「シュレーディンガーの猫」の概要:
猫がいる箱の中には、放射線同位元素、放射線検出器、検出されたとき毒ガス入りの瓶を割る装置などがあります。
放射線同位元素の状態は、”放射線放射前”を表す波動関数と”放射線放射後”を表す波動関数との重ね合わせになります。
この波動関数の重ね合わせ状態は放射線検知器、毒ガス入り瓶の破壊装置、猫の生死の状態もそれぞれの波動関数の重ね合わせになるというのが物理学者の考えです。
詳細は次の参考書をご覧ください:
並木美喜雄『量子力学入門ー現代科学のミステリー』、岩波新書210 (1995)
ここで、前述の検出器に波動関数を適用できるのか考えてみましょう。
波動関数は、粒子的性質と波動的性質を相補的にもつ素粒子、原子、分子などに対して適用できる概念です。
これらの微粒子は、干渉縞や回折を起こすので波動的性質を持ちます。
一方、検出器の場合はどうでしょうか?
この装置を床に落とすと床に傷がつくので粒子的性質を持ちます。
しかし、干渉縞や回折を起こさないので波動的性質を持ちません。
従って、検出器に対して波動関数を適用することは出来ないのです。
この検出器に対して波動関数を適用する「シュレーディンガーの猫」の議論に一体どのような意義があるのでしょうか。