徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

中国・青磁のきらめき ―水色から青、緑色の世界―

2007-07-01 | 陶磁器
中国・青磁のきらめき ―水色から青、緑色の世界―
2007年6月16日から7月29日
静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫美術館。一寸交通が不便だが、慣れてくるといい散歩道である。二子玉川の駅を降りて、玉川高島屋の脇を通り、砧線の廃線跡の遊歩道を歩く、暫く歩いて左にまがり住宅街を抜けて、旧玉川まで歩けば、もう静嘉堂文庫の入り口だ。静嘉堂文庫の敷地内の青く繁った樹木では鶯が啼いていた。二十分弱だ。

さて今回の展示は中国青磁。なかなか見ごたえのある展覧会でした。

越州窯(北宋)は2点。

耀州窯
耀州窯「青磁刻花花喰鳥文枕」北宋時代(11-12世紀);こちらは世界的に有名ということで自慢の一品。実は、中国陶磁 美を鑑るこころ(泉屋博古館分館)で拝見したときのほうが、感動しました。展示の方法が良かったのか、照明の具合か、良かったのか。

鈞窯
鈞窯「澱青釉紫紅班双耳香炉」元時代(14世紀);中央のガラスケージに展示されていた。一寸大き目の香炉、澱青釉に紫紅班がおしゃれ。
鈞窯「澱青釉鉢」金から元時代(12世紀から13世紀);F.プリンクリー旧蔵。大振りの鉢。
鈞窯「澱青釉紫紅班鉢」元時代(13世紀)
鈞窯「紫紅釉盤」;F.プリンクリー旧蔵。紫紅釉の発色が美しい。

南宋官窯
南宋官窯「青磁香炉」;中央のガラスケージに展示されていた。二重貫入が見事。修内司官窯の可能性が高いとのこと。

龍泉窯
重文 龍泉窯「青磁牡丹唐草文深鉢」(青磁浮牡丹文太鼓胴水指); 南宋から元時代(13世紀)鴻池家伝来;胴の浮牡丹文が見事。内面の青磁釉も美しい。青磁の蓋も付いている。
龍泉窯「青磁鯱耳花入」(千利休から伊達家伝来)(南宋時代 13世紀)
龍泉窯「青磁刻花”金巵玉露”花果文壺(水屋甕)」元から明時代初期(14から15世紀);彫りが深い。
龍泉窯「青磁刻花桃文盤」明時代初期(15世紀);60センチをこす大きな盤。周縁には16の花卉、見込みには桃の枝が透かし彫りされている。見事。
龍泉窯「青磁刻花花卉文鉢(水指)」明時代初期(15世紀);鉄鉢形のフォルムが美しい。唐草文の下に牡丹文を刻む。
龍泉窯「青磁刻花菱門香炉」明時代(15から16世紀)
龍泉窯「青磁筍形双耳瓶」明時代(15から16世紀);軽やかな色合いの筍形双耳瓶。
龍泉窯「青磁鉄班文香炉(飛青磁香炉)明時代(15から16世紀);不昧公夫人 せい(青に彡)楽院遺愛品

茶碗
同安窯系「青磁刻花文碗(珠光青磁茶碗)」南宋時代(12から13世紀)
龍泉窯「青磁線刻文碗(醤手(ひしおで)茶碗)銘「楓暮」明時代16世紀;銘は表千家九世了了斎
龍泉窯「青磁印花人物文茶碗(人形手茶碗)」明時代15から16世紀

景徳鎮窯
清になり完成された技術の青磁が並ぶ。微妙な色合い、美しいフォルム。
景徳鎮窯「青磁六角四耳瓶」雍正年間
景徳鎮窯「青磁管耳方瓶」雍正年間
景徳鎮窯「青磁罍形象耳瓶」雍正年間;明るい青緑色
景徳鎮窯「青磁罍形象耳瓶」雍正年間;淡青色(天藍釉)
景徳鎮窯「青磁盤」雍正年間
景徳鎮窯「青磁盤」雍正年間;南宋官窯の「天青」と呼ばれる釉色にせまる。貫入も見事。
景徳鎮窯「青磁柑子口瓶」乾隆年間:口造りが見事。
景徳鎮窯「青磁刻花牡丹唐草文扁壺」清時代(18世紀);透かし彫りが美しい。
景徳鎮窯「青磁刻花花卉文瓶」清時代(18世紀)

