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都知事選の結果分析     (2)ステルス選挙(小川裕夫)  2024/7/9

2024年07月09日 12時34分41秒 | 選挙
日刊SPA! の意見
 • 1 時間(2024/7/9)

2024年6月24日に告示、7月7日に投開票された東京都知事選は2期8年の実績を大々的に喧伝した現職の小池百合子候補が当選を果たしました。今回、いち早く都知事選への出馬を表明したのが立憲民主党の蓮舫候補。4期20年の参議院議員という身分を投げ捨て、挑んだ都知事選では現職を相手に猛追したものの力及ばず3位という結果に。

 

本記事では、参議院1期生の頃から蓮舫候補を追いかけてきた、永田町取材歴15年超のフリーランスカメラマン小川裕夫が蓮舫氏の都知事選とこれまでの足跡・功績を解説します。

 

東京・町田駅前で都知事選の街宣。応援演説のマイクを握る奥村政佳議員(左)と司会進行役を務めた伊藤俊輔議員(右)(2024年6月撮影:小川裕夫)© 日刊SPA!

 

◆現職の小池候補が公務を“優先”したのは…

 

2024年7月7日に投開票された東京都知事選挙は、史上最多となる56名が立候補したこと、NHK党から国民を守る党がポスター掲示板の枠を実質的に販売したこと、河合悠祐候補が猥褻なポスターを貼って警視庁から警告を受けたことといった、全国から注目を集める選挙になりました。

 

前回の都知事選、つまり2020年に投開票された都知事選は新型コロナウイルスが感染拡大をしている真っ最中に実施されました。当時、「密集」「密接」「密閉」の3密を回避することが推奨されていたのです。

 

選挙では、各候補者が街頭で演説をしたり、握手をして回ったり、公民館や体育館などで個人演説会を開いたりして支持の拡大を図ります。これらは3密に該当する行為のため、2020年の都知事選は静かな戦いになってしまったのです。

 

特に、再選を目指して立候補した小池候補は、ほとんど街頭に立つことはありませんでした。現職という立場から公務を“優先”したのです。都知事が公務を優先することに異を唱える人はいないでしょう。

 

しかし、現職が選挙活動をしないと、新聞・テレビは都知事選が実施されていることをニュースとして伝えられません。なぜなら、公職選挙法は候補者すべてを公平に扱わなければならないという建前があるからです。

 

これは、あくまでも建前です。実際、今回の都知事選では50人以上の候補者が熱心に選挙活動をしていますが、ほとんど伝えられていません。とはいえ、さすがに現職に配慮をしないわけにはいきません。そのため、現職が選挙活動をせずに公務に専念してしまうと、新聞・テレビの選挙報道はなくなってしまうのです

 

◆かつて2011年の都知事選でも見られた光景

 

現職が公務に専念して、ほかの候補者たちの選挙活動が新聞・テレビで伝えられなくなる状態は、俗にステルス選挙と言われます。2020年の都知事選は、まさにステルス選挙の様相を呈していたのです。

(注:朱字は管理人)

都知事選がステルス選挙になったのは、2020年が初めてではありません。過去にもありました。それが2011年に実施された都知事選でした。

 

2011年は3月に東日本大震災が発災し、その後に福島第一原発事故が起きました。東京都の電力は福島第一原発に依存しています。また、被災者の受け入れや瓦礫処理などにも東京都は取り組まなければなりませんでした。

 

そうしたことから、石原慎太郎都知事(当時)は都知事選で選挙活動をほとんどせずに震災対応を優先したのです。筆者は2011年の都知事選で各候補者を取材して回りました。当日の朝、どの候補を取材するのかスケジュールを組むために石原候補の選挙事務所に連絡を入れて予定を聞いていましたが、担当者からは「街頭演説の予定なし」という回答が続きました。

 

石原候補は選挙戦最終日に午前中は立川駅前、午後は有楽町駅前で選挙演説を実施しました。なぜ、最終日だけ街頭演説をしたのでしょうか? その理由を選挙スタッフに話を聞くと、「街頭演説をまったくしないと、熱心な支援者が離れてしまうし、『石原さん、立候補してたの?』という支援者もいる。だから、せめて最終日は街頭演説をする方針にした」とのことでした。

小川 裕夫のプロフィール

小川 裕夫(おがわ ひろお)/フリーランスライター。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経て、フリーランスのライター・カメラマンに転身。各誌で取材・執筆・撮影を担当するほか、「東洋経済オンライン」「デイリー新潮」「NEWSポストセブン」といったネットニュース媒体にも寄稿。また、官邸で実施される内閣総理大臣会見には、史上初のフリーランスカメラマンとして参加。取材テーマは、旧内務省や旧鉄道省、総務省・国土交通省などが所管する地方自治・都市計画・都市開発・鉄道など。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『全国私鉄特急の旅』(平凡社新書)、『封印された東京の謎』(彩図社文庫)、『路面電車の謎』(イースト新書Q)など。共著に『沿線格差』(SB新書)など多数。

 

47都道府県を取材済。海外訪問実績は、エクアドル(キト・ガラパゴス諸島)、台湾(台北・新北)、香港、マカオ、スペイン(マドリード・パルラ・バルセロナ・セビーリャ・カルモナ)、オーストラリア(メルボルン・ポートフィリップ)、中国(北京)など


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