一人旅2日目。
この日は6時に起きた。と言うか目が覚めてしまった。
大概、時差のある国での一泊目は変な時間に目が覚めてしまうものだ。
しかし、前日は徹夜の体で体力が持つ限りほっつき歩いたためか、かなり適当な時間である。
シャワーを浴び、今日持っていく荷物の準備をする。
この日はワイメア渓谷を中心に、カウアイ島を周るツアーに参加していたのだ。一人で。
集合時間は宿のエントランスに8時15分。時間はたっぷりある。
7時位に宿と隣接しているビーチに行く。
昨夜は真っ暗だったため、何も分からなかったが、何とも広いビーチで、水平線以外視界を遮るものが何も無い。そしてそこから現れている朝日。
なんと喫煙所があり、朝日を浴びながら久しぶりのタバコをゆっくりと味わう。
一服入れてもまだ1時間位余裕がある。
次は朝食である。宿のダイニングに行く。
メニューを見たが、アメリカの食事に慣れていないため、
エントリー、スターター等の区分が、一体どういったレベルの食べ物なのかよく分からない。
取り敢えず、値段と英語で書いてある説明だけを頼りに、セットになってそうなものを適当に頼む。
ポテトはどうするか?卵はどうするかなどを聞かれたが、ポテトはハッシュド、卵はスクランブルドしか知らないため、選択の余地はない。
そして拙い英語で海岸が見えるアウトサイド席にしてもらう。
海岸から見える朝日を見ながら、豪勢な朝食。絶対に一人でやるもんじゃない。
食後は一度部屋に戻る。昨日のパールハーバーで購入したポストカードをフロントで出そうと思い、取りに行ったのである。
すると、部屋の電話がけたたましく鳴る。向こうは全て英語である。正直びびる。
恐る恐る受話器を取る。
“Hello?…”
すると向こうは結構案スピードでまくし立ててきたが、要は、“ビル(領収書)を確認しろ”“ビルにサインをしろ”“そして金を払え”ということだった。
そう、俺は注文時に、自分の部屋番号を何かの紙にサインをしたため、この朝食の料金はチェックアウトの際に精算するものと勘違いし、食べ終わった後、勝手に出て行ってしまったのである。
つまりは余りにも堂々とした食い逃げを敢行してしまったのである。
取り敢えず大急ぎで下に降り、金を払う。
ついでに、ポストカードをフロントに持って行き、これを日本に出したいのだが、スタンプはあるか、と尋ねたら、ごめんなさい、このポストカードの切手貼り付け欄に合ったスタンプが無いんです…との答えが返ってきた。
“国内送付用の切手ならあるが、これじゃダメですよね?”と言って、現物を見せてくれたが、俺にはこの切手で大丈夫なのかどうか知る由も無い。
そして、別に切手の貼り付けスペースからはみ出していようがなんら問題は無いような気がするが、宿の人がそう言ってるんだから、そうなんだろうと思い、しょぼくれながら、エントランスで迎えの車を待つ。
すると、お迎えが。
中から出てきたのは正にターザンのような男。
筋骨隆々、真っ黒に焼けた肌にタンクトップがよく似合う。
このガイドはボビーさん。
ガイド暦25年の自他共に認める、カウアイ島№1ガイドである。って俺はこの人しか知らないけどな。
この人凄い人で、カウアイ島なら俺に任せろという感じ。
あの『世界不思議発見』で出演経験もある。
俺が車内で『地球の歩き方』を見ていると、“俺もこの本の編集会議、情報提供で日本行ったよ~”とのこと。
そして、“以前、ジャケ写のために来ていたミサを案内した”と言っていたので、ミサって誰だよ、と思っていると、日本の歌手のミーシャだった。
本当に多くのカウアイ島に関しての情報を教えてくれた。
そしてこの人は本当にカウアイ島の自然、動物を愛しているんだなと節々に実感した。
ボビーさんの話の全てここに記すことは出来ないので、俺が一番印象に残った花の話。
海がある地域と、山にある地域に咲く。要するに海バージョンと山バージョンがある。ということ。
この特徴的な形で解るとおり、花が半分なのである。
この花には伝説がある。
かつて、まだHawaiiが今で言う原住民の人たちだけで暮らしていた頃、一組の男女が恋に落ちた。二人は身分が異なり、どこもやはり同じで、身分の違う者同士の恋は決して許されなかった。二人の恋は発覚し、殺されてしまう。