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戸栗美術館名品展Ⅰ―古伊万里・江戸時代の技と美―

2007-04-22 | 陶磁器
開館20周年記念
戸栗美術館名品展Ⅰ
―古伊万里・江戸時代の技と美―
2007年4月1日から6月24日

戸栗美術館、一年ぶりに再訪しました。今回は名品展というので、心はずみます。お勧め。

「古伊万里」の図録の番号が展示リストに掲載されているが、安価な「西暦2000年図録」の番号をつけた。

特に印象に残ったものは、
初期伊万里―素朴な味わい(17世紀前半から中葉)。
  • 2.染付 吹墨白兎文 皿 伊万里 17世紀前半;(画像・解説) 図録68
  • 8.染付 楼閣山水文 鉢 伊万里 17世紀前期;繊細な筆遣いの山水図、青みをおびた上釉。HP「主な収蔵品」に画像)
  • 9.鶴丸文 鉢 伊万里 17世紀前期;リズミカルな筆。トンド様式を生かした意匠。
  • 13.染付 樹下人物文 鉢 伊万里 17世紀前期; (画像・解説);凹凸の縞模様の入った側面。
  • 14.染付 菊亀甲文 皿 伊万里 17世紀前期;
  • 15.染付 矢羽根文 皿 伊万里 17世紀前期;図録70;この2点は、繰り返しのある幾何学的なモダンな意匠。
  • 18.染付 布袋文 皿 伊万里 17世紀中葉;図録73;微笑する民画風
  • 20.染付 人物文 捻花形皿 伊万里  17世紀中葉;捻花の口縁 その縁さえ繊細な筆遣い。
  • 23.染付 山水人物文 瓢形皿 伊万里  17世紀中葉;変形皿;図録89;
  • 25.銹釉染付 鶺鴒文 三足皿 伊万里
  • 27.青磁瑠璃銹釉 鷺龍文  三足皿 伊万里  17世紀中葉;図録86;青磁の色合い、瑠璃釉、銹釉の三色の色合い、そしてウ気彫りの文様、傑作。
  • 27.青磁瑠璃銹釉 鶴亀松竹梅文  三足皿 伊万里   17世紀中葉;(画像・解説)
  • 30.染付 波兎文 皿 伊万里  17世紀中葉;のびやかな絵。

    古九谷様式―色絵の誕生(17世紀中葉)
  • 31.色絵 梅花丸門 分銅形皿 伊万里(古九谷様式) 17世紀中葉
  • 32.色絵 牡丹花文 松皮菱形皿 伊万里(古九谷様式) 17世紀中葉;この2点は南京手古九谷。白地に唐風の文様が描かれる。
    青手は、二点。

    柿右衛門様式―海を渡った古伊万里―(17世紀後半から)
    繊細な風合いの陶磁器が並ぶ。優美。
  • 42.色絵 唐子秋草文 瓶 伊万里(柿右衛門様式)17世紀後半;図録110;
  • 43.色絵 葡萄文 虫籠形食籠  伊万里(柿右衛門様式)17世紀後半;円筒形の側面縦縞の造形と意匠は、いかにも欧州からの注文品でしょうか?
  • 44.色絵 梅竹栗鶉文 皿  伊万里(柿右衛門様式)17世紀後半から末;(画像・解説)(多分)
  • 45.色絵 人物舟遊文 皿  伊万里(柿右衛門様式)17世紀後半から末;周茂叙を描いたという。
    ここまでの四点は、真っ白な地肌が美しい。
  • 53.色絵 石畳蔓草文 皿 伊万里(柿右衛門様式)17世紀末から18世紀初;模様を施した口縁がすこし立ち上がった飾り皿。意匠はモダン。

    金欄手―豪華絢爛(17世紀末から18世紀初)
    本当に豪華絢爛。
  • 54.色絵 弓破魔皿 伊万里 17世紀末から18世紀初;変形皿;図録125
  • 55.色絵 壽字吉祥紋 鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;図録127;(画像・解説)
  • 56.色絵 龍鳳文 鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;
  • 57.色絵 琴高仙人文  鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;図録128;
  • 58.色絵 麒麟人物文 鉢  17世紀末から18世紀初;
  • 59.色絵 龍文 菊花形鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;
  • 60.色絵 五艘船文 鉢 伊万里 18世紀初;図録124;
  • 61.色絵 荒磯文 鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;図録125
  • 62.染付 荒磯文 鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初
  • 63.色絵 雲龍文 鉢 伊万里 17世紀末から18世紀初;図録129;

