パソコン上達日記2

日々の雑感を戯れに綴ります

名作「あとかくしの雪」 自己犠牲の美しさと悲しさ 

2016-02-14 07:11:35 | 番組コラム

    まんが日本昔話は 毎日放送で1975年から1995年まで放映された。子供の頃、土曜の夜7時からは、いつも見ていた「昔話」
      こどもだった私は 30分の中には ときどき「可哀想な話」があり、それが嫌だった。面白いとんちや、昔からの話が好きだったから。

「あとかくしの雪」は、子供の時とても印象に残った作品。大人になって見てみると感慨深い。15分の中に、これだけの世界を描く・・・哲学的・仏教的な世界観もある。伝承として伝わる昔話は、子どもに媚びないもの。「あとかくしの雪」も、子供には理解できないような不条理に満ちた世界・・・・だからアニメーションの優しさ、名優2人の語りの柔らかさ・その静けさが ただ美しい。

<あらすじ>

① 山が噴火をして 火山灰が降る。昔は豊かだった村だが、噴火のせいで貧しい村になる。作物が実らない。

② 村に旅人がやってくる。何日も食べていないので、庄屋の家の前で食べ物を求める。庄屋の家の前の畑にだけ大根がたくさん植わっていた。

③ 意地悪な庄屋は、旅人の申し出を断る。もしも、畑から盗んでも、足跡(火山灰が積もっている)が残るので誰が盗ったかすぐ分かる。「村人でも見つけたら 代官所に連れて行くだけ」と言われる。

④ 村人は、あきらめて、また歩くが、倒れてしまう。おばあさんが旅人を見つけて、家で介抱する。自分の食べる夕食を旅人にあげるのだが、このお汁いっぱいに満たない食事以外、食料が全くない。(おばあさんにとって、本当に最後の食事・・・それを旅人にあげるのだ)

⑤ けれど旅人の空腹はおさまらない・・。するとおばあさんは、どこからか 大根を持ってきて旅人に食べさせる。そしておばあさんは、夜明け前、早く山を越すようにと旅人に出発を促して、旅立たせる。

旅人は感謝するが、ふと足跡に気付き驚愕する。おばあさんの家の足跡が、庄屋のだいこん畑とつながっていたからだ。旅人は、おばあさんの行く末を思い、「足が震えて」「夢中で道を急ぐ

⑥ 夜明け前の足跡に庄屋も気付くが、太陽が出てからこの足跡を追えばいいと思い、一端家に戻る。ところが・・その後、雪が降る。「誰が降らした雪なのでしょう」

 灰の上に降り積もった雪がおばあさんの畑の足跡を 消してしまっていた・・・。不思議なことに、夜は星空だったのに、いつもより、ひと月も早く雪が降った・・・「もう足跡がみえません」というナレーションで終わる


「自己犠牲」という心を見せた物語だが、この話はひときわ悲しい。

おばあさんが何故旅人を助けたのか? それはもう自分が「死ぬと分かっていた」という背景がある。食料がないのだ。そして空腹で倒れた旅人に

「自分のごはんを全部ごちそうしてしまった」おばあさんは、「この憐れな旅人に何か食べさせたい」と考え、庄屋の畑から大根を盗むという罪を犯す。

人を生かすために自分が罪を犯す。・・・それは遡れば・・・人間には決して抗えない運命・・・自然の天変地異・「山の噴火」からきている。(もし山の噴火がなかったら、「豊かな村」のままでいられたはずだ。)

そして その罪を消し去ったのは、「雪」なのだ。皮肉にも「雪」という自然によって罪は消え去った。

けれど おばあさんの目の前に横たわったままの「やがてくる死」は、語られない。(さすがに子どもむけだもの)

昔話に登場する「神様」「仏様」「天の声」のような、絶対的に助けてくれる存在が描かれない。

 「罪人」としてではなく、「人」としてその終わりを迎えるおばあさん・・・おそらく優しく働き者であっただろうおばあさんなのに、どうして助ける結末ではないのか?旅人はどうなったのか?  普通描かれるだろう子供向けの部分はいっさいない。何もそれは語られない、

「もう足跡がみえません」市原悦子さんの柔らかくあたたかい最後の言葉がとても悲しい。人として生きる不条理がそこにみえる。 そしてそれでも人は生き、死んでいく。仏教的な世界観や哲学も感じさせる至高の作品。

 


 日本昔話は、本当に素晴らしい。素晴らしい点の一つに「日本語の美しさ」がある。方言とともにある 「正しく美しい日本語」の会話・ナレーション、今の子供番組には見られない良さがある。あまりにもったいないので、時代劇専門チャンネルだけでなく、地上波でも再放送すべきなのに・・・。

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4 Comments

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Unknown (lily)
2016-02-14 19:31:10
私も、子どもの頃、夜七時から入る、まんが日本昔ばなし・・・
楽しみにしていました。
市川悦子さんの素朴で独特なナレーションとお話がなんとも合っていて、
心が落ち着きましたね。昔話は、善と悪がはっきりとしていますね。
現代のお話は、悪人にも何か理由があったから・・・なんてことをにおわすことがあるけれど。
昔話はシンプルですよね。それゆえに子ども心にずっしりと感じ入るのでしょうか。

実はこの101話を一冊にした本が家にあるんです。
「あとかくしの雪」入ってはいませんでした。
今日、少し読んで寝ることにします。
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Unknown (momo)
2016-02-14 20:01:42
昔話はいいですね~。姪のためにレンタルして見始めたのですが、自分がハマりました。
心が落ち着きますよね。言葉遣いも丁寧で、とても美しい日本語。あとかくしの雪が本にないのは、残念ですぅ。
(>_<) 原点は昔話というより、地方の仏話にあったようですが、それよりも美しい話になっていると思いますね。
なかなかこれだけシンプルで訴える作品ってないと思うので、紹介しました。
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自分ランキング上位 (ポン)
2018-04-11 02:17:53
今や41歳のおじさんですが、今でも時折、日本昔話を見ます。

そういう時は、だいぶ心が疲れてる時が多いですね。昔話はなんだか癒やされるんですよね。

あとかくしの雪は、他の作品と比べて、とてもセリフや音が少なくて、無音が多い。その無音が、実に良い空気感を醸し出しており、自分ランキングで、かなり上位の作品です。

派手さだけでない、こういう番組が今もあればいいなと思う今日この頃です。
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Re:自分ランキング上位 (497rmo2)
2018-04-11 11:04:32
嬉しいコメントありがとうございました。最初にこの作品について書いた時 誰も知らないだろうと思っていたのですが 現在でもこの記事が時々読まれているようです。やはりネットは広大な海ですね。
たくさんの方にこの作品を 特に大人になった方には本当にお薦めです。
私も こんないい年ですが(笑)アニメを見続けたい そんな心の余裕を持ち続けたいなと次の記事を更新しました。
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