藤野千夜さんの1999年芥川賞受賞作品「夏の約束」を10日ほど前に読み終えました、
同性愛者やトランス女性、障害のある兄をいじめから助けられなかった記憶を持つ女性
などの日常生活を、「じい散歩」と同じように軽いタッチで語られていました。
個人的写真のシールを貼った「日記帳のような表装」
メス犬なのに「アポロン」という男名のマルチーズの写真もある楽しそうな表紙。
”8月になったらキャンプに行こうという約束を、松井マモルはすっかり忘れていた”
この文からストーリーは始まる。
主人公マモルは、子供の頃には「ホモ」とからかわれ、鶏小屋に閉じ込められるなどの
いじめを受けていた。
中学生の頃から、食べまくり脂肪をため込み、弾力のあるからだを構築しなければ
生きていけないように思ったようだが、今ではそんなふうには考えてはいない。
中学時代には無線部、高校時代はマンドリン研究会、大学時代はチョコレートパフェ愛好会
に所属していたようで、孤立した青春時代ではなかったかも。詳しくは書かれてません。
「チョコレートパフェ愛好会」、なんて羨ましいサークルなんでしょう。
私も学生時代に「お茶する」といったら、パフェを注文してました。
その頃は痩せの大食いと言われてましたが、今では・・・空気を吸っただけでも太る
ようで。。。
会社のトイレの片隅に、小さく「松井ホモ」と落書きされた文字に「なんだか懐かしい響き」
を感じたのは何故だろう?
子供の頃「ホモ」とはっきりと言われていた頃が、今よりは生きやすかったのだろうか?
こんなこともありました、
マモルの友だちトランス女性のたま代が交通事故に遭って入院した時、「男性美容師」
として報道され、しかも男性病棟の病室に。女性として生きている彼女の気持ちを
想像すると複雑な気がしました。
日常生活の中、偏見の多い社会で息苦しく生きづらい日々を、敢えて重苦しく
書かないことで、より彼らの苦悩を考える時間を与えてくれたのかも知れない。
マルオと彼の同性愛者である恋人ヒカルとの会話で終わっています
”来年、私たちはみんなでキャンプに行けるでしょうか”
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20年前に「LGBT」のテーマで書かれたストーリーは新鮮なものだったのでしょうか。
今では性的少数者「LGBT」であるかどうかに関係なく、すべての人が持つ性別や性的
指向に関わる概念を指す(朝日新聞)「SOGI(ソジ)」という言葉があるようです。
性的傾向「Sexual Orientation」と、性自認「Gender Identity」の頭文字を取った言葉
だそうです。
「SOGIハラ」をなくすための行動は始まったばかりだと思いますが、こんな言葉が
使われなくったときが本当の意味で偏見がなくなったといえるのでしょう。
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