    17世紀後半の染付磁器ー清廉な白と藍
  • 65.染付 獅子花唐草文 長皿 伊万里 18世紀初;繊細な花唐草文の中に獅子が一対描かれる。
  • 67.染付 兎形皿 伊万里 17世紀中葉;(画像・解説)

    輸出された伊万里―華麗なる磁器
    4点

    青磁・瑠璃釉・銹釉―釉薬の美
  • 78.青磁 陰刻椿門 三足皿 伊万里;17世紀前期
  • 79.青磁染付 花文 三足皿 伊万里;17世紀中葉;青磁の皿の中央に染付けで花文を描く
  • 81.瑠璃釉金銀彩 猩猩文 瓶 伊万里;17世紀後半

    伊万里焼きの茶道具―伊万里の粋
  • 銹釉染付 松竹梅文 水指 伊万里;17世紀中葉;(画像・解説)
  • 銹釉 碗 伊万里;17世紀中葉

    暮らしのうつわー生活の彩り

    (22日)
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    館蔵春の優品展 水墨画・古筆と陶芸(陶芸) 五島美術館

    2007-04-04 | 陶磁器
    館蔵春の優品展 水墨画・古筆と陶芸(陶芸)
    2007年3月31日から5月6日
    五島美術館

    陶芸は、ほとんど昨年の春の優品展と同じ内容。*が昨年出展された品。昨年は、伯庵茶碗は、朽木が出展されていましたが、ことしは冬木。また、瀬戸黒茶碗 銘 武蔵坊が出展されていました。***は、2005年12月の館蔵茶道具取合せ展に出展。

  • 42 猿投灰釉長頸壺 平安時代
  • 43 瀬戸黒茶碗 銘 武蔵坊 銘は表千家九世了々斎宗左(内箱蓋裏);大振りで真っ直ぐな胴は、いかにも武蔵坊。
  • 44* 黄瀬戸平茶碗 銘 柳かげ 桃山時代;(リンク);内箱蓋裏に小堀十左衛門(1639―1704)が、「道のべの清水ながるゝやなぎ影しばしとてこそ立ちどまりけり」と西行の和歌を歌銘として記す。
  • 45* 黄瀬戸胴〆茶碗 桃山時代
  • 46* 重要文化財 鼠志野茶碗 銘 峯紅葉 桃山時代;(リンク); 美濃焼(岐阜県の陶器)の一種。形姿は逞しく、堂々としているが、成形が巧みなため、手に持つと意外に軽い。桃山時代の和物茶碗の代表作。銘は茶碗の景色からの連想。鉄釉を施した上に、亀甲文と桧垣文様を掻き落とした後、志野釉をかけて文様を白く浮き出させている。九鬼家伝来。 出光美術館の「志野と織部」からこちらに戻ってきて展示されていました。
  • 47* 志野茶碗 銘 梅が香 桃山時代;(リンク)「赤志野」と呼ぶ赤味を帯びた釉薬は、志野焼の中でも珍しい。志野釉(長石釉)と素地の中の鉄分とが作用して赤く発色する。松江藩主松平不昧(1751―1818)が所持し、『雲州名物』に記載がある。岐阜県土岐市の高根西窯から同手の陶片が出土した。
  • 48*** 黒織部沓形茶碗 銘わらや; (リンク)高台脇の漆の書付「わらや」は千宗旦(1578-1658)と伝える。

  • 49 重要美術品 伯庵茶碗 銘 冬木 江戸時代・17世紀; 小堀遠州箱書付、材木商冬木喜平次が所有。松平不昧公の「古今名物類聚」記載。(リンク)
  • 50* 長次郎黒楽茶碗 銘 千声 桃山時代; (リンク);銘は、表千家六世の覚々斎宗左(原叟 1678~1730)
  • 51* 長次郎赤楽茶碗 銘 夕暮 桃山時代;鴻池家伝来 銘は千宗旦。今回は、この渋みのある赤膚の茶碗の微妙な色合いの景色の前に佇んでしまいました。
  • 52* のんこう黒楽茶碗 銘 三番叟 17世紀 銘は裏千家九世石翁玄室;渋めの長次郎赤楽茶碗の横にのんこうの茶碗、対比が妙。
  • 53* 宗入黒楽茶碗 銘 あやめ;銘は表千家六世覚々斎宗左
  • 54* 乾山黒楽茶碗 銘 露堂々
  • 55 無地志野茶碗 荒川豊蔵作 1953年

  • 56* 古伊賀水指 銘 破袋 桃山時代;
  • 57* 古備前矢筈口水指 桃山時代
  • 58* 信楽一重口水指 銘 若緑 桃山時代
  • 59* 志野矢筈口水指 桃山時代
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    ボストン美術館(朝鮮青磁 Charles Bain Hoyt Coll.)

