斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

プールの排水でお気の毒なことに

2015年10月29日 04時04分09秒 | 斎藤秀俊の着眼
そもそも、プールの排水がそのまま川に流れる仕組みになっているという、このICTの時代にかなり前時代のシステムをそのままに放置していて、失敗した人が割を食うという、おかしなおかしなことが何件もおこっています。学校の先生も内水面漁業者も、関係者すべてがお気の毒です。

例1:南魚沼市のとある川でウグイやアユが300匹以上も浮いているのがみつかった。川の水から2mg/Lの高濃度の塩素が検出され、県が排出源を調査していたところ、市立某小学校のプールから高濃度の塩素を含む水を川に排水したことがわかった。使用期限切れの塩素剤を処分するため、計約40キロ分もの塩素剤をプールに投入した。

ハイクロンだとプール水1m3あたり1~1.5gの割合で投入するものです。25mプールでは約300m3だから、300-450g。40kgだと、おおよそ100倍。通常の水道水基準で遊離残留塩素濃度は0.4mg/L-1.0mg/L。水道水でも弱い魚は死んでしまうので、川の水の段階で2mg/Lだと、流入直後で排水口の近くでは200mg/Lもあり得るか、という量。たしかに、快晴の晴天だと1.0mg/Lなら1時間以内に分解するのですが、100倍量だと単純計算で100時間。太陽の紫外線が降り注がないと分解は極めて遅いので、一日10時間分解するとして、分解に10日はかかる。

こういう計算を行った後に排水すれば問題なかったのだが、排水がちょっと早すぎて大騒ぎに。現場の教員を悪いというのは簡単だが、その前にそのままもろに川に流す構造を放置しているということがよくない。

例2:長岡市内の小学校でも、清掃のためプールに塩素を含む殺菌剤を投入。その水を次の日に川に放出。川で魚約500匹が死んだ。教員2人が書類送検されたというけれども、どのような教員が担当しても安心して排水できるように、川に直結しない構造にしていない自治体の責任はどうなのか。

例3:岐阜市でも中学校のプールから高濃度の塩素剤が近くの川へ流出し、魚約500匹が死んだ。こちらは通常の20倍というから20mg/Lか。ところが大問題は、岐阜市内の小中学校の排水ミスは3年連続4回目(2012年まで)ということ。これだけ人為的ミスを誘発する施設の構造に問題があるのに、みんなで個人の責任に押し付けているという。たいへんおかしな話だと思います。

こんなことを繰り返していると、排水が川に直結しているプールで、プールを運営しようという気が萎えてしまうのではないでしょうか。まじめにやっていて送検されるなんて、ほんとうにお気の毒です。
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