情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

「情報処理」「情報抽出」という用語の問題点

2019-04-29 09:20:30 | 情報と物質の科学哲学

情報処理や情報抽出という用語も不正確あるいは無神経に使われています。
脳科学には「脳の現象はすべて情報処理」という非科学的ドグマが蔓延しています。

「視覚細胞が物体のエッジ情報を抽出する」という説明の問題点は
(1)物体にエッジという物質的属性が客観的に備わっていること
(2)物体にエッジ情報というものが客観的に備わっていること
をそれぞれ含意していることです。

エッジは、非物質的概念であり、物体に固有な物質的属性ではなく、脳神経回路が定義して生成するものです。
エッジは、視覚細胞の特性や脳神経回路によって様々な形態が可能なのです。

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感覚ニューロンは常に情報を生成しているのか?

2019-04-28 08:50:57 | 情報と物質の科学哲学

ニューロンは、入力電圧和がしきい値を超えると神経パルスを出力します。
このような機能をもつ素子は「しきい値素子」と呼ばれます。
人工のしきい値素子は、画像処理/ノイズ低減処理などに利用されています。

感覚ニューロンは
(1)外部からの光/音/圧力などの物理量がしきい値を超えると
(2)その量に比例した神経パルス列を出力します。

これに似た機能をもつ人工センサーが警報装置に使われています。

ここで次の問題を考えます。
しきい値素子機能をもつ感覚ニューロンや人工センサーは、
常に情報を生成しているでしょうか?

(答え)
人工センサー出力の物理量を制御に利用する場合、物理法則のみで説明できます。
なので、人工センサーが情報を生成していると言う必然性はありません。
人工センサーの機能は、メディア変換と呼ばれるもので情報化ではありません。

同様に、「感覚ニューロンが情報を生成している」と言うのは不適切なのです。
感覚ニューロン出力は、視覚野などに入力されて初めて情報に変換されるのです。

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「環境から情報が入る」のどこが問題か?

2019-04-27 08:52:11 | 情報と物質の科学哲学

環境から動物体内に入るのは情報化される前の物質です。
物質が情報化されるのは、生体に取り込まれた後です。

認知科学/脳科学/生物学の本には
「環境から情報が入る」
という誤解を招く安易な説明が蔓延しています。
この表現は、あたかも情報が環境に備わる客観的な概念であることを意味します。
しかし、これは事実に反します。

環境から生体に入るのは物質的刺激であり、それが受容器に入ることにより初めて情報化されるのです。

認知科学の有名な古典も例外ではありません:
マー(乾敏郎、安藤広志共訳)
 『ビジョン-視覚の計算理論と脳表現-』、産業図書(1987)

一方、「環境から情報が入る」という見方に対してマトゥラーナとバレーラが批判しています:
マトゥラーナ、バレーラ(菅啓次郎訳)
 『知恵の樹-生きている世界はどのようにして生まれるのか-』、朝日出版社(1987)
 第6章[行動域] ”かみそりの刃の上で”、筑摩書房”ちくま学芸文庫”に再録

入力物質が動物の体内でどのように情報化されるのかは難問です。
それにも拘わらずこの認識をもつ研究者は皆無に近いのです。

情報を利用するシステム(脳/生物/心/ロボット/測定器/認識器)の理解には、「情報と物質との関わり」についての議論が不可欠です。
しかし、脳科学/認知科学/哲学/物理学/生物学にはこの視点による議論がありません。

動物の感覚器(受容器)は、検出器と似た機能を持ちます。
検出器はしきい値素子の一種です。
そのしきい値は、検出器の都合で決められる恣意的なものです。
それに基づいて検出器が生成する情報は、客観的なものではなく検出器が定義するものなのです。
詳細は、ブログ「検出器が定義し生成する情報」を是非ご覧ください。

「環境から情報が入る」という説明のもう一つの問題点は、情報がヒトに無関係に環境に備わる客観的な存在になることです。

この考え方として「アフォーダンス」というパラダイムがあります:
ギブソン(古橋敬ほか訳)
 『生態学的視覚論-ヒトの知覚世界を探る-』、サイエンス社(1997)

しかし、同じ入力でもヒトの違いによって多種多様な情報になります。
(1)ある図形がAさんにとっては文字として認識できるのに
(2)Bさんにとっては意味不明の図形としてしか認識できない
ということがあります。
虹の色の数が民族の違いによって3色から7色まであるという例もあります。

同じ色紙を見る場合でも左目と右目では微妙に色が違います。
嘘だと思ったら、是非実験してみて下さい。
この場合、どちらの色が正しいのかという問いは無意味です。
色の見え方は、真偽を問える対象ではないからです。

「環境から情報が入力される」という不正確な言い方が蔓延している理由は、次のようなものです。
(1)意識されるものは環境に関する情報(視覚/聴覚/触覚/嗅覚/味覚情報)なので、
 恰もそれらが環境から直接入ると錯覚してしまう
(2)情報が環境から入力されるという前提のもので議論するのが思考の節約になる
(3)善意の偽り pia fraus; クライン『19世紀の数学』、p.1、共立出版(1995)

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従来の「情報化」の問題点

2019-04-26 09:17:17 | 情報と物質の科学哲学

私たちは、物体を見て色/形/名前などを瞬時に把握します。
そのことに何の疑問も違和感もありません。
しかし、物体からの光が脳でどのように情報化され意識化されるのか
については未解決の問題が山積しています。

(1)光が視覚細胞に入って細胞から神経パルスが出力されたとき
(2)そこで「情報化」されたと言えるのでしょうか?
もしそうなら、人工センサーが光に反応しパルスを出力しても「情報化」と言える筈です。
しかし、この過程は「アナログ変換/メディア変換」であり「情報化」とは言いません。

脳に関する議論は、
(1)物質現象として見た脳に関する議論と
(2)心的現象として見た心に関する議論
とが複雑に絡み合うので極めて難解です。

「心とは何か」
「脳と心の関係」
「意識はどのようにして生じるのか」
に関しては心身問題(心脳問題)などのハードプロブレムがあります。
脳科学が進歩するほど脳や心の謎が増えるという皮肉な状況が続いています。

情報が脳の物質現象と心的現象とを仲」することは認められています。
そこで当ブログでは、情報と物質の関係に的を絞った情報物質問題に取り組んでいます。
「情報と物質」という枠組みで
(1)どのようなことが実現でき
(2)どのような限界があるのか
を明らかにすれば、心と脳の関係に関するヒントが得られるかも知れないからです。

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情報概念が扱いにくい理由

2019-04-25 16:41:35 | 情報と物質の科学哲学

情報概念が極めて扱いにくい理由を示します。
(1)情報は、物質やエネルギーのような客観的存在ではありません。
(2)情報は、クオリアや意識のような主観的存在でもありません。

情報は、客観的存在と主観的存在の中間に位置するものなのです。
情報は、主観的概念の機械バージョンであるとも言えます。
これを「情報のシステム依存性」と名付けます。

情報科学や認知科学の成功で多くの人が情報は客観的概念だと考えています。
これは、とんでもない間違いです。

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