    2007-03-14 | 陶磁器
    ボストン美術館(朝鮮青磁 Charles Bain Hoyt Collection) 

    朝鮮青磁は、ほとんどがCharles Bain Hoyt Collection。12世紀と13世紀の朝鮮青磁がずらっと展示されていたが、13世紀のものに興味を覚えた。日本人好みが少し違うようで、朝鮮青磁のバラエティを感じることができた。たとえば、Cosmetic CaseとかConical Cupとかは初めて拝見。リンクをクリックして画像を楽しんでみてください。

  • 瓷象嵌菊花蓮花折枝文瓜形注子 13世紀 50.985
  • 瓷象嵌雲鶴文鉢 13世紀 50.1085
  • 瓷象嵌竹鳥文梅 13世紀 50.989
  • 瓷象嵌牡丹菊花雙鳳文盒 13世紀 50.989
  • 瓷象嵌菊花連珠文盒 Cosmetic Case 13世紀 50.1006a-b
  • 瓷象嵌牡丹文油 Oil Bottle 12世紀 50.1015
  • 瓷象嵌菊花唐草文馬上杯 Conical Cup 13世紀 50.999
    など。

    (14日)
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    将軍家への献上 鍋島 特別展 日本磁器の最高峰

    2007-02-16 | 陶磁器
    将軍家への献上 鍋島
    特別展 日本磁器の最高峰
    2007年2月10日から3月25日
    大阪市立東洋陶磁美術館

    たまたま時間ができたの初めて大阪市立東洋陶磁美術館に立ち寄る。昨年から佐賀県立九州陶磁文化館、MOA美術館と巡回したあと、たまたま大阪市立東洋陶磁美術館に巡回中だった。(このあと福島県立美術館に4月7日から5月20日に巡回する。)

    鍋島の優品は、昔、佐賀県立九州陶磁文化館に立ち寄った際に拝見しているはずだが、知識なく覚えがない。最近では「華麗なる伊万里 雅の京焼」展で数点、出光美術館で数点拝見した程度。

    今回は、系統的に230点が展示されていた。従来の鍋島焼の展覧会では、陶工および鍋島藩の事情に基づく変遷で紹介されて来たが、今回の鍋島展は、献上先である徳川将軍家の動きにより敏感に反応して変遷してきたということで展示が展開しているという。
    鍋島焼は、三代将軍家光のときに、中国磁器に変わる献上磁器として、有田の岩谷河内(いわやかわち)藩窯で誕生。伊万里市の大河内に藩窯は移転し初期鍋島は製造される。五代将軍綱吉の時代に隆盛期を迎え、吉宗の時代に隆盛期は終わる。その後十代将軍家治の田沼意次時代に新しい鍋島様式ができあがったという。

    第一章:草創期:西軍であった鍋島藩は、中国磁器の献上をもって徳川幕府との関係修復につとめた。1644年に中国の政権交代に伴い中国の磁器輸入にとまる。そのため将軍家献上に相応しい特別な磁器の開発が行われた。1651年家光死去の前日の内覧を経て、鍋島焼きの例年の献上がはじまる。

  • 色絵山水竹鳥文輪花大皿 鍋島報效会 佐賀県重文;1640-50;この大皿は景徳鎮を写したもの。
    初期の変り皿が何点か並ぶなかでも
  • 薄瑠璃釉色絵竜肝文変形小皿 今右衛門古陶磁美術館 1650年代
    などは見事

    第二章:成長期:藩窯の移転と生産体制の確立
  • 色絵鳳凰文皿 出光美術館 1670-80年代; 出光美術館名品選IIにて展示されていた 
  • 銹釉染付梅文変形皿 佐賀県立九州陶磁文化館 1670-90年代
  • 色絵野菜尽文皿 出光美術館 1680-90年代

