新国立劇場で「魔笛」を観てきた、4階C席高齢者割引10,450円、午後2時開演、5時15分終演、4階席は満席だった
この日の座席は4階の前から2列目、舞台に向かって左寄りの席、舞台も日本語字幕も完全に見えるがオーケストラピットは見えない、いい席だと思った、久しぶりの新国立劇場だが例年のようにホワイエにはクリスマスツリーが飾ってあった
魔笛はオペラの中で一番好きな演目で、一番多く聴いているオペラである、そして、私が初めて聴いたオペラが1964年カールベーム指揮ベルリンフィル「魔笛」のCDであったのは本当に良かった、あの時「オペラってこんなに素晴らしい音楽なのか!」という驚きでオペラが一気に好きになった
スタッフ
【指 揮】トマーシュ・ネトピル(1975、チェコ)
【演 出】ウィリアム・ケントリッジ(1955、南ア)
【美 術】ウィリアム・ケントリッジ、ザビーネ・トイニッセン
【衣 裳】グレタ・ゴアリス
【照 明】ジェニファー・ティプトン
【プロジェクション】キャサリン・メイバーグ
【舞台監督】髙橋尚史
出演
【ザラストロ】マテウス・フランサ(ブラジル、初登場)
【タミーノ】パヴォル・ブレスリック(Pavol BRESLIK)
【パミーナ】九嶋香奈枝
【夜の女王】安井陽子
【パパゲーナ】種谷典子
【パパゲーノ】駒田敏章
【モノスタトス】升島唯博
【弁者・僧侶Ⅰ・武士II】清水宏樹
【僧侶Ⅱ・武士I】秋谷直之
【侍女I】今野沙知恵
【侍女II】宮澤彩子
【侍女III】石井 藍
【童子I】前川依子
【童子II】野田千恵子
【童子III】花房英里子
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
観劇した感想
- ウィリアム・ケントリッジ演出による新国立の魔笛は初めて観たが全体としては良かった
- ケントリッジはウィキペディアによれば、素描をコマ撮りにした「動くドローイング」と呼ばれる手描きアニメーション・フィルムで世界的に知られ、オペラの演出では、刺激的で視覚的驚きに満ちた新演出、と評価されたりしている、この日の演出も光により描かれた線や絵、舞台の枠組みののようなものが動態的に変化する刺激のある演出であり楽しめた、ただ、ドローイングは白と黒が基調で、カラフルさがなかった
- 出演者で特筆すべきと感じたのは、パミーナ役の九嶋香奈枝だ、もう既にかなりの実績のある歌手、パミーナはけっこう得意役としているのではないか、歌唱力もあったし、役柄にぴったちの容姿だったし、衣装もよかった、良い歌手だと思った
- 次に、ザラストロのマテウス・フランサが良かった、低音のバスの声がしっかりと出ていて容姿も貫禄があって役柄にピッタリの歌唱力と押し出しがあったと思う
- あと大変良かったと感じたのが合唱団だ、第1幕、第2幕のフィナーレなど、合唱団の役割が非常に大事なのがこのオペラだが、これが非常に良かったと感じた、それは歌唱力も当然あるが、舞台演出もうまく、さりげなく出てきて、その位置や合唱団が集まった形もよく、衣装と相まってよく目立ち非常に良かった
- 夜の女王の安井陽子もその歌唱力を見せつけてくれた、第1幕、2幕両方で高音の大変難しい歌があるがしっかりと声を出して歌いつくしたのはさすがである、魔笛を聴くときはいつもこの場面で聴き手の方も「果たして声が出るか」とハラハラし、完璧に歌い終わるとホッとするのである
- 指揮者のトマーシュ・ネトピルと東京フィルの演奏だが、合格点だと思った、特によかったのがトランペットだ、このトランペットというどちらかという脇役がモーツアルトのオペラやベートーヴェンの交響曲では非常に大事な役割をする場面があり魔笛もその一つだ、特に序曲やフィナーレーではスピードについて行けず、トランペットが鳴りきらずに聞こえなくなってしまうこともあるが、この日はよく鳴り響いて大変リズムが良く、パンチが効いてよかった
- トランペットに加えてよかったのがフルートである、これもこのオペラでは重要な枠割りを果たすが、しっかりと吹けていて素晴らしかった
- タミーノ役のパヴォル・ブレスリックだが、歌唱力は良いのだが、あまりこの役に向いていないと思った、見た感じが怖そうで、服装も役柄に合っていないと思った、このオペラはメルヘンチックなので子供の絵本に出てくるような優しい王子のイメージに合う俳優や衣装が良いのではないか
- パパゲーノの駒田敏章もどうかなと思った、それは彼の歌や演技が悪いというのではなく衣装である、パパゲーノは幼稚園児が見たら喜ぶような羽のついた緑色の衣装で、森で鳥を騙して捕獲する少しふざけた感じの衣装で出てきてほしい
- 安井陽子の夜の女王の衣装にも違和感があった、3人の侍女と同じ白を基調としたレスであったが、女王だけは黒にしてほしかった、また女王の独唱の時はもっと目立つような演出にしてほしかった、例えばもっと高い位置で歌うとか
- トマーシュ・ネトピル指揮の東京フィルの演奏だが、第1幕、2幕のフィナーレの演奏がペースが速すぎて自分の好みではなかった、このスピード感に関する楽譜の解釈は今日の演奏が広く行き渡っているが、私はそれが不満である、このオペラのフィナーレは重厚感を出すべきで、そのためにはカールベーム版CDのように、もう少しゆっくりしたペースでどっしりした演奏をしてもらいたい
- この日の演奏では指揮者の指示だろうが、ところどころでピアノの演奏が入り、オリジナルの楽譜に追加した演奏が行われていたのに驚いた、聴きなれていないのでかなりの違和感があった
- 新国立劇場は相変わらず開演前やカーテンコール時の写真撮影を禁止しているが時代遅れでしょう、OKにしてもらいたい
楽しめたオペラでした
「モーツァルトよ、こんなに素晴らしい、楽しい作品を残してくれて有難う」と叫びたくなった
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