先日オーダーしたフランコプリンツィバリのスーツが出来上がりました。今回選んだ生地は英国カイノック社製のもの、打ち込みされたヘヴィーオンスの素材はとても仕立て栄えする出来上がりです。

色はブルーグレイ、柄はヘリンボーンです。いかにも英国らしい、わたし好みの生地です。

特徴的な袖のカッティング。フランコプリンツィバリのスーツの最も目をひく部分ではないでしょうか。

袖は本切羽の一番奥が眠りボタン、ボタンは重ねになるいつも通りの仕様です。

裏地ですがフランコさんと相談し、オーソドックスなネイヴィーのものを選びました。

フランコプリンツィバリのスーツのゲージモデルを初めてフィッティングした時の驚きは今でも新鮮に覚えています。ボタンを留めなくても前身頃が開かない、両腕を上げても上着全体が持ち上がらない、ヘヴィーオンスの生地でも重さを感じない、結果として全くストレスを感じる事なく一日オフィスで着用していても上着が脱ぎたくならない。正に目からウロコが落ちる瞬間でした。スーツのフィッティングの概念が全く変わりました。それでいて英国的で構築的なカッティング。1着目のオーダーからほぼ完璧なフィッティングで出来上がってきたことも驚きでした。回を重ねおそらく20着くらいはオーダーしたと思いますが、4〜5回目からは補正はほとんどなくなり確認だけになりました。フランコさんの型紙によるカッティング、一般のファクトリーメイドより遥かに多い工程、そして来日の度に工場を訪れ縫製の指導をするという地道な努力がこのスーツの完成度をもたらしたのだと思います。

さて、新聞報道にもありましたのでご存知の方も多いと思いますが、三陽商会の事業見直しによりフランコプリンツィバリのブランドが2月7日でなくなることになりました。日本で17年、私がお付き合いさせていただいたのは約10年ですが非常に残念です。フランコさんのテーラリングと日本のものづくりが高度な形で結実した他に例を見ないスーツだと思います。

フランコさんのその人柄に惚れ込み、そしてその素晴らしいスーツを毎シーズンオーダーできたことは本当に幸せでした。伊勢丹及び三陽商会のスタッフの皆さんにも大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。
服飾業界に吹く風は決して順風なものではありませんが、真摯にものづくりを行い、顧客の真の悩みを解決することに心血をそそげば、必ず道は開けると思います。三陽商会さんに心よりエールを送ります。
さて、本日はいよいよ大晦日、素晴らしい新年をお迎えください。