詩  <ヒ>

2015-11-20 08:40:40 | 
   <ヒ>

<ヒ>は
見てのとおり
匕首である
敵の喉元へこいつを突きつけると
ひぃひぃ命乞いをするだろう
その間にもぼくのスキをうかがうはずだが
そんなことは百も承知だ
ぼくは懐深くしのばせた<ヒ>の感触を確かめる

<ヒ>は                                    
薄気味悪い悪魔の笑いである
悪魔は神々の使いでもある
しばしば人間を狂わせるような
いたずらを仕掛ける
それが図にはまると
満足げに笑うのだ
ヒ、ヒ、ヒ、ヒ と                         
この冷たい発語をぼくは何度となく聞いている

<ヒ>はヒステリーであり非道であり否定であり
<ヒ>とは
「人為的に」ねじられた「人」であり
或いは
幼児の形でもある

さらに                                 
<ヒ>は
「日」から蹴落とされた屍である
<ヒ>は
その野ざらしが
ぼくの住む町へ放ちつづける
甲高い悲鳴である

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