カルト集団「オウム真理教」元代表や元幹部らに死刑執行 日本
2018年07月6日 BBC https://www.bbc.com/japanese/44733790
上川法務相の発表によると、死刑が執行されたのは、松本死刑囚と早川紀代秀死刑囚、井上嘉浩死刑囚、新実智光死刑囚、土谷正実死刑囚、中川智正死刑囚、遠藤誠一死刑囚の合計7人。
同日朝のマスコミ報道を受け、菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「死刑執行の報告は受けている」と認めた。
オウム真理教は1995年に東京の地下鉄で神経ガス「サリン」による攻撃を実施。13人の死亡者と数千人以上の負傷者を出した地下鉄サリン事件は、日本史上最大のテロ攻撃となっている。
1989年の坂本堤弁護士一家殺害事件、1994年に長野県松本で住民7人が死亡した松本サリン事件、1995年の東京地下鉄サリン事件など、一連のオウム真理教事件で、松本死刑囚を含め13人の死刑が確定していた。
残る6人の死刑囚についても、近く刑が執行される見通しという。
死刑の執行は、この事件で有罪判決を受けた受刑者全員の上告が終了するまで持ち越されていた。
無期懲役刑を言い渡されていた高橋克也受刑者の上告が今年1月に棄却され、共犯者全員の刑が確定したことで、法務省は死刑執行の時期検討を本格化させたものとみられていた。
「地下鉄サリン事件」とは
1995年3月20日、オウム真理教の信者が東京の地下鉄でサリンをまいた。東京の官庁街、霞ケ関を通る複数の列車内で、複数の実行犯がサリン溶液が入った袋を突き刺してばらまくという手口だった。
複数の目撃者が、液体が漏れている袋に気づいてすぐに、刺すような感覚の煙が目に入ったと証言している。
サリンを浴びてたちまち、被害者は呼吸困難になり嘔吐した。何人かは目が見えなくったり麻痺したりする症状も出た。この事件で13人が死亡した。
その数カ月前には、教団信者が複数の駅で青酸ガスをまこうとしては失敗していた。
サリン攻撃は、低い犯罪率と社会の一体性を誇っていた当時の日本に衝撃を与えた。
一連の教団関連事件で当時の幹部・信徒ら192人が起訴され、松本死刑囚を含めた13人への死刑判決のほか、6人が無期懲役を言い渡された。
オウム真理教とは
「最高の真実」を意味する名前のこのカルト宗教は、ヒンドゥー教と仏教の思想を混合した信仰団体として1980年代に始まった。後に黙示録的なキリスト教の預言の要素も、教義に加えられた。
団体の創設者、松本死刑囚は「麻原彰晃」を名乗り、自分自身をキリストであり、ブッダ以来日本で唯一の「最終解脱者」でもあると自称していた。
オウム真理教は1989年、日本で公式に宗教法人として認証され、外国でも相当数の信者を獲得した。ピーク時には、世界中で数万人の信者が松本死刑囚を「教祖」と位置づけ、その教えを信じていた。
団体は徐々に偏執的な終末思想カルト団体となり、国際戦争により世界は終末に向かい、オウム真理教の信者のみが生き残れると信じるようになった。
1995年の地下鉄サリン事件以降、オウム真理教は隠れて活動するようになったが、なくなったわけではなく、最終的には分派して「Aleph」と「ひかりの輪」に改名した。
オウム真理教は米国や他の多くの国でテロ組織に分類されているが、Alephとひかりの輪は共に日本では違法とはなっていない。ただ、当局の監視対象にはなっている。
オウム真理教は現在も日本国内、世界の両方に信者をもっている。特に、一部の旧ソ連圏諸国に信者が多い。
ロシア警察は2016年、犯罪に関与した疑いでモスクワとサンクトペテルブルクの教団拠点を家宅捜索した。
なぜ死刑執行が遅れたのか
日本では刑事訴訟法にもとづき、本人と共犯者全員の罪状について有罪が確定し、犯行グループ全員に上訴の機会がなくなるまで死刑は執行されない。
オウム真理教関係者に対する刑事裁判は今年1月に終了したばかりだった。
日本では2011年に死刑執行が止まる、いわゆる「死刑執行モラトリアム」があったものの、それを除くと2010年代には毎年、年間で最大8人の死刑が執行されている。
死刑は凶悪殺人事件についてのみ適用され、絞首により執行される。
(英語記事 Aum Shinrikyo: Japan executes cult leader Shoko Asahara)