ガザ停戦合意の発表後も空爆 ヨルダン川西岸やユダヤ人入植地の人々は
2025/01/17
ガザ支援物資の車列、「開戦以来最大規模」に 停戦合意の発効に期待も国境で足止め
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イスラエル首相官邸は17日、イスラム組織ハマスとの「人質の解放をめぐる合意」が成立したと発表した。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日朝、交渉担当チームから、合意に達したとの報告を受けたという。
ネタニヤフ首相は安全保障内閣を17日中に招集するよう命じた。「合意を承認するために招集される」と、イスラエル首相官邸は述べた。
人質の家族も、合意について知らせを受けたという。
イスラエルとハマス、仲介役のアメリカ、カタールの代表が、カタール・ドーハで正式に合意に署名したと、イスラエルメディアは報じている。
これに先立ちイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、ハマスと合意した、パレスチナ・ガザ地区での停戦を正式に承認するための閣議を延期。ハマスが「土壇場で譲歩を迫った」ためだとした。その後、人質の解放をめぐり合意に達したとし、ハマスとの合意を承認するための閣議を17日中に開くよう命じた。
アントニー・ブリンケン米国務長官は先に、停戦合意について、「未解決の問題」が残されているとしつつ、予定通り19日に発効すると確信していると述べていた。
イスラエルの交渉担当者たちは、数カ月にわたる協議の末、ガザでの段階的な停戦と人質解放に合意した。ただ、イスラエルの安全保障内閣と政府が承認するまでは、合意は実施されない。
ハマスはこの合意を実現させるとしている。その一方で、イスラエル人人質と引き換えに、パレスチナ人受刑者だけでなくハマスのメンバーも釈放するよう求めているとの情報を、BBCは取材で得ている。
合意の第1段階では、停戦が実施され、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人受刑者数百人と引き換えに、女性や高齢者、病人など、ハマスが拘束している「多数の人質」が解放されることになっている。
ハマス運営のガザ保健省によると、ガザでは、15日に停戦合意が発表された後にもイスラエル軍の攻撃があり、80人以上が殺害された。
ハマスが「譲歩を強要」と
停戦合意を承認するためのイスラエルの閣議は当初、16日朝に予定されていた。開始の数時間前、ネタニヤフ首相は、ハマスが「土壇場で譲歩を強要」しようとしていると非難した。
ネタニヤフ氏は、ハマスが「合意のすべての要素」を受け入れるまで、閣議は招集されないだろうと述べた。
ブリンケン米国務長官は、こうした遅れは、このような「困難な」状況下では予想されるものだと述べた。
「これほど困難で緊迫したプロセスや交渉において、未解決の問題があっても驚きではない」と、ブリンケン氏は米ワシントンでの記者会見で語った。
「我々は今、その未解決の問題に取り組んでいるところだ」
そのうえで、合意が予定通り19日に発効し、停戦が続くと、アメリカは「確信している」と述べた。
17日に承認へ
イスラエル・メディアは16日、停戦合意をめぐる問題が解決したため、17日にも閣議が開かれて停戦合意が承認される見込みだと報じていた。
イスラエルの閣僚の大半は、停戦合意を支持するとみられている。しかし、イタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は16日、停戦合意が承認されれば、自身が率いる右派政党「ユダヤの力」は連立を解消するだろうと述べた。
ベン=グヴィル氏は記者会見で、「まとまりつつあるこの合意は、無謀な合意」で、「戦争の成果を消し去るもの」だと付け加えた。
一方で、停戦合意が承認されたとしても、「ユダヤの力」は政権転覆を図るつもりはないとした。
ベン=グヴィル氏は、極右の宗教政党「宗教シオニズム」を率いるベザレル・スモトリッチ財務相にも、停戦合意が承認された場合は辞任するよう求めた。
「宗教シオニズム」のオハッド・タル議員はBBCラジオ4に対し、同党は停戦合意をめぐり、ネタニヤフ政権から離脱するかどうか「議論しているところ」だと語った。
ハマスの要求は
こうした中、ハマスの高官はBBCに対し、同組織は交渉の仲介役が発表した停戦合意の実現に向けて取り組んでいると述べた。
ハマスの交渉担当者ハリル・アル=ハイヤ副代表は、カタールとエジプトに対し、停戦合意のすべての条件を承認したことを正式に伝えたと、BBCに語った。
しかし、BBCのラシュディ・アブアルーフ・ガザ特派員によると、ハマスは停戦合意に基づいて釈放されるパレスチナ人受刑者のリストに、象徴的なメンバーを1人あるいは2人加えようとしていた。
合意の第1段階は6週間続き、女性や子供、高齢者を含む33人の人質と、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人受刑者数百人が交換される。
第1段階では、イスラエル部隊はガザの人口密集地域からガザ東部へ撤退する。
避難しているパレスチナ人は故郷に戻れるようになり、援助物資を乗せたトラックが1日あたり数百台、ガザへ入ることが認められる。
残りの人質の解放や、イスラエル軍の完全撤退、「持続可能な平穏」の回復といった、第2段階に向けた交渉は、停戦の16日目に開始される予定。
最終段階である第3段階には、ガザの復興と、残された人質の遺体の返還が含まれる。復興には数年を要する可能性がある。
合意発表後もガザ空爆続く
15日に停戦合意が発表された後も、ガザではイスラエルの空爆が続き、ガザ市では少なくとも12人が殺害された。ある医師はBBCに対し、「血なまぐさい夜」の間、スタッフは「1分たりとも休むことができなかった」と語った。
イスラエル国防軍とイスラエル総保安庁は声明で、合意発表後にガザ地区の50カ所の標的に空爆を実施したと明らかにした。
交渉を仲介したカタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アル・サニ首相は、停戦合意の第1段階が始まるのを前に、イスラエルとハマスの双方に「冷静」になるよう求めていた。
ハマスは2023年10月7日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛け、約1200人を殺害。251人を人質に取った。イスラエルは直後に、ハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始した。ハマスはイスラエルやアメリカなどからテロ組織に指定されている。
ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの報復攻撃で、ガザではこれまでに4万6788人以上が殺されたとしている。約230万人のガザ人口の大半が家を追われ、広範囲が破壊されている。また、支援を必要とする人々への物資確保が困難になっており、食料や燃料、医薬品、避難所の不足が深刻化している。
イスラエルによると、94人の人質が今もハマスに拘束されている。そのうち34人はすでに死亡したとされる。このほか、2023年10月以前から拘束されている人質が4人いるが、うち2人は死亡したという。
(英語記事 Israel delays vote to approve Gaza ceasefire dealNetanyahu's office says hostage deal now agreed)
イスラエル、ガザ停戦承認へ=予定通り19日に合意発効か
【カイロ時事】イスラエル政府は17日、パレスチナ自治区ガザでの停戦合意について話し合う治安閣議を開催した。全体閣議で合意を承認する見通し。前日に始まる予定だった承認手続きは遅れたものの、イスラエル首相府は声明で、承認されれば「計画に従って19日に人質解放が実施される」とする見解を示した。
イスラエル軍のガザ撤退を巡って、イスラム組織ハマスと見解の相違があったことが閣議延期の理由とされたが、首相府は17日、「ネタニヤフ首相は合意に達したとの連絡を受けた」と発表。ハマスも「障害は解消した」とする声明を出した。