    第三章:隆盛期:綱吉と元禄・鍋島様式の完成
    元禄時代に大名屋敷への御成りを盛んに行う中でより優れた鍋島焼が求められた。将軍にふさわしい精巧無比の食膳具が作るとともに、それまでは技術的に難しく少なかった大皿も多く作り出した。代表的な色鍋島の多くがこの時代に生まれた。
  • 染付童子雪合戦図三足大皿 粟田美術館 1690-1710年代
  • 染付鷺文三足大皿(重文)佐賀県立九州陶磁文化館 1690-1710年代
  • 染付雲文三足大皿 今右衛門古陶磁美術館 1690-1710年代
  • 色絵桃文大皿(重文) MOA美術館 1690-1730年代;桃の膚を点描で描いているのは吃驚。
  • 色絵橘文大皿 MOA美術館 1710-1730年代
  • 青磁色絵桃宝尽文皿 今右衛門古陶磁美術館 1690-1710年代
  • 色絵植木鉢岩牡丹文大皿(重文) 粟田美術館 1690-1730年代
  • 色絵藤棚文大皿(重文)九州国立博物館 1700-30年代
  • 色絵牡丹唐草文水注 静嘉堂文庫美術館 1700-30年代
    などなどなど。このコーナは凄いのひとこと。

    第四章:成熟期:吉宗と鍋島焼の成熟
  • 染付岩龍文大皿 マスプロ美術館 1710-40年代
  • 青磁染付芦波頭文皿 出光美術館 1710-30年代

    第五章 衰退期:家治好みの新鍋島様式
    ちょっと地味な染付けがならぶ。

    図録中の未展示は、73(染付松文三足大皿 サントリー美術館),76(染付雲文大皿 サントリー美術館),140(色絵梅山水文大皿 サントリー美術館),174(色絵栗文大皿 出光美術館), 46,59,163,196,199,200,202,211

    なお、大阪市立東洋陶磁美術館の次回の展示は
    開館25周年記念特別展「安宅英一の眼-安宅コレクション・美の創造者(仮称)」2007年4月7日から9月30日。楽しみ。

     




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    生誕120年 富本憲吉展 +富本憲吉の世田谷時代

    2007-01-13 | 陶磁器
    生誕120年 富本憲吉展
    + 特別展示 富本憲吉の世田谷時代
    2007年1月4日から3月11日
    世田谷美術館

    昨年2006年に生誕120年を迎えた富本憲吉の大回顧展、2006年8月の京都近代美術館を皮切りに巡回してきたが、茨城県陶芸美術館を経て、ようやく東京にやってきた。昨年の8月27日に放映されたNHKの新日曜美術館を今頃になって予習してでかける。

    ほぼ年代順に展示されてている。

    まずは、東京美術学校(現・東京藝術大学)図案科の卒業制作≪音楽家住宅設計図案≫(1908)。洒落た感じの設計です。そして、ロンドンに私費留学。留学中は、卒業制作にもありましたから興味があったのでしょう、ステンドグラス制作を学ぶ傍ら、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に通ったときの所蔵品のスケッチを行なっている。またウイリアム・モリスの作品にも接しったという。海路で旅した当時の写真があり、ピラミッドなどもスケッチしています。戦前の欧州行きは必ず船ですから、我々は一足飛びにヨーロッパに旅行してしまいますが、インドやエジプトなどを見て欧州をみると世界観も変りそうです

    帰国後、バーナード・リーチと出会い、作陶の道に入っていったという。楽焼をはじめ、白磁や染付を制作している。そして、世田谷に居を構える。そして飛躍となるのが、1936(昭和11)年の5月から10月までは、九谷(石川)の北出塔次郎の陶房に留まり、古九谷磁器の色絵技法を集中して研究した。秘伝の配合を教わり自由に色絵が可能になる。古伊万里風の作品も手がけているが、独自の図案を創造する。「模様から模様を造る可からず」という信念のもと、1941(昭和16)年は、定家葛の花(五弁)の写生から創案した四弁花連続模様が完成。色絵赤更紗模様飾壺などの作品となる。

    日本の伝統的な古伊万里、赤絵などの色絵磁器の技術と、(ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館でスケッチした)西洋やオリエントのデザインの上に、独自な日本的なモダンなデザインを創造したものが完成したということになります。

    このあたりから、この展覧会は豪華絢爛な作品が並び、それほど混んでいない展覧会場も、みなさんが引き込まれてゆっくりと鑑賞しているので、先に隣の作品を鑑賞したり作品の前にいったり来たり。

    さらに金銀彩の同時焼成を完成させた色絵金銀彩の技法を確立。銀にプラチナを使うことで煌びやかな色絵磁器を実現しているとのこと。さらに「羊歯模様」を考案。色絵金銀彩四弁花模様飾壺、色絵金彩羊歯模様大飾壺などの豪華絢爛でモダンな素晴らしい作品となる。

