よく分かる 住まいづくり・・(檀建築コンサルタント)

私達の考える住まいは、住まいづくりの原価を探り、無駄のない資金で、遊び心のある家を作る事。

回想-18

2011-02-20 12:09:11 | 回想

K邸が動き始めた。
勇気と、情熱と、想いを込めて、今までの屈辱を取り返すかのように
愚痴を言うことなく、奥様は、思いをいっぱい綴ったノ-トを持って
せっせと事務所に通った。

ご主人は殆ど打ち合わせには参加しなかったが 多分すべてを奥様に任せているのだろう事はこちらにも理解できた。
奥様が一番こだわりを見せたのがキッチンで、自分の使いやすい配置をノ-トに書き、こちらはそれをスケッチにおこした。

いろんな方向から検討し、数多くの配置を書き、収納一個に至るまで、何をそこに収納するかも決めていた為図面の手間はかかったが、迷いの無いぶん仕事は進めやすく、また楽しく仕事は進んだ。

システムキッチンに頼らず、自分の使い安いキッチンをオリジナルで作る
楽しみと、その価値をよく知っていた。
殆どのお客様は別注のキッチンは高くつくと思い込んでしまい、オリジナルキッチンは想定外だと思っている人が多いが、作り方によればシステムキッチンとの値段さはあまりなく、お気に入りのキッチンを作ることができる場合がある。

オリジナルキッチンがすべていいわけではない。
システムキッチンには優れた所があり、細やかに収納トレイを組み込んでいる作りはオリジナルとの違いでもある。

キッチンメ-カ-は各部品、つまりトレイなどは単品で出すのを嫌い、値段はつけているがそれを単品で出すことはしない為、オリジナルキッチンにそれを組み込むことは難しくなり、手に入れる事が出来ても高い商品となってしまいう。

K邸キッチンはすべて無垢材を使い箱を組み、天板は人造大理石を別注し、
引出の取っ手は、既製品に奥様の気に入るものが無かった為、事務所の工房に眠っていた桜の曲り木をバンドソ-で製材し、おそろいの取っ手を20っこほど私が作ることにした。

自然が作りあげた曲線は人間が作り上げたものとは違い、その美しさと
強度も兼ね備えている。

予算の面からもいろんな提案をし、最大の予算削減の提案は外壁、屋根を
一つの業者の工法で仕上げてしまう事が予算削減につながり、メリットも期待できるため、K様には建築概念を超えた提案をすることとなったのだった。

つまり、外壁に使う外断熱を屋根にも使い、屋根葺き材をなくし、それに伴う板金工事もなくし、予算削減と、水の侵入する隙間ができないよう、すべてを断熱材で包んでしまう工法での提案をK様に相談したのだった。

それには屋根を断熱材で仕上げることにより水の侵入を防げるという根拠と
実験デ-タ-が必要となるため、メ-カ-にそのデ-タ-をとるよう指示を出した。

実験は、断熱材の上に仕上げをしたものを下に置き、その上に直径60㎝高さ
60㎝程度の円筒形に水を入れ、10日間水の浸透実験を行い、理論通り
断熱材は水圧での変形もなくまた水も漏れない事が実証され、その実験デ-タ-を持って、K様のご主人に提案した。

K様のご主人は大学の教師でもあり、ドイツ留学の経験もあり広い知識と、職業柄理論から物事を組み立てる知恵をもっていた為、この提案は必ず受け入れてくれるだろうとの自信はこちらにもあった。

案の定、ご主人は迷うことなくこの工法を理解し、受け入れられ実施設計にと進み、予算軽減と、建物の断熱効果が期待された。
省くものは徹底して省き、こだわる部分は徹底してこだわった。

薪スト-ブもこだわりの一つで、ご主人が夢を持ち採用したいと望んだ
唯一の我儘で、触媒付の二次燃焼室を持つ優れものの薪スト-ブを北海道から取り寄せた。

暖かい家で、夏の暑い日は床下の冷気を家に取り入れるため、床下ハッチを食堂のテ-ブル下に組み込み、網戸を付け虫の侵入を防ぐようにしたのだった。
暑い空気はロフトの3つの窓から外に逃がし、冷たい空気を床下から取り込む工夫を考え、できるだけ機械に頼らない自然の涼しさで過ごせるようにと
考えたのだった。

