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序章その二 (長距離大量輸送の現実)

2011-03-29 20:00:00 | 広軌改築論
前記事では,主に乗用車,バスやトラックのドライバー達を過酷な仕事から解放したいとの思いから,旅客や貨物の輸送をバスやトラックから鉄道にシフトすべきであるとの考えに至った.

こうした私の考えとは別に,そしてはるかに昔の1991年から,国土交通省(当時運輸省)やJR貨物がモーダルシフトとして同じような取り組みを進めている.しかしながら,その進捗状況は順調とはお世辞にも言えない.

モーダルシフトが進まない原因は,安直にWikipediaで調べただけでも山のように出てくる.主に貨物についての問題は,主に以下の二点に集約できそうである.
鉄道による貨物輸送がトラック輸送と比較して
+ トータルで高コストになること
+ トータルで所要時間がかかること

それらのさらなる原因について私がここで詳述しても,やはりWikipediaやJR貨物や国土交通省のサイトなどに書いてあることの受け売りになってしまう.したがって,ここでは旅客や貨物の輸送を取り戻すために,鉄道に求められる条件について,私なりの乱暴な意見を述べる.

鉄道はどんなに逆立ちしても出発地から目的地への"door to door"のサービスを提供することはできない.出発地から駅へ,駅から目的地へのアクセスには自動車等の手段が必須である.また,鉄道を利用している間にも,乗り換えが必要になることが多い.それらは時間的にもコスト的にも不利に働く.それは鉄道が宿命的に抱えるハンディキャップである.よって,そのハンディキャップを補って余りある利点を鉄道は獲得しなければならない.

その,獲得すべきものは何か.それは今さら言うのも憚られるが,
「高速道路を走る自動車より圧倒的に速く,大量に運べ,安全なこと」
である.新幹線は生まれながらにしてこの要件を満たしており,主要な都市間の旅客輸送に関しては,自動車に対し十分な優位性を確保している.

しかしながら,新幹線の行き渡っていない地域間の旅客輸送および貨物輸送は,最高時速にして高々130 km/h,さらに多くの踏切を抱えたの在来線を走行せざるを得ず,高速道路を走る自動車に対し十分な競争力を有するには至っていない.速さで自動車に「圧勝」するためには,踏切のない路線を少なくとも最高時速にして200 km/h程度,できれば新幹線並みの300 km/hのレベルで走行することが必要となろう.

また,これはWikipediaに記述されていることを繰り返してしまうが,車両の全長が20 m級に抑えられている在来線においては,40フィート海上コンテナを効率よく輸送することが困難である.これは,船舶による貨物輸送との連携を阻害することになり,トラックに需要を奪われる一因となっているだろう.

そうなると当然,全長25 m級の車両を300 km/h程度で走行させることが可能な新幹線に着目したくなる.しかしながら,新幹線,とりわけ東海道新幹線は旅客輸送しか行っていないにもかかわらず,その輸送力は限界に達している.夜間は軌道のメンテナンスを行っていることを考えると,貨物列車などを走らせられるような状態ではまったくない.さらに,貨物線が走り貨物ターミナルが設けられている在来線の軌間は狭軌(1067 mm)であるため,標準軌(1435 mm)の新幹線とは規格的にもまったく互換性がない.

現在の新幹線にかかっている負荷と,新幹線と在来線の軌間の相違を鑑みるに,「高速道路を走る自動車より圧倒的に速く,大量に運べ,安全なこと」を鉄道貨物に求めるのは現状では無理な話である.
Comments (2)
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