二人の死後、海に、そして山に新しい花が確認され始めた。
そしてその花の花びらは二つで一つと言うように、半分だったという。
何ともロマンチックではないか。ちなみに、動物だろうが植物だろうがなんでもそうだけど、細胞の状態から始まり、全部左右対称という形が基本なのである。
半分だけの形というのは非常に生物学上珍しいという。
そして何と言ってもこのボビーさん、そこらじゅうの木の実や果物を拾って食べさせてくれる。
地面に落ちているのを拾い食いなんてのは基本中の基本。
木に登って毟り取ったり、高い場所の木の実も手製のカッターでいとも簡単に手に入れてしまう。
その辺に落ちているフルーツで、表面を虫が歩き回っているのを、フッとひと吹きし、“ほら、食え”ってな感じなのだ。
しかも“最近まで、この実が食べられるって知らなかったんだよ~”と仰っていた実もあり、俺もその実を食べたのだが、食べれるものだと分かったきっかけが、
「鳥が食べてたから」
何ともワイルドな判断基準ではないか。
まあ、これには一理あるってこともしっかり学んだのだが、それは後述。
俺は正直言って胃腸が弱い人間である。だが、ここで遠慮するような馬鹿げた人間ではない。俺は異国を体験しに来たのだ。つまりはこのような事を体験しに来たんだ。後でどうなろうと知ったことか。
そう意気込み、貰ったものは全て食い尽くした。
自分の中で何かを捨てられた。それが進歩なのか退化なのかは別として。
かなり野生に帰ったような気がする。
その日の夜、下痢になったことは言うまでも無い。
パッションフルーツや、グアバなんて道を歩けばごろごろ落ちているので食べ放題である。
俺も色々な種類のパッションフルーツを食べた。
因みに、現地の人は落ちているやつなんて絶対食べないよ、と言っていた。
それはまさか…衛生的な理由か?と思ったが、なんてことは無く、日本人がカキが落ちているのをわざわざ拾って食べないのと同じだと言う。
まったく珍しいものでもないという訳だ。
かなりボビーさんとの珍道中(俺にとっては)が長くなってしまったので、ここからはカウアイ島の名所編を。
まず、最初に向かったのは「潮吹き岩」
天気も良好。波はそれほど高くなかったにも拘らず、いい潮吹きっぷりであった。
トンガのホウマの潮吹き穴を髣髴とさせる。
次に向かったのが、「カウアイコーヒー」
ここでは何十種類と言う現地の特産品であるカウアイコーヒーを試飲できる。
制限時間は20分ほど。貧乏人丸出しで、出来る限りのコーヒーを試飲する。
一番美味かったピーベリーと言う品種をお土産で購入した。因みにミディアムロースト。
途中の道路沿いの景色に驚く。しかしこんなのまだまだ序の口だそう。
これで驚いてたら本物のワイメア渓谷見たら心臓止まるよ、とのこと。
お次は「カウアイクッキー」
ここでもカウアイで有名なクッキーが試食できるのだが、俺は朝食をしっかりと食べていたため、そしてコーヒーを飲みすぎたため、全く腹が減っておらず、寧ろ満腹状態。
しかし、ボビーさんは次から次へと、全てのクッキーを試食するまでは許しませんと言うかのごとく、次々とクッキーを持ってくる。
野生児とのレベルの差を痛感する。
そして麓のスーパーで昼食を購入し、いよいよワイメア渓谷へ。
1時間ほどドライブした後、ようやく到着。
これは凄い。半端じゃない。
太平洋のグランドキャニオンと言われるワイメア渓谷。
緑やオレンジといった色彩が様々なため、グランドキャニオンよりこちらの方がいいという人も多いそう。
これまで余り自然遺産系は行ったことなかったが、ワイメア渓谷の絶景は断トツで№1になってしまった。
こんなのガイドブックやポストカードの写真を見ていても何の感動も無い。
実際に圧倒されるような渓谷を見てこそ意味があると思う。
しばし圧倒的な壮観に見つめ入ってしまう。
その後、ボビーさんがワイメア渓谷で最も凄いという奇跡の絶景ポイントを見に行く。
今回は、ボビーさんの個人ツアーなので危ないところもガンガン行ったが、会社のツアーなどだと、バスでは入れない場所で、しかも時間的な制限もあるため、このポイントは見れないなんて事もあるという。
ワイメア渓谷№1の絶景なんて言葉に、心踊る。
そして到着。じゃあ、一応写真を載せます。
行きますよ…