                                    つづく。


回想-17

2011-02-14 12:41:12 | 回想

大阪の設計事務所のプランには無理があった。
一つには、構造耐力的に問題があり二階の耐力壁が不足し、平面的にはあるが、その壁は実際はあまり効果のない壁であることと、家族4人が暮らしそのうえ予算的に限界があったとすれば50坪を超える広さを設計してしまえば、
予算がオ-バ-することを頭に入れずに書き上げてしまった事がKさんが行き詰った大きな原因なのだろう。

設計変更をするに当たり、Kさんにはとにかく各部屋の広さは変えずに42~43坪程度に抑えるため、無駄をなくし設計することと、予算の関係で思い切った発想転換をし、この家を完成させるためお互い理解し合い進めて行くことで合意したのだった。

予算が少ないからと我慢しない事。
要望があれば遠慮せず伝える事。
任せるのではなく、一緒に創るという思いをもっていただく事。

お互いの意思を伝えあい、ご主人も含め新たな気持ちで
すまいづくりを進めることになり、奥様は住まいづくりノ-トを作り
自分の思いや、要望をせっせと書き込んでいった。

                                つづく。


回想-16

2011-02-10 08:27:40 | 回想

Kさんの要望を匠がまとめた設計図の枚数は多く、事細かに描き、図面としての価値を高めるため昔から枚数を増やす工夫をするのが設計事務所の特徴なのだろうが、図面の枚数を書けば書くほど予算は上がり、上がってしまった予算を調整する時、自分の書いた設計図により調整不可能に陥り、
自分の意見を押し通し、結局は誰の家か分からなくなってしまう結果を生み出す場合があるのだろう。

今回のK邸設計図も同じような見方ができ、予算が2000万円と伝えたにも関わらず50坪以上の延べ面積の広さと、無垢の化粧梁や柱をふんだんに使って設計されていた。
最初Kさんから設計図を見せていただいた時、内容を詳しく見るまでもなく
2,000万円では建てることはできない家であることはすぐに理解できた。

Kさんは、また一から設計図を描く費用は無いので、この設計図で本当に2,700万円が必要なのかどうか予算を出してほしいと言われ、業者を呼び積算を依頼し、出た金額は2,400万円となり、予算は2,700万円もかからないが結局この設計図では予算オ-バ-となり設計変更をしなければ夢は叶えられない事をKさんも認め、一から設計図を立ち上げる事となった。            つづく。


回想-15

2011-02-05 09:14:24 | 回想

ビフォ-アフタ-の番組も一時は中断され、視聴率が高かったのか、いままた再開されており「人は夢の魔術師と呼ぶ」などと、現実的ではない偶像にも似た表現で放映をしている。

多分、一般視聴者を狙ったキャプションなのだろうが、いささか問題があり、呼ばれもしない、覚えるにも大変な長ったらしい、表現ではあるが、視聴者に対しては現実的でない部分を植え付けてしまうことになる危険性はあるだろう。

Kさんはテレビで放映されているからと 大阪の設計事務所に直接依頼したわけではなく、相談に行った工務店が、その設計事務所と繋がっていたのだろうが、
危険性とすれば「この設計事務所は魔術師とまで言われている設計事務所なんですよ」・・ともなりかねない。

受けを狙った放映、或いは”やらせ”・・・いろいろ問題視されたことはあるが、
今日メディアは情報社会の中で大きな影響力を持ち、場合によっては国までも動かしてしまう力を持っていることを認識し、情報を出す側のモラルが要求され、あるがまま
を正直に伝えなければならないのだろう。

