白鳥(しらとり)は かなしからずや 空の青 海のあおにも 染またずただよう
若 山 牧 水
代表歌
〇 幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
〇 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
〇 うら恋しさやかに恋とならぬまに別れて遠きさまざまな人
〇 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり
〇 たぽたぽと樽に満ちたる酒は鳴るさびしき心うちつれて鳴る
〇 足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる
〇 うす紅に葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山ざくら花
〇 旅人のからだもいつか海となり五月の雨が降るよ港に
〇 麦ばたの垂り穂のうへにかげ見えて電車過ぎゆく池袋村
〇 この冬の夜に愛すべきもの、薔薇あり、つめたき紅の郵便切手あり
〇 水無月の青く明けゆく停車場に少女にも似て動く機関車
〇 妻が眼を盗みて飲める酒なれば惶て飲み噎せ鼻ゆこぼしつ
〇 釣り暮し帰れば母に叱られき叱れる母に渡しき鮎を
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