自宅で「シーモアさんと、大人のための人生入門(原題:SEYMOUR: AN INTRODUCTION)」(2016年、米、イーサン・ホーク監督)を観た。監督のイーサン・ホークはビフォアシリーズがあるが、好きな俳優だ。彼と相手役の女性ジュリー・デルビーが出演した「ビフォア・サンライズ」はウィーンが舞台の良い映画だ。
そのイーサン・ホークが俳優としても映画監督としての一応の成功をし、人生の折り返し地点でスランプになったとき、87才のピアノ教師のシーモアさんに巡り会い、彼の話を聞いてその人に惚れて、彼のドキュメンタリー映画を作った。
シーモアさんはピアノ演奏家であったが50才になったときに引退し、以後の人生はピアノ教師として若い後進の指導に当たった。映画はそのシーモアさんが生徒を教えるシーンや教え子がピアニストになり成功した後シーモアさんに会ってインタビューするところなどを映す。その中でシーモアさんの考えなどが話されて、どういう人なのかがわかるようになる。
ピアノを弾けない人に取ってはハッキリ言ってちょっと退屈で、眠くなる。しかし、家で観るときのメリットとして眠くなりそうになると少し観るのを中断してお茶を飲んだり、ストレッチしたり、動いたりできることがある。そして最後まで全部見終わった。
邦題の「人生入門」というのも大げさなタイトルだと思うが、人生訓とでも言うものはいくつかあったので少し書いておこう
- これはイーサン・ホークがシーモアさんに言ったのだが「金や物で幸せになった人はいない」と言っているところだ、「成功した作品はろくでもないものが多い」とも言っている、芸術的に高度なものは商業的には成功しない点にシーモアさんも同意している。ピアニストとして立派な技術があっても報酬は必ずしもそれに見合わないのが現実である、と言う話にもシーモアさんは同意している。
- 偉大なプロピアニストでも公演の前は緊張する、演奏家にはつきものだ、評論家から高評価を得ても助けにはならない、あるときから恐怖から逃げずにそれに向き合おうと決意した、そうしないと人生のいろんな局面に対処できないとシーモアさんは言っている
- 音楽で出世を目指すことは健全なことと思えない、成功した人は皆、苦しんでいる、成功した人は性格が悪い人が多い、芸術的なものと大衆が望む物が背反するから芸術家はノイローゼになりモンスターになる。これは以前も触れたが(こちらを参照)ピアニストの青柳いずみ子さんもその著作の中で指摘しているし、ミヒャエル・ハネケ監督、イザベル・ユペール主演の映画「ピアニスト」でも描かれている。
- シーモアさんが50才で引退したのは、演奏家としての商業的側面と心労、創作がしたかったからの3つの理由
一回観ただけでは人生の教訓を学ぶのは無理で、AmazonPrimeで見て、何回か必要な部分を振り返る努力が必要だろう。
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