その設計事務所が、テレビで魔術師と放映されたのかどうかは定かではないが、工務店が紹介するにあたって、多分「テレビにも出た有名な設計事務所なんです」とKさんに紹介されたことは確かで、その黒魔術に乗せられてしまったのかも知れない。

テレビ社会の世の中、テレビ以上に情報力を持ってしまうネット社会、
私たちは、入ってくる情報に惑わされることなく、受け身を捨て、自分の判断力と自分の意思で選択し良し悪しを見極める能力を身に着けなければならない時代になっている。

みのもんたが ココアが体にいいと言ったから、次の日に店頭ではココアが不足になってしまう社会では多分駄目なんだろう。




回想-14

2011-01-29 07:35:38 | 回想

とにかく、匠と称される設計事務所の言い分を聞こうと電話をいれた。
本人が電話に出られ、2000万円の予算をKさんが伝えたのにも関わらず
なぜ、建設費用が2700万円になる図面を書き上げたのかと聞くと、
「私はKさんご夫婦が望むからそれを図面に反映しました」と言い、自分は
設計事務所とし間違ったことはしていないのだと言い張った。

だから、設計料はもらって当たり前で、返金する考えは持ち合わせていないというのだった。
設計事務所である以上、世間からはその道のプロだと思い相談する、まして
第三者であるメディアからも”匠”と報道され、賞賛された人であるプロが
依頼者の予算を考えず書き上げ、支払うことの不可能な建物を押し付けるのは、一般常識で考えてもそれは商品とはならず、本来は返金しなければならないのだろうが、その設計事務所は、裁判をおこしてもらっても結構ですとまで
言い張った。

Kさんにこのことを伝え、支払った180万円を設計事務所は返金する
意志は持っておらず、もし納得できなければ裁判に持ち込むしか方法はありませんが、民事事件になるため解決するには相当時間がかかると思いますが、
争うなら、同じ家を作るプロとして許す事はできませんので、証人として証言してもいいですから・・・と伝えた。

結局Kさん夫婦は考えた末、争いごとは避け、設計事務所に支払った180万円と施工業者に支払った25万円の合計205万円は授業料だと考え、再び納得できる住まいづくりに挑戦することになった。....つづく。


回想-13

2011-01-20 08:09:58 | 回想

Kさんは工務店に50万円と、工務店から紹介された設計事務所に百数十万円の設計料を支払っていた。
施工業者は顧客を取り込むため、適当なプランに金額を乗せ、契約書を作成し、客を逃がさない方法をとり、契約金50万円を支払わせ、ビフォ-アフタ-に出演した、大阪の設計事務所を紹介した。

話し合いの結果、両契約をキャンセルすることになり、契約金および設計料が一部返金してもらえるか 当社が交渉することなり、まずは施工業者の50万円の契約金の交渉をおこなった。
確かに契約書はまともな内容となっており、Kさんのサインもあり、印鑑も押してあり、対外的には有効な契約書とはなっているが、内容は全く違い施工業者がとった顧客をつなぎ留めておく手段としてよく使われる手で、銀行などに
融資を申し込む時のとりあえずつくる”天ぷら”と称される図面と見積書に似ている。

施工業者に電話を入れ、責任者と話ができ、こちらとしては全額返金を要求したが、業者が一旦手にしたお金は簡単に返金してもらえないのは世の常。
本来契約は本設計図が作成され、それに基づき出された金額が思惑と一致しかつ内容が納得できて初めて契約金を支払うのが基本ではあるが、
Kさんの人柄の良さか、あるいは施工業者の思惑に乗せられてしまたのか
とにかく このような安易な見極めをする人が世間には多くみられる。

施工業者との交渉の結果、50万円の契約金の半分は返金してもらえることとなり、Kさんにも了解いただいた。
残るのは、ビフォ-アフタ-に出演し、匠と称される設計事務所。
日本人はなぜかメディアに弱く、一度テレビで流されると、なんの根拠もなく信頼しそれを受け入れてしまう。

