観測過程には次のような3種類の異質な時間があります。
(1)観測器(測定器)で粒子が観測される前の”数学的時間”
このときの粒子の状態は波動関数で記述されます。
波動関数は複素数なので波動関数における時間は物理的なものではなく数学的なものです。
(2)粒子が観測器に入ったことで生じる物質現象における”流れる時間”
このときの物質現象を記述する時間は、いわゆる”流れる時間”です。
古典力学における時間と同じものです。
(3)観測器による観測結果の出力後における”静止した時間”
この観測器は観測結果を紙に印刷したものを出力するとします。
電子のスピンの観測の場合、紙には「上向きスピン」または「下向きスピン」という文字が印刷されます。
印刷用紙の状態を記述する時間は”流れる時間”ではなく”静止した時間”です。
この状態を物理法則で説明することは出来ません。
何故なら、印刷結果を印字する文字は物質的概念ではないからです。
なお、印刷用紙に印字された観測結果を読み取る時刻は観測者の都合によるものです。
観測結果に観測者の意思が影響することは不可能です。
従来の議論は、観測装置の出力結果が出た時点で観測結果を読み取ることを前提にしています。
観測問題における混乱は、すべてこの前提に起因するものです。
しかし、この前提には理論的根拠がなく、かつ、必然性もありません。
観測結果をいつ読み取るかは観測者の都合によるものだからです。
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