さわやかな気候になり、初夏に近づくこの季節は、夏日(最高気温25度以上)を観測する日も。熱中症の懸念も徐々に増してくるだけに、吸収のよい飲み物を利用するなどして水分補給を心がけたい。(柳原一哉)
高齢者の割合高く
高温の屋外に長くとどまっていたりすると、発汗などによって体内の水分や塩分が失われ体温が上昇。その結果、めまいや失神を起こしたりするのが熱中症だ。消防庁のまとめによれば、昨年7~9月の熱中症による搬送者数は全国で4万3864人に上った。
傷病程度別でみると、軽症が64・2%だったが、全搬送者に占める高齢者(65歳以上)の割合が高く、全体の半分近くの45・2%に上った。
高齢者は温度に対する感受性が低く暑さを自覚できにくくなっていることが原因で、このため屋内にいても熱中症になることがあると、同庁では説明している。
具体的な対策として何ができるのか。横浜国立大学教育人間科学部の田中英登教授(環境生理学)は「室内に温度計を置いてチェックしたり、周囲の家族が積極的に『水分補給を』と教えるといい」と勧める。
熱中症対策になる飲料として厚生労働省は、100ミリリットル当たり40~80ミリグラムのナトリウムを含む成分のものを推奨。田中教授は「ナトリウムに加えて糖質が入っていると吸収率が上がる。そうした成分のスポーツドリンク類は、汗をかくシーンでは手頃だ」と話す。
吸収性高い飲み物
近年は、高い吸収性能などの特徴を持たせた飲料が市場に出回っている。
調査会社の富士経済(東京)によると、そうした機能性清涼飲料の市場規模は1512億円(平成23年)で、ミネラルウオーター類(約3千億円)の半分程度で推移している。
需要は、猛暑かどうかその年によって左右されるが、新商品投入によって市場は活性化しているという。
最近では、昭和55年以来、看板商品のポカリスエットで知られる大塚製薬が「ポカリスエット イオンウォーター」の販売を始めた。
従来製品よりも甘さを抑え、すっきりした後味。肥満対策のためカロリーが100ミリリットル当たり11キロカロリーと従来製品の半分以下に抑制されており日常的に飲めるようになっている。
体液に近い組成の電解質(イオン)溶液で、水分補給効果が高い。同社の比較試験では、運動によって体重の2%分の脱水を起こした後、水だけを飲むグループは120分たっても血液中の液体の「血漿(けっしょう)」の量が元に戻らなかったが、ポカリを飲むグループは30~60分で血漿量が回復したことが確かめられた。
同社ニュートラシューティカルズ事業部の浅見慎一プロダクトマーケティングマネージャーは「いつでもどこでもごくごく飲めるよう仕上げており、水分とイオンをスムーズに補給できる」と話している。