ニュ-スステ-ションで取り上げられたラ-メン店のように、翌日からその店の前に行列ができた。
地元でも名前は知っているが、特別おいしいという店でもなく、美味しい部類に入るラ-メン店なのだが、もっと美味しいラ-メンは他にもあり、
テレビで流される程、特に美味しいと思わない。
しかし報道されると県外からも食べにくる。
これが日本人の気質なのかもしれないが、今も多くの詐欺事件が後を絶たないのは、その安易な見極めの弱さにあるのかもしれない。

Kさんには、「一度支払ってしまったお金は戻ってこないと考えてください」と
あまり期待しないよう念をおした上で、"匠”と称される設計事務所に電話を入れることに。・・・・・続く


回想12

2011-01-17 08:22:27 | 回想

設計図と予算書が届けられた。
広さは50坪程度の木造2階建てで、造成された宅地の西側は4メートルの高低差があるが、設計図には手すりは書かれていない。

2700万円が建物費用であれば、この他に外構工事や登記費用、引っ越し費用、照明器具、カ-テン、家具等を含めると3,000万円を超えてしまうことになる、Kさんもすべてを含めて2,000万円は無理だとは思っているにしても、1,000万円もひらいてしまえばどうしていいかわからなくなったと言う。

とにかく、設計図に基づいて原価で予算をだし、工務店の経費をいれこの設計図でいくらかかるか出す事になり、1週間後業者から予算書が届き、工務店経費を見込んだ金額は2、400万円となった。
もし、Kさんに予算の余裕があれば、この建物は300万円も無駄な費用を注ぎ込み建てられる事になっただろうが、予算にこだわったことにより、無駄な費用を支払わずに済んだことに繋がったのかもしれない。

しかし、2、400万円に諸経費を含めると2、700万円の支出となり、Kさんの思惑は、諸経費、諸費用を含めても2,200万円程にしたいとの考えだった。

                                    つづく


回想-11

2011-01-16 13:52:57 | 回想

Kさんに、とにかくその設計図と施工業者が出した見積書を持ってきてくださいとお願いした。
何も内容がわからないまま、勝手な非難はできず、お互いの見解を見極めたうえでジャッジしなければ公平とは言えないが、Kさんご家族の許容金額が2000万円であるはずが、設計図に基づきだした建設費が2,700万円とは論外かもしれない。

依頼者の要望を満たし予算も合わすのは設計の段階では難しいかもしれないが、しかしプロである以上依頼者の要望をすべて図面に反映し、「予算オ-バ-しました」・・とは、あまりにも無責任な設計者でプロとは言えない。

一般の消費者は、いかんせんブランドに弱く、有名である事だけで信頼してしまい、自分の思いを満たしてくれると信じてしまう弱さはあるが、素人だからという理由で、見極める目を自らが閉ざしてしまっている。

専門知識がなくても、その人が、あるいはその企業が自分の思惑を満たしてくれる要素を持っているか、どのようなコンセプトを持った業者なのかは見極めができるはずなのに、それすら諦めてしまっている。

住まいづくりは家庭にとって最大の消費額であり、出来得る限りの努力と
しっかり見極めをし、進まなければならない。

Kさんには、とにかく資料を見たうえで役に立てるかを判断しますと
次回相談の日を決めたのだった。・・・・・・・・つづく。

 

 


回想-10

2011-01-15 08:32:22 | 回想

ある日二人連れの女性客が訪れ、最初は警戒しているのか、見学に来たと言い、具体的な話にはならず、この事務所の方針や"物づくり"の思いを話していると一人の女性が「キャンセルしようかなぁ?」・・と

最初は何のことかわからなかったが、よくよく聞いてみると、キャンセルしようかといったKさんは、すでに設計事務所で本設計が完了し見積書もできているということだった。
その設計図をもとに見積もりした金額は考えている予算を遥かに超え、調整できる金額では無いと話された。

こだわりの家を建てたいと、施工業者を訪れ、その業者から設計事務所を紹介され、打ち合わせを進め出来上がった設計図もしっくりしないまま設計事務所のペ-スで図面は出来上がったと言うのだった。