この写真を見た100倍感動していただくと丁度よいかも知れない。
これを最初に見たときは笑っちゃった。
そしてクールに澄ましてた俺が“すげー”って笑いながら叫んでしまった。
これ奇跡だよ。圧倒的なスケールもさることながら、この色のバランス。
自然の芸術なんてありきたりな言葉を使ってしまうけれども、こんな景色が自然にできたなんて奇跡としか言いようが無い。
この景色を最初に発見した人は何を思ったんだろう…
最初に見たときは驚愕したことだけは間違いないだとうと思う。
ここで絶景を臨みながらランチ。
食後は更に登り、次の絶景ポイントへ。
ここは「世界不思議発見」のロケで使用されたポイントらしい。
因みに製作秘話として、このポイントは道路からすぐそばにあるのだが、秘境感をより強く出すために、散々、獣道のような木々の中を遠回りしてからポイントに立ち、あたかもやっと辿り着きました…という演出が入ったという。そんな裏話言っていいのか…
俺もも早速ジェンダーの壁を超えてミステリーハンターと化し、彼女が“すごーーい!”と叫んだポイントに立つ。
もうお腹いっぱい…
ここはトレッキングの道もいい感じの雰囲気。これこそが秘境である。
ここにはミントが生えているのだが、このミントには匂いもあの特有の刺激的な味も無い。これは何故かというと、植物は外的から自分の身を守るために、棘を生やしたり、毒を持ったり、あるいは味を刺激的にしたり進化する。
ミントのあの刺激も外的から食べられないようにするための進化の形態である。しかし、この標高が高い渓谷地帯では外的がほとんどいないため、自分の身を守るための毒や刺激を持つ等の進化をする必要が無い。だから刺激がなくなったのである。
つまりは鳥が食べているような実は毒も刺激も無く、逆に甘く美味しくなり、わざと食べられることで捕食者に種を運んでもらっているという手段をとっているのである。
ボビーさんは本当に自然を愛しているので、珍しい鳥や植物を見かけると、ツアーそっちのけで写真を取りまくる。鳥の写真を本当に嬉しそうに見せてくる彼を見てそう思った。
彼はカウアイ島生まれ、カウアイ島育ちだそうだ。
帰り道は渓谷から見る海に夕日が沈んでいるところでこれまた絶景。
本当に絶景に囲まれた一日であった。カウアイ島は凄い島だな。
帰りは俺のまがままでコンビニに寄って貰い、スタンプを購入しようとするが、宿のフロントのひとと全く同じ答えが帰ってきた。
どうすればいいのかと途方に暮れながら、『地球の歩き方』を見ると、日本までの料金は98¢とのこと。書いてあるじゃん…
なんとボビーさんが切手を持っていたので、頂戴する。何から何まで申し訳ない…
宿に到着。ボビーさんに今日の料金、チップを払い、名刺を頂く。
今日取っていただいた写真を送ってくれと約束し、喫煙所へ。
一服入れた後は夕食だ。結構腹減った。
昨日と同じ轍は踏まないと意気込んでダイニングに突入。
チキンのハワイアンソースがけと昨日飲んだカウアイゴールドを注文。
また一人でオープンスペースに座り、頂く。
奇跡の絶景を目の当たりにし、飯も食えたと言うことで、気分がよくなり、多めにチップを払った。その時の笑顔と“Thank you!”これも旅の楽しみの一つになった。
カウアイ島はオワフ島と違って、日本語が全く通用しないのがいい。全部英語で生活するというのが楽しすぎる。
部屋に戻ると、荷物をバックパックに詰める。
明日は7時にエントランスに集合。そしてナ・パリボートを終えたら、宿には戻らずにそのままリフエ空港に。17時10分の便で再びオワフ島に舞い戻るという、これまた強行日程になっていた。
つまり、朝の7時の集合時間までにチェックアウトを済ませ、ボートにバックパックを持っていかなければならないのだ。
明日のボートセーリングに思いを馳せる。
宿のエントランスからタクシーで8時までにポートアレンという港に行き、そこで手続きを行う。
今日のボビーさんは日本語も出来るからまったく問題なかったが、明日はガイドもボートのクルーも全員全て英語だ。楽しみだが、一抹の不安もある。しかも一人での参加である。
何かの指示のときに一人だけトンチンカンなことしたらどうしよう…
まあ、と言っても英語なんだから何とかなるか…
そんなことを考えながらアラームをセットし、眠りに就いた。
