昨日の夜は、佐藤賢一の小説『双頭の鷲』を読み返していました。
乱暴で下品で粗野だけど憎めない愛されるキャラクターのベルトランは、軍事においては相手の急所を見抜いてしまう天才。
でも日頃の言動と出世欲の無さから野に埋もれてしまうと思われた。
しかし彼の才能を見抜いた主君に出会い……。
英仏百年戦争のフランス側の最大の英雄で『軍神』ベルトラン・デュ・ゲクランを主人公としたお話です。
『賢王』シャルル5世が自らの才能を発見するシーンが好きです。
ベルトランが示した相手の意外な急所は、これまで没頭していた学問が現実の暴力=戦争状態の中では役に立たないと絶望していたシャルル5世の眼を開かせる。
自らの才を発見する驚き。
そして周囲の者が理解できないベルトランの才が自分には理解できる。その喜び。
戦争を政治・外交・経済・心理・技術・地理と多くの事柄とリンクさせ戦略的思考で捉え直すなら戦闘行為は最終局面でしかない。全てが繋がっている。
前段階を整えれば戦わずして勝つ局面でさえ作る事が出来る。
役に立たないと思っていた学んだ学問が役に立つ。
学んだ学問の使い方を理解した時の喜び。
百年戦争中のフランスの国王であるにもかかわらず直接戦闘に才が無く直接戦闘を嫌悪していたシャルル5世にとってベルトランとの出会いは救いとなったのかもしれない。
この物語は、無邪気な天才に出会った周囲の人達のお話と言えるかもしんない。
ある者は意気投合し、ある者は嫉妬し嫌悪し、ある者は「自分が支えないとこの人は駄目になる」と考え献身する。
或いは無邪気なぶ男の切ない愛のお話、なのかな?
いろんな見方の出来るお話です。
面白いですよ。
お勧めです。
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