めるよう呼びかけた。【野間口陽】
動くか皇位継承、与野党の議論本格化 政府は制度精通の内閣官房参与復帰の異例人事
昨年11月に開かれた自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」で発言する麻生太郎副総裁(右)=東京・永田町の党本部(春名中撮影)
安定的な皇位継承を巡る議論が本格化している。立憲民主党はすでに論点整理を終え、自民党も近く「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の会合を改めて開く予定だ。政府は15日、昨年9月まで内閣官房参与と皇室制度連絡調整総括官を務めた山崎重孝氏を再起用する異例の人事を発表した。政府と与野党が連携し、国の最重要課題を解決できるのかが注目される。
「与野党で安定的な皇位継承の確保の検討が一層進められている。国会の議論を受けた政府の対応に助言をもらう」。林芳正官房長官は15日の記者会見で、上皇さまのご譲位と天皇陛下のご即位に伴う一連の式典に携わり、皇室制度を熟知する山崎氏を再起用した理由をこう説明した。
背景には伝統的な皇位継承を重視する岸田文雄首相の強いこだわりがある。
周辺は「各党の議論が終われば政府が法整備に着手する。山崎氏を復帰させたことは、首相がいよいよ皇位継承策をまとめようとしているということだ」と解説する。
各党も動き始めている。自民は令和6年運動方針案で安定的な皇位継承について初めて記載し、「責任ある政権与党として、国会での議論に資するよう、党内での議論を進めていく」と掲げた。
近く麻生太郎副総裁が会長を務める同懇談会を再開。政府の有識者会議が令和3年に取りまとめた旧皇族の男系男子の復帰案と、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持できる案を盛り込んだ報告書について改めて協議する。
自民は男系男子の復帰案をより重視しており、旧皇族に連なる人々が女性皇族と結婚したり、養子として旧秩父宮家や旧高松宮家、旧桂宮家を継いだりした場合の課題などを検討するとみられる。
公明党は3月中に衆院の額賀福志郎議長に党の考え方を報告する。北側一雄副代表は今国会中の皇室典範改正に意欲を示す。 立憲民主党は12日の常任幹事会で、女性皇族が婚姻後も皇室にとどまり当主となる「女性宮家」創設を重視する論点整理を取りまとめた。
また、日本維新の会は一昨年4月、男系男子の皇族復帰案を高く評価する意見を他党に先んじて決定している。 自民幹部は「はるか昔から多くの危機を乗り越えて伝統を守った先人たちに習い、令和の国会議員も責任を果たす必要がある」と語った。(内藤慎二、永原慎吾)