    作品のほかに、画巻、書、装丁、染織などが展示されている。作品のデザインをしたためた掛け軸、陶磁器論などもの書、日用使いの煎茶器なども洒落ている。自宅に作品が並べられている写真もあり、生活そのものが美であったようだ。裕福な家庭に生まれ、美を創造し、美に囲まれるハイソな生活。うらやましいような一生だ。

    1959年5月15日のNHKの映像が映されていたが、これはこれで、戦後の京都の様子や、教授となった時の模様などが見れて面白かった。たばこをふかしながら制作をしているようすがダンディ。肺がんで1963年に亡くなった。

    本展はさらに
    岐阜県現代陶芸美術館 4月7日から5月27日
    山口県立萩美術館・浦上記念館 6月30日から8月19日
    に巡回。



    昨年八月に本展覧会を知った時には、なぜ世田谷美術館と思っていましたが、1926年から終戦まで、富本憲吉は千歳村(現・世田谷区上祖師谷)に住んでいたというゆかりの地であったからということのようです。それもあるのか、常設展のほうに世田谷美術館の企画として「特別展示 富本憲吉の世田谷時代」が展示されていた。これが、また色絵磁器のような立派な作品でなく、日用の陶磁器が多数展示されていていい。上祖師谷の当時のようすの写真はもちろん、一枝夫人の卓球をする写真に加えて、夫人や子供の名前入りの湯飲み茶碗など、家族愛に溢れる制作が伝わってくる。



    田園交響楽
    平成18年度第3期収蔵品展
    2007年1月4日~4月8日

    熊谷守一のデッサン、師岡宏次の戦前戦後期の写真、当時の人々の活き活きとした表情、田畑のようすなど風景が懐かしい。
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    開館40周年記念 出光美術館名品展II(日本陶器など)

    2006-11-28 | 陶磁器
    開館40周年記念 出光美術館名品展II(日本陶器など)
    ―競い合う個性―等伯・琳派・浮世絵・文人画と日本陶磁―
    前期:2006年11月11日~12月3日
    出光美術館

    黄瀬戸、美濃、古九谷、仁清、柿右衛門、乾山、板谷波山などに陶磁器の優品は眩いばかり。唐津も味わい深い作品もあると認識しました。

    灰釉など
    名品展にならぶ壺はちょっと博物館の壺とは違う。奈良、鎌倉の壺など。工芸品として作陶されたものではないのではと思うが、ちょっとした美意識が漂う。その美意識がこの壺たちを現代まで伝来させたのだろうか?

    灰釉短頸壺 猿投窯   奈良時代
    灰釉牡丹文共蓋壺 瀬戸窯   鎌倉時代後期
    鉄釉蕨文広口壺 瀬戸窯   鎌倉時代後期
    灰釉壺 信楽窯   南北朝時代
     
    黄瀬戸、美濃窯
    黄瀬戸茶碗 銘 春霞 美濃窯   桃山時代
    志野山水文鉢 美濃窯   桃山時代
    織部蓬莱山文蓋物 美濃窯   桃山時代;兎の耳がながーい。

    奥高麗茶碗
    奥高麗茶碗 銘 秋夜 桃山時代;松平不昧公伝来 雲州蔵帖には「古唐津 秋夜」とある。 
    奥高麗茶碗 銘 さざれ石 桃山時代;腰のところは、たしかにさざれ石。  

    唐津
    唐津焼といえば、日用陶器が多いようですが、絵唐津柿文三耳壺など素朴な土の膚合いの中に美意識が。はじめて唐津の優品を拝見しました。

    重文 絵唐津柿文三耳壺(水指) 桃山時代

    絵唐津丸十文茶碗     桃山時代
    絵唐津葦文水指     桃山時代  
    朝鮮唐津耳付六角花生     桃山時代

    古九谷
    焼き物をまじまじと鑑賞し始めたは、昨年の東博の「華麗なる伊万里、雅の京焼」(記録はこちら)から。どうもその時には古九谷は大胆すぎて好きになれないでいたのですが、今回の古九谷は細部までキチンと仕事がされた優品です。やはり陶磁器の優品は個人が所持しているのですね。

    色絵亀甲獅子花鳥文大皿 古九谷   江戸時代前期
    色絵菊文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵山水文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵花鳥文大皿 古九谷 江戸時代前期
    色絵梅花鷽文富士形皿 江戸時代前期

    仁清
  • 重文 色絵芥子文茶壺 野々村仁清   江戸時代前期;仁清の壺は、茶壷だったのですね。この夏、徳川美術館(記録はこちら)で拝見した唐物茶壺 銘金花 銘松花 (大名物、信長所持)に比較しても、茶道具と捉えるとかなり派手な美意識ですね。面白いですね。