「要望を設計事務所に伝えなかったのですか?」と聞くと、
「伝えたのですが、これはああだ、こうだ、と言って説明を 聞いていると なんか納得させられてしまい、結局それは図面には反映されないままに進んでしまったんです」
と・・。

本来設計する立場である設計事務所は、施工業者から紹介されるものではなく、施工業者とは一線を置いたところに有って、プロではない依頼者の要望を専門的な立場から考え施工業者に要望を伝える立場にある筈。

施工業者の紹介であれば、その設計事務所は施工業者の有利な図面になってしまい、依頼者側の立場を通すことはできない。
Kさんは、
「この設計事務所はテレビにも出た有名な設計事務所らしいです。」
「ビフォ-アフタ-に取り上げられた匠だとか・・。」

                                      つづく。


回想ー9(連載)

2011-01-03 09:47:32 | 回想

結局Aさんの我儘を満たすことはできなかった。
いつもクライアントの要望を聞き取る時に、「我儘はいっぱい言ってくれて結構です」とお話しはするが、予算が限られたものであれば、その中から優先順位を決め、予算の許す限り実現しましょう・・とお話はしているが、そこでとどまらなかった。

結局、Aさんには契約金のほぼ全てを返金し、現場は完成するまで見ることにしたのだった。
仲裁に入ってくれた弁護士も....「本当にそれでいいんですか?」
と念をおされたが、人には話して理解してもらえる人と、理解してもらえない人が居るが、正当性を主張しても寝耳に水となってしまう場合がある。

争いごとの中からは決して良いものは生まれず、早く見極め建物を早く完成させないと携わっている職人建ちにも大きな迷惑をかけるため、
そう決断したのだった。


回想ー8

2010-12-29 20:02:18 | 回想

 何かを成し遂げようとする時、人はそれぞれの思いを持ち、それにむけて一生懸命努力をし、足りない部分は誰かの力を借り思いを遂げようとする、その思いに共鳴し人はその思いに動かされ、同じ喜びもらい、人に与え、それが共鳴しあい可能性を高め、思っていた以上の出来上がりとなる事がある。

一人の力には限りがあり、その限界をカバーし合い成し遂げるのは一つのチームであって、強要されたりお金で動かされたりで
出来上がるものではないのだろう。
資本主義社会の中において、確かにお金の力を否定することは出来ないが、2000万円の資金で作る家より、5000万円で作る家のほうが材料を選ぶにも苦労なく決めることが出来るかもしれない。

高価なものを使って建てる家は高級な家と言われるかもしれないが、物づくりの中においても決してお金で買えないものがあり
造る側の思いが生かされてこそ心に染み込む物が出来、
物差しでは計れない高級感を味わえ、飽きることの無い満足感を手に入れることが出来るのだろうと思っている。


回想ー5(連載)

2010-12-24 07:29:07 | 回想

Aさんとのプロジェクトを、相手のプライドを気にする事無く正直にこちらの考えを伝えていれば再度の依頼は無かったのだろうが、プライドを保ったまま終わらせた事のよって、Aさんは再依頼も躊躇なく出来たのかもしれない。

受ける条件として、住まいづくりの順序はこちらが決め進める事と
契約条件に従って進めることを条件に家作りを進めるよう納得していただいた。
一階の居住部分から打ち合わせをはじめ、二階からロフトへとプランニングを進め、家に使える予算を決めその予算の中で精一杯の家を造るために、Aさんにはこちらの意見も理解していただき順調に進み、図面も出来予算を出すところまでは問題なく進んだ。

要望も多く、Aさんが希望する予算内では収まるのも難しいと思われたが、とにかく予算を施工業者に出してもらい、それから調整しようと
話し合ったが、予算オーバーした調整でAさんは自分の要望を満たさなければ納得出来なかったのか予算のなかで全てを満たすことを主張し始めた。

