地球

2017-06-12 02:07:33 | 独り言
人は戦わずにはいられないのだろうか。人は憎しみ合わずにはいられないのか。いやそんなことはない、と言う人がいるだろうか。いたるところで起きている破壊と殺人、これに国家が加担していないと言えるだろうか。もう犠牲者と加害者の区別すらない。一方でブクブク太っている輩がいるのではないか。ぼくは以前「星空の下のマーケット」という詩を書いた。死のバイヤーがいるのではないかと・・・・。
グローバリズムが崩壊して他国ばかりではなく自国も今きな臭いのではないか。
この永瀬清子さんの詩は僕が数年前静岡県詩人会の地区研究会を担当している時にテキストに載せさせて頂いた。詩人の強い意思が籠められています。
     
  地球そのものを賭けて
  自分だけ生きのびようと云う不適な妄想。

きっといるんだと思う、自分だけ生きのびるという妄想を持った人間が・・・。
  
  眼にみえぬ雪崩の連鎖性は

まさに今、私たちの地球に起こっていることではないのか。

  時くれば地球はやがて
  この軌道のはて
  さびしい中空に
  ガラン洞の貝殻になっていいのか。
  その時妄想の墓場と立て札を立てるのか。

人ひとりの一生は微々たるモノに過ぎない。地球の生命は宇宙の永遠の財産だ。次の世代に美しい地球を残さなければならない。


  滅亡軌道     永瀬清子


地球は一個の被害者となった。
今や地球はみるみるやつれた可哀想なものとなった。
二大陣営を意味ありと思ったのも昨日の夢
このままで一瞬に我と我が手で縊れるか
進歩と思っていたすべては皆たわごとか――
翳をもって美しかった肉体のくびれはずんべら棒に
驚く人さえぼろ屑に
求める愛の鼓動も雄々しいまことの目当も
すべては賭け代になり下る。
地球そのものを賭けて
自分だけ生きのびようと云う不適な妄想。

花粉のように微かな灰が
あの時以来かるく宙空にただよっている。
毒のはばたきはしずかにしずかに成層圏に幕を引く。
沖の方ではパープルグリーンのまんなかで
声のないプランクトンのもだえ
それが次第にこちらへ流れ寄る。

眼にみえぬ雪崩の連鎖性は
静かに確実に――
我らの歎きはプランクトンのそれのように
人に聴かれぬものであっていいのか。
渦にこきまざり叫ぶ声も通じずに
時くれば地球はやがて
この軌道のはて
さびしい中空に
ガラン洞の貝殻になっていいのか。
その時妄想の墓場と立て札を立てるのか。
                        思潮社現代詩文庫「永瀬清子詩集」より
コメント (2)
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