    柿右衛門
    柿右衛門の乳白色はいつみてもいいです。
  • 重文 色絵花鳥文八角共蓋壺 柿右衛門   江戸時代前期

  • 色絵花鳥流水文蓋物 柿右衛門   江戸時代前期 流水文がなかなかお洒落です。
  • 色絵花鳥文角瓶 柿右衛門 一対 江戸時代前期
  • 色絵狛犬 柿右衛門   江戸時代・元禄壬申(1692)銘;如何にも神社の前に座ってそうです。

    乾山
    優品揃い。
    重文 銹絵染付金銀彩松波文蓋物 尾形乾山   江戸時代中期
    色絵芦雁文透鉢 尾形乾山 江戸時代中期
    色絵阿蘭陀写花卉文八角向付 尾形乾山 五客 江戸時代中期
    色絵定家詠十二ヵ月歌絵角皿 尾形乾山 十二客 江戸時代中期
    銹絵竹図角皿 尾形乾山 絵/尾形光琳   江戸時代中期
    銹絵秋草図角皿 尾形乾山 絵/尾形光琳 江戸時代中期

    ●春日野蒔絵硯箱 柏に木菟蒔絵料紙箱 小川破笠   江戸時代中期

    色絵鳳凰文皿 鍋島藩窯 六客の内 江戸時代中期;鳳凰文の目出度い文様。

    色絵楓文透彫手焙 古清水   江戸時代中期;古清水の透彫りは優美です。  

    板谷波山
    葆光彩磁草花文花瓶 板谷波山 大正時代中期
    葆光彩磁花卉文花瓶 板谷波山 昭和時代初期
    彩磁桔梗文水差 板谷波山   昭和28年(1953);意匠が面白い。文字で説明しても要を得ないが、白地の花の花びらの間の三角の空間に小さく桔梗を描く。
    彩磁延寿文花瓶 板谷波山   昭和11年(1936);青地の磁器が美しい。
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    特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ @泉屋博古館分館

    2006-11-25 | 陶磁器
    特別展 中国陶磁 美を鑑るこころ
    2006年11月3日から12月10日
    泉屋博古館分館(東京)

    実はこの飛び石連休の期間に訪れた5つの展覧会の中でも、随一といっていいぐらい、予想を裏切る素晴らしい展覧会でした。「青磁の美―秘色の探求― 出光美術館」(記録はこちら)、「インペリアル・ポースレン・オブ・清朝 静嘉堂文庫美術館」(記録はこちら)と比較してということではありません。今月台北の故宮博物院(記録はこちら)で中国陶磁の名品ばかり見てきたあとの感想なのですから、この素晴らしさを判っていただけるでしょうか?

    泉屋博古館分館で開催されているので、いつものように住友コレクションが展示されているかと思いきや、多くの個人蔵の作品を含む陶磁器が展示されています。「鑑賞陶器」蒐集の過程で形成された中国陶磁コレクションの中で、日本人の高い美意識にあった作品を選んだとのこと。コレクターの愛蔵品や現代的な視点が加わっているいるからでしょうか、本当に優品ばかりです。

    展示室2は小品が、展示室1は優品が展示されています。まず素直に、(というか殆んど説明もないので)陶磁器自身に向かい合います。鑑賞陶器というだけあり、発色やデザインなど、引き込まれるようです。そして、(世界で数十点しかないという)汝官窯の青磁盤が1点あると気がついて、多分はじめて見るその深い色合いに感嘆。展示室にある図録を見ると、川端康成氏旧蔵品といいます。五彩龍鳳文六角瓶 明・万暦(在銘)は、梅原龍三郎旧蔵品。流麗で美しい川端文学と、賑やかな色彩の梅原作品を見るようだ、という解説。いとをかし。

    図録は購入しないまでも、会場でぜひ目を通されることを薦めます。展示説明が不親切なだけに、個々の作品に関して逸話は面白く書かれています。カラー印刷の再現性もなかなかです。

    以下、特に目に付いた優品を。
    3. 灰釉加彩官人俑 北魏 個人; 静謐な精神性を持つ北魏の俑。
    4.灰釉加彩駱駝 北斉 中国陶瓷美術館; 黄味を帯びた質感といい一寸上を向いた造形といい優品
    5.青磁蓮弁文五連燭台 南北朝 出光美術館;米国フレデリック・メイヤー氏旧蔵品、1974年売り立てにより将来。「青磁の美―秘色の探求― 出光美術館」(記録はこちら)でも展示されていた。印象的であったが、そのような来歴とは。
    6.褐釉貼花文瓶 隋から唐;貼花文が目を引く。
    10.重要美術品 三彩貼花文鳳首水注 唐 個人; 正統的な唐三彩とはすこし違った、釉薬をかけ流している。そこがまたモダン。

