(承前)
この展覧会を観て、感心したことなどを述べてみよう。
- 展示室に入ると、いきなり「汝、経験に依りて過つ」というインスタレーションに度肝を抜かれる。これはその部屋に入ると部屋全体が右に何度か傾いているのだ。直ぐに立っているのがおぼつかなくなり、気分が悪くなる。山口氏の説明によると立っている地面の傾斜と重力のかかる方向が異なることによるバランス感覚の喪失と言うことらしいが、結構強烈に気持ち悪くなった。トリックアート美術館などに同じようなものがあった気がするが、ここまで気分が悪くなることは無かった。
- 作品を順に見ていって、これは面白いと感じたのは、趣都日本橋編「月刊モーニング・ツー」、という作品だ。これは漫画であり、東京の日本橋の上を通る首都高速が景観を損ねるとして地下を通すことが決定されたことについて、大人と子供が話をするものである。その話がうんちくに富んでいて面白い。
- 首都高を撤去した後の今の日本橋は平坦なので橋があるのが分からないとか、太鼓橋でないので舟が通りにくいとか、壊さないで首都高の上に楼門をつけたら良いとか、今でもいずれか一方から見ると実は空が大きく見えるとか、今の首都高の上にそれを跨ぐ大きな太鼓橋を架けてはどうか、など、面白い。
- 大きなキャンバスに精緻な筆致で、過去と昔がごっちゃになったような地図を描いた東京圏1・0・4輪之段という作品には驚いた。山口氏がカバーしている芸術の範囲の広さを感じた。
- セザンヌや雪舟の絵の描き方などが氏のハンドライティングで詳しく解説してある、が、結構専門的で難しかった。しかし、画家がいかに多くのことを考えて他の画家の絵を見て理解しているかよくわかった。
(その3)に続く
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