この日は6時に起きた。と言うか目が覚めてしまった。
大概、時差のある国での一泊目は変な時間に目が覚めてしまうものだ。
しかし、前日は徹夜の体で体力が持つ限りほっつき歩いたためか、かなり適当な時間である。
シャワーを浴び、今日持っていく荷物の準備をする。
この日はワイメア渓谷を中心に、カウアイ島を周るツアーに参加していたのだ。一人で。
集合時間は宿のエントランスに8時15分。時間はたっぷりある。
7時位に宿と隣接しているビーチに行く。
昨夜は真っ暗だったため、何も分からなかったが、何とも広いビーチで、水平線以外視界を遮るものが何も無い。そしてそこから現れている朝日。
なんと喫煙所があり、朝日を浴びながら久しぶりのタバコをゆっくりと味わう。
一服入れてもまだ1時間位余裕がある。
次は朝食である。宿のダイニングに行く。
メニューを見たが、アメリカの食事に慣れていないため、
エントリー、スターター等の区分が、一体どういったレベルの食べ物なのかよく分からない。
取り敢えず、値段と英語で書いてある説明だけを頼りに、セットになってそうなものを適当に頼む。
ポテトはどうするか?卵はどうするかなどを聞かれたが、ポテトはハッシュド、卵はスクランブルドしか知らないため、選択の余地はない。
そして拙い英語で海岸が見えるアウトサイド席にしてもらう。
海岸から見える朝日を見ながら、豪勢な朝食。絶対に一人でやるもんじゃない。
食後は一度部屋に戻る。昨日のパールハーバーで購入したポストカードをフロントで出そうと思い、取りに行ったのである。
すると、部屋の電話がけたたましく鳴る。向こうは全て英語である。正直びびる。
恐る恐る受話器を取る。
“Hello?…”
すると向こうは結構案スピードでまくし立ててきたが、要は、“ビル(領収書)を確認しろ”“ビルにサインをしろ”“そして金を払え”ということだった。
そう、俺は注文時に、自分の部屋番号を何かの紙にサインをしたため、この朝食の料金はチェックアウトの際に精算するものと勘違いし、食べ終わった後、勝手に出て行ってしまったのである。
つまりは余りにも堂々とした食い逃げを敢行してしまったのである。
取り敢えず大急ぎで下に降り、金を払う。
ついでに、ポストカードをフロントに持って行き、これを日本に出したいのだが、スタンプはあるか、と尋ねたら、ごめんなさい、このポストカードの切手貼り付け欄に合ったスタンプが無いんです…との答えが返ってきた。
“国内送付用の切手ならあるが、これじゃダメですよね?”と言って、現物を見せてくれたが、俺にはこの切手で大丈夫なのかどうか知る由も無い。
そして、別に切手の貼り付けスペースからはみ出していようがなんら問題は無いような気がするが、宿の人がそう言ってるんだから、そうなんだろうと思い、しょぼくれながら、エントランスで迎えの車を待つ。
すると、お迎えが。
中から出てきたのは正にターザンのような男。
筋骨隆々、真っ黒に焼けた肌にタンクトップがよく似合う。
このガイドはボビーさん。
ガイド暦25年の自他共に認める、カウアイ島№1ガイドである。って俺はこの人しか知らないけどな。
この人凄い人で、カウアイ島なら俺に任せろという感じ。
あの『世界不思議発見』で出演経験もある。
俺が車内で『地球の歩き方』を見ていると、“俺もこの本の編集会議、情報提供で日本行ったよ~”とのこと。
そして、“以前、ジャケ写のために来ていたミサを案内した”と言っていたので、ミサって誰だよ、と思っていると、日本の歌手のミーシャだった。
本当に多くのカウアイ島に関しての情報を教えてくれた。
そしてこの人は本当にカウアイ島の自然、動物を愛しているんだなと節々に実感した。
ボビーさんの話の全てここに記すことは出来ないので、俺が一番印象に残った花の話。
海がある地域と、山にある地域に咲く。要するに海バージョンと山バージョンがある。ということ。
この特徴的な形で解るとおり、花が半分なのである。
この花には伝説がある。
かつて、まだHawaiiが今で言う原住民の人たちだけで暮らしていた頃、一組の男女が恋に落ちた。二人は身分が異なり、どこもやはり同じで、身分の違う者同士の恋は決して許されなかった。二人の恋は発覚し、殺されてしまう。
