- まんが日本昔話は 毎日放送で1975年から1995年まで放映された。子供の頃、土曜の夜7時からは、いつも見ていた「昔話」
- こどもだった私は 30分の中には ときどき「可哀想な話」があり、それが嫌だった。面白いとんちや、昔からの話が好きだったから。
「あとかくしの雪」は、子供の時とても印象に残った作品。大人になって見てみると感慨深い。15分の中に、これだけの世界を描く・・・哲学的・仏教的な世界観もある。伝承として伝わる昔話は、子どもに媚びないもの。「あとかくしの雪」も、子供には理解できないような不条理に満ちた世界・・・・だからアニメーションの優しさ、名優2人の語りの柔らかさ・その静けさが ただ美しい。
<あらすじ>
① 山が噴火をして 火山灰が降る。昔は豊かだった村だが、噴火のせいで貧しい村になる。作物が実らない。
② 村に旅人がやってくる。何日も食べていないので、庄屋の家の前で食べ物を求める。庄屋の家の前の畑にだけ大根がたくさん植わっていた。
③ 意地悪な庄屋は、旅人の申し出を断る。もしも、畑から盗んでも、足跡(火山灰が積もっている)が残るので誰が盗ったかすぐ分かる。「村人でも見つけたら 代官所に連れて行くだけ」と言われる。
④ 村人は、あきらめて、また歩くが、倒れてしまう。おばあさんが旅人を見つけて、家で介抱する。自分の食べる夕食を旅人にあげるのだが、このお汁いっぱいに満たない食事以外、食料が全くない。(おばあさんにとって、本当に最後の食事・・・それを旅人にあげるのだ)
⑤ けれど旅人の空腹はおさまらない・・。するとおばあさんは、どこからか 大根を持ってきて旅人に食べさせる。そしておばあさんは、夜明け前、早く山を越すようにと旅人に出発を促して、旅立たせる。
旅人は感謝するが、ふと足跡に気付き驚愕する。おばあさんの家の足跡が、庄屋のだいこん畑とつながっていたからだ。旅人は、おばあさんの行く末を思い、「足が震えて」「夢中で道を急ぐ
⑥ 夜明け前の足跡に庄屋も気付くが、太陽が出てからこの足跡を追えばいいと思い、一端家に戻る。ところが・・その後、雪が降る。「誰が降らした雪なのでしょう」
灰の上に降り積もった雪がおばあさんの畑の足跡を 消してしまっていた・・・。不思議なことに、夜は星空だったのに、いつもより、ひと月も早く雪が降った・・・「もう足跡がみえません」というナレーションで終わる
「自己犠牲」という心を見せた物語だが、この話はひときわ悲しい。
おばあさんが何故旅人を助けたのか? それはもう自分が「死ぬと分かっていた」という背景がある。食料がないのだ。そして空腹で倒れた旅人に
「自分のごはんを全部ごちそうしてしまった」おばあさんは、「この憐れな旅人に何か食べさせたい」と考え、庄屋の畑から大根を盗むという罪を犯す。
人を生かすために自分が罪を犯す。・・・それは遡れば・・・人間には決して抗えない運命・・・自然の天変地異・「山の噴火」からきている。(もし山の噴火がなかったら、「豊かな村」のままでいられたはずだ。)
そして その罪を消し去ったのは、「雪」なのだ。皮肉にも「雪」という自然によって罪は消え去った。
けれど おばあさんの目の前に横たわったままの「やがてくる死」は、語られない。(さすがに子どもむけだもの)
昔話に登場する「神様」「仏様」「天の声」のような、絶対的に助けてくれる存在が描かれない。
「罪人」としてではなく、「人」としてその終わりを迎えるおばあさん・・・おそらく優しく働き者であっただろうおばあさんなのに、どうして助ける結末ではないのか?旅人はどうなったのか? 普通描かれるだろう子供向けの部分はいっさいない。何もそれは語られない、
「もう足跡がみえません」市原悦子さんの柔らかくあたたかい最後の言葉がとても悲しい。人として生きる不条理がそこにみえる。 そしてそれでも人は生き、死んでいく。仏教的な世界観や哲学も感じさせる至高の作品。
日本昔話は、本当に素晴らしい。素晴らしい点の一つに「日本語の美しさ」がある。方言とともにある 「正しく美しい日本語」の会話・ナレーション、今の子供番組には見られない良さがある。あまりにもったいないので、時代劇専門チャンネルだけでなく、地上波でも再放送すべきなのに・・・。
楽しみにしていました。
市川悦子さんの素朴で独特なナレーションとお話がなんとも合っていて、
心が落ち着きましたね。昔話は、善と悪がはっきりとしていますね。
現代のお話は、悪人にも何か理由があったから・・・なんてことをにおわすことがあるけれど。
昔話はシンプルですよね。それゆえに子ども心にずっしりと感じ入るのでしょうか。
実はこの101話を一冊にした本が家にあるんです。
「あとかくしの雪」入ってはいませんでした。
今日、少し読んで寝ることにします。
心が落ち着きますよね。言葉遣いも丁寧で、とても美しい日本語。あとかくしの雪が本にないのは、残念ですぅ。
(>_<) 原点は昔話というより、地方の仏話にあったようですが、それよりも美しい話になっていると思いますね。
なかなかこれだけシンプルで訴える作品ってないと思うので、紹介しました。
そういう時は、だいぶ心が疲れてる時が多いですね。昔話はなんだか癒やされるんですよね。
あとかくしの雪は、他の作品と比べて、とてもセリフや音が少なくて、無音が多い。その無音が、実に良い空気感を醸し出しており、自分ランキングで、かなり上位の作品です。
派手さだけでない、こういう番組が今もあればいいなと思う今日この頃です。
たくさんの方にこの作品を 特に大人になった方には本当にお薦めです。
私も こんないい年ですが(笑)アニメを見続けたい そんな心の余裕を持ち続けたいなと次の記事を更新しました。