詩がおもしろい・・二行詩

2017-08-12 08:49:31 | 
多摩三郎こと高木秋尾氏は自らを多摩川辺りに出没する蝦蟇(がま)とも鵺(ぬえ)とも自称する。詩人は三つの個人誌を発行している。自由律俳句誌「水馬」(みずすまし)二行詩誌「双」
詩誌「鵺」、一誌に纏めたらという声があっても、「今のところそれぞれの呼吸でやっているので、このペースは保ちたい。これでいいだろうと思ってやっている。」というのが高木氏のアイデンティティーであろうと思う。この考え方にぼくは勇気づけられている。
「双」のなかにおもしい詩があったので紹介します。
    
     パッション
   火と水を両掌に持っている
   燃え上る前に消し止める        岡田恵美子氏

     勤勉
   やがて人は勤勉に更地に
   人の体温積んでゆくだろう       加藤知子氏 「体温」より

  破行の考察

     葉
   すべて散った
   諦らめの糸引く落葉

     火
   燻り残るもの
   病葉と落葉の葉罰争い燃えて

     歩
   足ぶみの含み笑い
   連続すると浮力が萎える

     屁
   驚きと遜(へりくだ)りの隠語
   最後っ屁って 気化する涙だよ

     放
   天敵から解き放たれて 吐息
   波に帆たてて 荒 えっさ 放     高木秋尾氏 

高木氏の「破行の考察」は、は・ひ・ふ・へ・ほから成っている。言葉遊びだがそれだけではない。一行を破壊する、破裂させるという意図がある。「破行」とは破壊行為の略とみる。そののちに引き合う言葉の力によって新しい意味の関係(おかしみ、うら等)を体験することができる。<最後っ屁って 気化する涙だよ>なんて笑っちゃうけど新鮮だなあ!

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詩・・・「幻を書く」

2017-08-06 01:59:47 | 
    幻を書く

幻を見るのも聴くのも
それはおれの
気分しだい なのかもしれない
生死についても
気分しだいなのであろう
なにも仰々しく
書くこともないのである
       
モノに寄せてこころを書く
しちめんどうくさいことに凝ってしまったものだ
あげくのはてが
幻に寄せてこころを書く
酔狂なことに慣れてしまったものだ

滝壺に沈んだ水は
そんなおれをあざ笑うかのように

   反転して浮き上がると
   なにごともなかったかのように
   ふたたび海に向かって
   悠々と流れていく
   したたかな水の声は聞こえたろうか  *

流れているのだ
書くことなんかやめて
こころの声を聞いてみたい
                          
              * 埋田昇二氏の詩集「気まぐれな神」所収「滝」より
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匂いのある詩

2017-07-31 09:34:29 | 
何もしないでいる月曜日、と決めたが、好きな詩を紹介します。短いですがはじめて読み終えた時からずっと今日まで匂いの消えない詩です。気配が薄れない詩です。作者は萩原里美氏、彼女の個人詩誌「果樹園」11号(2014.08)から

        柿明かり

    夫人は夫の帰りを待っていた
    帰りが遅い理由を知っていた

    柿の木がたくさんある旧家
    まわりの家々の明かりが消えると
    熟した柿が灯って
    夫の帰り途を照らしはじめる


ちょっとミステリアスなこの詩の「熟した柿」の明るさはぼくを想像の世界に誘ってくれます。次の文はついこの間ぼくが書いた中から

   これほど作品のまわりを散策させてくれて、飽かずに覗かせてくれる詩人は
   今少なかろう。これほど作品の味を深くながく楽しませてくれる詩人は今少
   なかろう。作品には手垢をつけない。姿も見せない。

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詩・・・Nail

2017-05-01 04:47:36 | 
        Nail

   膝の上で
   虹が
   娘さんの爪を噛んでいる

   長い睫毛の動きに合わせて
   小さな虹が
   いくつも
   消えたり出たり
   いそがしい

   こんどは
   横でぐずっていた
   娘さんのむすめさんを
   膝にのせた

   おやまあ
   さらに小さな虹が現れた
   爪を噛んだ
   派手な虹と可愛らしい虹が
   からみあっている

   娘さんの背中の車窓に
   さわやかな青空と
   きれいな虹が映っている

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詩・・・・・飛んでけ

2017-04-29 01:14:03 | 
          飛んでけ

      ぼくのものも
      ぼくのものであるようでないものも
      遠くまで飛んでけ
      見えなくなって
      消えてなくなれ

      やり残していることも
      整理できないモヤモヤも
      ふわふわと飛んでけ
      見えなくなって
      消えてなくなれ

      決められた時間も
      神様のシナリオも
      風に吹かれて飛んでけ
      天まで飛んでって
      消えてなくなれ

      返すものは返して      
      ぼくはといえば
      
      シナリオどおり
      もしやもし屋の
      タラレバと夢ばかり食って
      方向音痴になったあたりで
      地獄の方へ飛ばされるだろうさ
      
            
      
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