今日は何を見ようかと探していたらこの映画(2022年、米)に興味がひかれた。今週、ちょうど日産とルノーの出資比率見直しのニュースが出ていたので、彼の所業を振り返るのも悪く無いと思った。
ストーリーは彼がルノーに入ってから日産に転出して日産を再生して、ルノーのCEOを兼務するほど出世したが、会社を私物化、役員報酬金額の過小記載などの容疑で逮捕され、脱出するまでの話を関係者へのインタビューで綴っている。彼の住んでいたマンションのお手伝いさんの女性へのインタビューなどで「彼は節約するし、酒で酔うこともないし、紳士的だし好感を持っていた」、「脱出前にワインを2本プレゼントしてくれて、二人の写真を撮ってくれた」などと述べているのが興味深い。裁判で結果が出たわけではないので、容疑が事実がどうか私にはわからない。ただ、報酬の過小記載についてはケリー被告が有罪となったので法令違反はあったのだろうけど、この過小記載などは投資家の判断を誤らせるような重要事項とは思えないけど。
いくつかの感想を述べることにしよう
- ゴーン氏が批判していたように日本の検察当局の捜査の進め方はやはり人権無視ではないか。検察の主張を認めれば保釈され、否認すれば長期間拘留される。諸外国の制度と比較してどうなのかメディアによる検証はあまりみたことがない。つい最近も東京オリンピックの贈賄容疑で逮捕された企業トップが長期間拘留後、検察の主張を認めて保釈された。
- 検察が起訴した案件の99%が有罪になり、起訴する案件の比率は37%だと説明が出ていた。これでは事実上、検察官が裁判官をしているのと同じではないか。勝訴するか微妙な案件は多くあるはずた。有罪率が下がると検察のメンツに関わる、とでも思っていとすれば検察の怠慢ではないか。
- 検察の人質司法がおかしいとゴーン氏に主張された日本政府はただ「問題ない、日本の法令に従っている」とだけしか説明していないと思うが、こんな説明では国際社会を納得させられない。海外からの批判に事実を示して理路整然と反論する力が日本は昔から弱いし、隣国は極めてそれが強いのでいつも言い負かされる。
- 人質司法等の問題点についてメディアが批判を十分していないのではないか、検察批判すると検察から情報をもらえず記事が書けないからなのか。ジャーナリストを名乗るなら当局が一部のメディアの取材に応じない点を指摘すべきだし、あるいは記者への情報の漏洩は法令違反ではないか、と問題提起するなど意地をみせてほしい。
- ゴーンの独断ぶり、公私混同ぶりに堪忍袋の緒が切れたとしても国家権力を使って排除しようとした日産の対応はガバナンス不全といわれても仕方ないであろう。逮捕前に取締役会で解任してほしかった。
- ゴーンは日本人を良く研究していた、そして、それを利用した。本来はゴーンが隠れていた大きな楽器入れのX線検査をすべきところプライベートジェットのエグゼクティブ顧客から何か言われると、おかしいなと思っていても認めてしまう。どんな顧客、あるいはどんな社内の偉い人に対してもルールはルールだから守ることを要求する、これは大変なことであろうが緩んでいるのが今の日本だ、それをゴーンは見抜いていた。
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