著者謹呈で名和さんからいただいて、一日で読んだ。
日本で読み終えたのは名和さんと編集者以外では私が一番最初かも。発売日は9月18日あたりのようです(Amazon)。
いくつかいいところを、取り急ぎ抜粋。
■ パーパスのような「きれいごと」(とか)抽象的な美辞麗句でも、逆に細かい行動規範(Code of conduct)でも役に立たない。倫理の本質にまで立ち返って…
…いいですね、行動規範とか、細かすぎて、それでも抽象的で、刺さりませんよね、、
■ 今流行りの「心理的安全性」って怪しいよ、危険だよ、って指摘。
こちら(別稿にまとめました)
■ スミスの『道徳感情論』では、共感を徳のレベルにまで高めることを解いている
■ マッキンゼーのObligation to dissent っていいですね。異見をいう義務。プロとして異見を感じたら、Speak upしなきゃいけない。
■ 70-71頁では、拙著『インテグリティ』のことを大きく取り上げてくださっている。感謝。
■ Googleのメッセージは、以下のような変遷を経ている:
Don't be evil
→ Do the right thing
→ You can make money without doing evil
…どんどん長くなりますね。Don'tという否定形は良くない、というのは分かりますが、でも、長くなりすぎると刺さりませんよね、、、
■ 武田薬品工業のタケダイズムでもintegrity を最重視 こちら
■ ユニ・チャームのOwnershipでは「原因自分論」。他責しない。 こちら
■ アメリカでは演繹的な発想
日本では帰納的なアプローチ
…例として、アメリカではMTP(Massive Transformative Purpose)とかMoonshotとかの壮大な目標を掲げることを挙げ、そこからバックキャストをすることを挙げている。
たしかに、「MTPからバックキャストする」部分は演繹的といえるかもですが、法律業界にいる私からすると、法曹の思考は、米英は「帰納的」な部分が多いからなぁ、、
ですから、「アメリカが演繹的で、日本が帰納的」とまでいえるか、ちょっと深堀りしたいと思います。
■ PDCAではなくOODA(Observe, Orient, Decide, Act)が「身体知」の例として紹介されている。
ニーチェ「身体は大いなる理性である」
西田幾多郎「身体というものなくして、我というものはない」
野中郁次郎は「身体知こそイノベーションの源泉」と言って、身体知(Practical wisdom)を「実践知」とも読んでいる
…野中さんの実践知あたりってわかりにくいけど、なんとなくは分かる、、
ま、身体に染み込んだような、暗黙知的な、センスというか常識というか、そういうものが大事だってことですね。
■ マーフィ重松が『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』で、ハートフルになるためには以下の2つが必要と言っている:
(1) Vulnerability(開かれた弱さ)
(2) Compassion (思いやるココロ)
そしてこの2つを持った知性をEmotional Inteligence(EI)と名付ける。
…Vulnerability(脆弱さ)はほんとうに大事。自分の弱さをさらけ出す勇気。誠実さ。「のび太力」です。
■ 257頁のAuthentic Leaderの図(ビル・ジョージ『Authentic Leadership(邦題:ミッション・リーダーシップ)』)は、私も活用しようかな。情報量多すぎるんだけど、、、
…こんだけたくさん要素を書けば「そりゃ、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるよな」ってツッコミ入れたくもなりますが、、
■ エシックス経営のカギは、異なるものを結合する力、すなわち「異質(ヘテロ)編集力」にある
…ま、言葉だけの話ですが、「異質編集力」ってのはそのとおりですね。
■ Well-beingではなく、Better-becomingの方がはるかに開放感と躍動感を醸し出すはずだ。
「ウェルビーイング」などという世の中で上滑りしている風潮に流されることなく、独自の倫理思想を究めなければならない。
…いいですね、こういう、言葉のセンス。人口に膾炙している陳腐な言葉に異を唱えるセンスが。
3000円を超える高い本ですが、名和さんの「知」の深さを知ることができて、オススメです! 名和さんとともに「知の世界を渉猟する/徘徊する」みたいなイメージ。
取り急ぎ一日でパパっと読んじゃったけど、じっくり時間をかけてまた読むに値する本だと思う。オススメです!