出光美術館「美の祝典 第三部 江戸絵画の華やぎ」12016.6.17~7.18
第一部、二部に続き、三部も行ってきました。
特に心に残ったもののメモです。
「江戸名所図屏風」江戸時代
見れば見るほど楽しい。身近な場所なので、今と変わらない名所や地形に親近感。
右隻に、向島、上野寛永寺、不忍池、湯島天神、神田明神、吉原、日本橋。続いて左隻に京橋、新橋、銀座、愛宕山、増上寺、高輪、芝浦まで。
江戸がかつて「水の都」と言われていたことを再認識。
にぎわう 日本橋は、通り過ぎるだけでなく、話をしたり物を売ったり。船が行きかうバンコクを思い出す。
絵としても質が高く、なによりこの一双にかけた作業量ときたら、気を失いそう。
橋や寺や江戸城など建物は、パースのようにきっちり。そして人物が細かい!膨大な数の人がいるのに、その一人ひとりを、役割、気持ち、目線までちゃんと描き分けている。
着物も、みんな違う柄。それがまた手の込んだ柄で。
百万人の過密都市・江戸ですが、さりげなく樹木も配してある。気づくと、最後の増上寺には紅葉が色づいている。
最初の上野浅草のあたりに戻ると、桜が咲いている。屏風の中で季節が移っていたのでした。
解説では、不忍池にペリカンが描かれていると。(ペリカンが飛来したのは事実のようです。)
それより気になったのは、向島の岸辺に、ワニがいる!?しかもくすぐられている!?
これはなんなのか、どなたか教えてほしいです。(仮解答の追記はこちら)
さらにいろんな楽しいツボが隠れていそうな屏風でした。
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南蛮屏風 桃山時代 も、面白い。
1591年に京でポルトガルのパレードがあったらしいけれど、いつどことは特定されていないと。船員や荷物を運ぶのは、おそらく植民地からのアフリカ系か、インド系のひとだろうか。店には靴や帽子が売られていますが、日本人でも買う人はいたのかな?。白波がリアル。貢物なのか豹のような動物も見える。司祭が出迎えていますが、わかる人が見れば司祭の名前も特定できるのでしょうか。
美人画も、素晴らしいものが並んでいるので、見比べてしまいます。
葛飾北斎「春秋二美人図」春と秋の双幅。
春は、山にうっすら桜。上へあがっていく感じ。青い牡丹の着物。秋は、対照的に、内へはいっていく感じ。虫かごに凝集されていくような。計算された感じが、北斎っておもしろい。
でも色気となると、やはり歌麿、おとなの色気。喜多川歌麿「更衣美人図」
暑い外から帰ってきて、帯を解く解放感の中のなまめかしさ。
歌川豊国「真崎稲荷参詣図」
隅田川、石浜神社、遠景に筑波山。二人で生み出す、ひゅるりと流れるような曲線。しどけない足さばきも、しゃべっている表情も、とても自然。今現在と変わらない女性の姿のよう。
鳥文斎栄之「舟遊図」は、柳橋、隅田川。芸妓と舟の男性たち。川と舟。月の夜空。三つの次元が層をなしている。
英一蝶「四季日待図屏風」(1698-1709)お気楽な感じがよいです。影絵のような部分がツボ。
図録にも画集にも出ていませんでしたが、尾形光琳の蒔絵硯箱も、箱内部の波の表現など、見とれました。
野々村仁清の、色絵うずら香合、色絵鶏香合は、どちらも小ぶりで、かわいい。石川県立美術館のキジも素晴らしかったですが、見返り度では、小さくてもこのウズラもキジに負けていません。
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最後になってしまいましたが、この展覧会のメインは「伴大納言絵詞」。
三部に分かれての展示で全部見るには三回来なくてはいけませんが、個人的には、少しずつじっくり見られてよかったかもしれない。
貞観8年(866年)の応天門放火事件。謀略を用いて出世を図り、最後は欲に身を滅ぼした伴親子。
巷の物見高い人々の表情が、とても豊か。
動きも、オーバーアクション気味で面白い。
「うちの子に何すんのよ」くらいな子供がらみの出来事で、大事件に展開してくところが面白い。貴族のお屋敷の内側と、それとは正反対の下世話な人波と土埃りの巷。対照的な双方の場面が交互に移り変わる。野次馬根性が頭をもたげてくる。
今回は、三部に分かれているのでお得感はないかもしれないけれど、まとまった時間がない私には、これくらいの30点か50点までの展覧会もまたありがたいです。休憩スペースで、皇居を眺めながらほうじ茶でひと息ついて。
楽しい時間でした。