二人の死後、海に、そして山に新しい花が確認され始めた。
そしてその花の花びらは二つで一つと言うように、半分だったという。
何ともロマンチックではないか。ちなみに、動物だろうが植物だろうがなんでもそうだけど、細胞の状態から始まり、全部左右対称という形が基本なのである。
半分だけの形というのは非常に生物学上珍しいという。
そして何と言ってもこのボビーさん、そこらじゅうの木の実や果物を拾って食べさせてくれる。
地面に落ちているのを拾い食いなんてのは基本中の基本。
木に登って毟り取ったり、高い場所の木の実も手製のカッターでいとも簡単に手に入れてしまう。
その辺に落ちているフルーツで、表面を虫が歩き回っているのを、フッとひと吹きし、“ほら、食え”ってな感じなのだ。
しかも“最近まで、この実が食べられるって知らなかったんだよ~”と仰っていた実もあり、俺もその実を食べたのだが、食べれるものだと分かったきっかけが、
「鳥が食べてたから」
何ともワイルドな判断基準ではないか。
まあ、これには一理あるってこともしっかり学んだのだが、それは後述。
俺は正直言って胃腸が弱い人間である。だが、ここで遠慮するような馬鹿げた人間ではない。俺は異国を体験しに来たのだ。つまりはこのような事を体験しに来たんだ。後でどうなろうと知ったことか。
そう意気込み、貰ったものは全て食い尽くした。
自分の中で何かを捨てられた。それが進歩なのか退化なのかは別として。
かなり野生に帰ったような気がする。
その日の夜、下痢になったことは言うまでも無い。
パッションフルーツや、グアバなんて道を歩けばごろごろ落ちているので食べ放題である。
俺も色々な種類のパッションフルーツを食べた。
因みに、現地の人は落ちているやつなんて絶対食べないよ、と言っていた。
それはまさか…衛生的な理由か?と思ったが、なんてことは無く、日本人がカキが落ちているのをわざわざ拾って食べないのと同じだと言う。
まったく珍しいものでもないという訳だ。
かなりボビーさんとの珍道中(俺にとっては)が長くなってしまったので、ここからはカウアイ島の名所編を。
まず、最初に向かったのは「潮吹き岩」
天気も良好。波はそれほど高くなかったにも拘らず、いい潮吹きっぷりであった。
トンガのホウマの潮吹き穴を髣髴とさせる。
次に向かったのが、「カウアイコーヒー」
ここでは何十種類と言う現地の特産品であるカウアイコーヒーを試飲できる。
制限時間は20分ほど。貧乏人丸出しで、出来る限りのコーヒーを試飲する。
一番美味かったピーベリーと言う品種をお土産で購入した。因みにミディアムロースト。
途中の道路沿いの景色に驚く。しかしこんなのまだまだ序の口だそう。
これで驚いてたら本物のワイメア渓谷見たら心臓止まるよ、とのこと。
お次は「カウアイクッキー」
ここでもカウアイで有名なクッキーが試食できるのだが、俺は朝食をしっかりと食べていたため、そしてコーヒーを飲みすぎたため、全く腹が減っておらず、寧ろ満腹状態。
しかし、ボビーさんは次から次へと、全てのクッキーを試食するまでは許しませんと言うかのごとく、次々とクッキーを持ってくる。
野生児とのレベルの差を痛感する。
そして麓のスーパーで昼食を購入し、いよいよワイメア渓谷へ。
1時間ほどドライブした後、ようやく到着。
これは凄い。半端じゃない。
太平洋のグランドキャニオンと言われるワイメア渓谷。
緑やオレンジといった色彩が様々なため、グランドキャニオンよりこちらの方がいいという人も多いそう。
これまで余り自然遺産系は行ったことなかったが、ワイメア渓谷の絶景は断トツで№1になってしまった。
こんなのガイドブックやポストカードの写真を見ていても何の感動も無い。
実際に圧倒されるような渓谷を見てこそ意味があると思う。
しばし圧倒的な壮観に見つめ入ってしまう。
その後、ボビーさんがワイメア渓谷で最も凄いという奇跡の絶景ポイントを見に行く。
今回は、ボビーさんの個人ツアーなので危ないところもガンガン行ったが、会社のツアーなどだと、バスでは入れない場所で、しかも時間的な制限もあるため、このポイントは見れないなんて事もあるという。
ワイメア渓谷№1の絶景なんて言葉に、心踊る。
そして到着。じゃあ、一応写真を載せます。
行きますよ…
