METライブビューイングで「ドン・ジョバンニ」を観た。3,700円、今シーズンもあと2作を残すのみとなったが、それがドン・ジョバンニと魔笛というモーツアルトの3大オペラの中の2つとあっては是非見に行かなければいけない。土曜だったので座席は3分の1くらい埋まっていたか。やはりシニアと女性が多かった。今年5月20日に上演されたものが7月に日本で見れるのだからありがたい。
指揮:ナタリー・シュトゥッツマン(仏、58)
演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ(64、ベルギー)
出演:
ドンジョバンニ:ペーター・マッテイ(58、スエーデン)
レポレッロ:アダム・プラヘトカ
ドンナ・アンナ:フェデリカ・ロンバルディ(34、伊)
ドンナ・エルヴィーラ:アナ・マリア・マルティネス(52、プエルトリコ)
ツエリーナ:イン・ファン(中国)
ドン・オッターヴィオ:ベン・ブリス
指揮者のナタリー・シュトゥッツマンは元歌手で、両親もオペラ歌手だったが、本人は指揮者になった理由として歌手は1人で歌うが、指揮者は50人の歌手やオーケストラなどを統率するのが魅力と答えていた。本作がMETデビューで次作の魔笛でも指揮をとる。彼女の指揮する本作のオーケストラはいい演奏をしていた。
タイトル・ロールのペーター・マッテイは初めて聴く歌手だが、背が高く、モーツアルト歌いらしい。見た印象が誰かに似ているなと思い、しばらくして、映画「ショーシャンクの空」のティム・ロビンスだと思いついた。見た感じでは悪役や好色というイメージではないな、と感じたがどうであろうか。
今回、一番いいなと思ったのはドンナ・アンナを歌ったフェデリカ・ロンバルディだ。初めて見る歌手だが美人で歌唱力もあり、セクシーだ。MET初出演だそうだが、今後、どんどん活躍するのではないか。こんな三拍子そろった歌手はやらせてみたい役がいっぱいある。
ツエリーナをやったイン・ファンは昨年テレビで放映していたパリ・ガルニエ宮での「フィガロの結婚」にスザンナ役で出ていたのを見て、いい演技しているなと感心したが、今回のツエリーナ役でも実にうまくこなしていた。
そのほかの歌手も皆いい演技と歌を披露してくれたと感じた。歌唱力は当然として、役柄とそれぞれの歌手のイメージがピッタリ一致しているところが素晴らしい。
さて、このオペラの演出・照明であるが、解説では舞台がほとんどの時間、暗くなっていることが特徴だと言っていた。確かにそうだ。ドン・ジョバンニといえばなんと言ってもテレビでたまに放送されるフルトヴェングラー指揮の1954年のザルツブルク音楽祭での演奏が好きだ。自分の中ではこの演奏がドン・ジョバンニの基準となって、これと比較してどうか、という視点でしか見れなくなっている。この1954年の演出は非常にオーソドックなもので気に入っているが、それと今回の演出を比べると、最後に騎士長の石像(亡霊)が出てきてドン・ジョバンニを地獄に落とすところが物足りないような気がした。
上映時間:3時間43分(休憩1回)
MET上演日:2023年5月20日
言語:イタリア語