「貴方なら出来るはず」と言い張り、「そのため貴方にお願いしたのだから」と引くことをしなかった。
原価で作るということは、100円のものを100円で買うと言う事なので
それ以上は安く買えないと言っても理解してもらえず、予算を縮小するため、最後の手段とし、分離発注の手段を提案し、工務店に依頼せず
大工に全てを任せる提案をし、予算を出してもらった工務店に事情を説明し、こちらの内情も納得していただいた。

方向性も決まり、工務店から出された見積書を組みなおし予算はAさんが納得する金額となり、大工さんと契約書を取り交わしたが、今度はその大工からAさんの仕事は請け負うのが不安だと断りの電話がはいった。
ここまで来て、契約も交わし不安だと言う理由で契約解除をすれば
契約不履行になり、Aさんには通用しないと考え、大工さんを説得し
三者が話し合い、とにかくこのプロジェクトを進めるため、お互い
精一杯のものを作るために進める事を確認し、進める事で話し合いはつき工事は着手された。

 



回想ー4

2010-12-22 07:40:50 | 回想

信頼の中の人の繋がりが穏やかな関係を作り上げ、行き違いがあったとしてもその関係の中で修復できるが、金銭の絡む中においては、ともすれば損得が表に出て信頼が単なる言葉として使われる場合がある。

誰でも安くて良いものを手に入れたいという欲望はもっているし、自分の思い通りになれば満足感を得られるが、自分ひとりで出来ない場合は、分からない部分は専門的な知識を持った人に思いを託さなければならないが、それはあくまでも託す相手と信頼感の中から生み出されるものであり、お金の力で動かすものではないはず。

自分の飼っているペットが病気になり、貴方は医者だから治せる筈だと言っても、治せる場合もあり、死力を尽くしても治せず死んでしまう場合さえあり、死んでしまったのは貴方の責任だとは普通は言わない。

Aさんと契約解除し半年が過ぎた頃、Aさんご自身から電話が入った。
「もう一度 設計依頼したいのですが受けていただけないでしょうか?」

 


 


回想ー3(連載)

2010-12-20 09:42:25 | 回想

どのように終わらせれば良いかを考えた末、Aさんから断ってもらうようにと考えたが、今から思えばそれは逆に自分の中の”おごり”であって、相手を思いやるというのは奇麗事に過ぎなかったのかも知れない。

終わらせた方法はともかく、Aさんはこちらの思惑通り白紙撤回を求め、こちらもそれに応じ、契約金の全てを返金することにした。
Aさんはそこまでしてもらわなくてもいいと言ったが、こちらとしては
こちらから終わらせる場合は全てを返金する事に決めている為、
内情はAさんには分からないにしても、とにかく返金し、
このプロジェクトは終わった。

ここで終わってしまっていれば自分の中の反省で終わっているのだが、終わらないのが不運だったのか良いほうに考えれば試練だったのか、
とにかく六ヵ月後このプロジェクトは動き出す事となる。


回想ー2(連載)

2010-12-19 22:59:55 | 回想

来られたお客さんAさんはその後数回訪れ、契約の運びとなったが
説明した契約金の半分を持ってきたのだった。
こちらとすれば契約金はいくらでもいいと思っているが、契約とは
その人を信頼し、契約内容にしたがってこそ正立するが、最初から
試されているようで、半信半疑のまま打ち合わせは進んでいった。

契約後何ヶ月か進んだ折、想像した通りうまく歯車がかみ合わなくなり
自分の思ったとおりの順序で進まないと気に食わないのか、ロフトを先に設計して欲しいと言い、全体が見えないとロフトは作れないとこちらは説明するが、Aさんは聞き入れようとはしなかった。

Aさんの夢は良く分かるが、家は住むために建てるものであり、キッチンやその他の生活空間を煮詰めた上で、構造を考え骨組みが出来、ロフトの位置が決まり 、外観を描く事が出来る。

メールを書き、話をしたが理解してもらえず、結局このまま進むと、お互い納得できる建物は無理だと判断し、どうやって事を終わらせようかと考え、相手のプライドの高さからすればこちらから断るわけには行かないだろうと考えたのが間違いの始まりだったのかもしれない。