この写真を見た100倍感動していただくと丁度よいかも知れない。
これを最初に見たときは笑っちゃった。
そしてクールに澄ましてた俺が“すげー”って笑いながら叫んでしまった。
これ奇跡だよ。圧倒的なスケールもさることながら、この色のバランス。
自然の芸術なんてありきたりな言葉を使ってしまうけれども、こんな景色が自然にできたなんて奇跡としか言いようが無い。
この景色を最初に発見した人は何を思ったんだろう…
最初に見たときは驚愕したことだけは間違いないだとうと思う。
ここで絶景を臨みながらランチ。
食後は更に登り、次の絶景ポイントへ。
ここは「世界不思議発見」のロケで使用されたポイントらしい。
因みに製作秘話として、このポイントは道路からすぐそばにあるのだが、秘境感をより強く出すために、散々、獣道のような木々の中を遠回りしてからポイントに立ち、あたかもやっと辿り着きました…という演出が入ったという。そんな裏話言っていいのか…
俺もも早速ジェンダーの壁を超えてミステリーハンターと化し、彼女が“すごーーい!”と叫んだポイントに立つ。
もうお腹いっぱい…
ここはトレッキングの道もいい感じの雰囲気。これこそが秘境である。
ここにはミントが生えているのだが、このミントには匂いもあの特有の刺激的な味も無い。これは何故かというと、植物は外的から自分の身を守るために、棘を生やしたり、毒を持ったり、あるいは味を刺激的にしたり進化する。
ミントのあの刺激も外的から食べられないようにするための進化の形態である。しかし、この標高が高い渓谷地帯では外的がほとんどいないため、自分の身を守るための毒や刺激を持つ等の進化をする必要が無い。だから刺激がなくなったのである。
つまりは鳥が食べているような実は毒も刺激も無く、逆に甘く美味しくなり、わざと食べられることで捕食者に種を運んでもらっているという手段をとっているのである。
ボビーさんは本当に自然を愛しているので、珍しい鳥や植物を見かけると、ツアーそっちのけで写真を取りまくる。鳥の写真を本当に嬉しそうに見せてくる彼を見てそう思った。
彼はカウアイ島生まれ、カウアイ島育ちだそうだ。
帰り道は渓谷から見る海に夕日が沈んでいるところでこれまた絶景。
本当に絶景に囲まれた一日であった。カウアイ島は凄い島だな。
帰りは俺のまがままでコンビニに寄って貰い、スタンプを購入しようとするが、宿のフロントのひとと全く同じ答えが帰ってきた。
どうすればいいのかと途方に暮れながら、『地球の歩き方』を見ると、日本までの料金は98¢とのこと。書いてあるじゃん…
なんとボビーさんが切手を持っていたので、頂戴する。何から何まで申し訳ない…
宿に到着。ボビーさんに今日の料金、チップを払い、名刺を頂く。
今日取っていただいた写真を送ってくれと約束し、喫煙所へ。
一服入れた後は夕食だ。結構腹減った。
昨日と同じ轍は踏まないと意気込んでダイニングに突入。
チキンのハワイアンソースがけと昨日飲んだカウアイゴールドを注文。
また一人でオープンスペースに座り、頂く。
奇跡の絶景を目の当たりにし、飯も食えたと言うことで、気分がよくなり、多めにチップを払った。その時の笑顔と“Thank you!”これも旅の楽しみの一つになった。
カウアイ島はオワフ島と違って、日本語が全く通用しないのがいい。全部英語で生活するというのが楽しすぎる。
部屋に戻ると、荷物をバックパックに詰める。
明日は7時にエントランスに集合。そしてナ・パリボートを終えたら、宿には戻らずにそのままリフエ空港に。17時10分の便で再びオワフ島に舞い戻るという、これまた強行日程になっていた。
つまり、朝の7時の集合時間までにチェックアウトを済ませ、ボートにバックパックを持っていかなければならないのだ。
明日のボートセーリングに思いを馳せる。
宿のエントランスからタクシーで8時までにポートアレンという港に行き、そこで手続きを行う。
今日のボビーさんは日本語も出来るからまったく問題なかったが、明日はガイドもボートのクルーも全員全て英語だ。楽しみだが、一抹の不安もある。しかも一人での参加である。
何かの指示のときに一人だけトンチンカンなことしたらどうしよう…
まあ、と言っても英語なんだから何とかなるか…
そんなことを考えながらアラームをセットし、眠りに就いた。