テレビで歌舞伎を放送していたので録画して観た。
今回は最近の公演ではなく、だいぶ前の公演だ。1980年の勧進帳と1987年の沼津だ。勧進帳はあまりにも有名だが、沼津は初めて観る演目である。
勧進帳で弁慶を務める二代目尾上松緑(1913~1898)は六代目尾上菊五郎のもとで修行をして芸を磨いた。1972年には人間国宝に認定される。1987年に文化勲章を受章。当代四代目松緑(1975~)は孫で、2022年(当時26才)の襲名披露公演で演じたのが勧進帳の弁慶だった。その時稽古してくれたのが叔父の12代團十郎だった。その後、富樫や義経も演じた。
勧進帳と沼津の両方に出演している十七代目中村勘三郎(1909~1988)は1975年人間国宝に、1980年に文化勲章を受章、ゲストの波野久里子は勘三郎の娘で、父の勘三郎の出演した歌舞伎の中で一番好きなのが沼津だという。
勧進帳は筋も分かっているので何の準備もなく見ても何とか理解できるが、話し言葉が昔の話し方なので、台詞を聞いて内容を理解するのが難しい。日頃イヤホンガイドがいかに便利な存在か分かる。松緑の弁慶、勘三郎の富樫はそれぞれしっかり演じていたと思うが、他の役者の演じ方とどう違うのか、というところまでは自分の知識ではまだ見分けがつかなかった。何かこの役者の勧進帳、というような自分で何遍も観た基準となる勧進帳を持っていないと批判はできないであろう。
沼津は初めてなので、少し予習をしてから観たが、こちらの方は世話物で台詞も日常会話と同じなので何を話しているかは理解できた。中村勘三郎の演技だが、平作が重兵の荷物を天秤棒を使って運ぶ場面で、舞台から客席にぐるっと一周するのだが、そのよろよろした歩き方が実にうまいものだった。
「勧進帳」(1980年、昭和55年)
出演
弁慶:二代目尾上松緑
富樫:十七代目中村勘三郎
義経:尾上梅幸
インタビュー出演:四代目尾上松緑
「伊賀越道中双六~沼津」(1987年、昭和62年、四国こんぴら歌舞伎)
出演
平作:十七代目中村勘三郎
呉服屋十兵衛:二代目松本白鸚(当時九代目松本幸四郎)
お米:澤村藤十郎
場所は香川県琴平町の金丸座、1835年建立、日本で一番古い芝居小屋。
インタビュー出演:波乃久里子(十七代目中村勘三郎の娘)