    29.青白磁牡丹唐草文瓶 北宋 景徳鎮窯 個人; 美しい青白磁の色、牡丹唐草文の浮彫りが幻想的な雰囲気、花びらのような瓶口の造形も見事。景徳鎮窯は、北宋時代の中期ごろは薄い白磁胎に青みの強い透明釉をかけて青白磁を完成させたという。

    13.青磁輪花碗 一対 耀州窯 北宋
    14 青磁波濤文盤 耀州窯 北宋;波濤文が見事
    15.青磁鳳凰唐草文枕 耀州窯 北宋 静嘉堂文庫美術館;なんて優雅な枕でしょうか。

    16.青磁盤 汝官窯 北宋 個人;北宋汝官窯は、1937年にパーシヴァル・デビッド卿が文献、作品を調査し、青色の釉薬が全面にかかった端正な造形の青磁を抽出し、汝官窯と提示。1980年代になり窯跡が河南省宝豊県清涼寺から発見され、推論が証明された。という。

    30.重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 南宋 東京国立博物館;大きな貫入が文様の大振りの輪花鉢。古来からの将来品。昭和9年に尾山得二氏の売り立てにより横河民輔コレクションに。とのこと。
    31.青磁管耳瓶 南宋官窯 南宋;こちらも大きな貫入が美しい。
    32.青磁瓶(米色青磁) 南宋官窯 南宋;米色青磁が2点。青磁は鉄分を還元して青や緑色の発色をさせるが、釉薬がとけるときにやや酸化気味になったときに、淡褐色の色調になる。米色青磁と呼ばれる。
    33.青磁洗(米色青磁) 南宋官窯 南宋 常葉山文庫
    32.33は、作風からいって南宋官窯と考えたいという解説もうなずける優美な造形と美しい色合いと貫入。

    34.青磁形瓶 龍泉窯 南宋(12から13世紀)
    35.青磁腰袴香炉 龍泉窯 南宋(12から13世紀)泉屋博古館
    36.青磁鉢 龍泉窯 南宋(12から13世紀);こちらも川端康成氏旧蔵品
    37.青磁鉢 龍泉窯 南宋(12から13世紀)
    さらに龍泉窯(12から13世紀)の美しい緑色の青磁が4点。

    青花も優品がならびます。
    39.青花双魚文盤 景徳鎮窯 明・永楽 大和文華館
    41.青花唐草文碗 景徳鎮窯 明・永楽 個人 
    44.青花龍濤文盤 景徳鎮窯 明・宣徳(在銘) 個人

    五彩など。典型的な明晩期の様式。故宮での勉強の成果でよく判ります。
    52.五彩魚藻文盤 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘) 大阪市立東洋陶磁美術館
    56.紅地黄彩雲龍文壺 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘) 大阪市立東洋陶磁美術館
    57.黄地青花彩花唐草文瓢形瓶 景徳鎮窯 明・嘉靖(在銘)イセ文化基金
    59.五彩龍鳳文六角瓶 明・万暦(在銘) ;梅原龍三郎旧蔵品

    単色釉磁器の優品
    63.桃花紅団龍文鉢 景徳鎮窯 清・康煕(在銘)
    64.白磁団龍文鉢 景徳鎮窯 清・康煕(在銘);この2点は色合いといい、龍の浮彫の文様といい、とても上品。
    65.黄釉輪花盤 景徳鎮窯 清・雍正(在銘)イセ文化基金

    67.琺瑯彩西洋人物連瓶 景徳鎮窯 清・乾隆(在銘)永青文庫

    このほかにも素朴な味わいの風情の陶磁器、また私の趣味ではないですが、
    48.重要美術品 法花蓮池水禽文瓶 明 イセ文化基金
    61.重要美術品 五彩龍鳳唐草文合子 明・万暦(在銘) 個人
    など。

    古来、先進文化としての憧憬に加え、茶の湯という一つの世界観を加味して形成されてきたわが国の美術蒐集の歴史の中に、欧米風の美術品鑑賞のスタイルとして中国陶磁器を純粋に鑑賞の対象として賞翫する見方が導入されたのは大正中期頃からと考えられます。そして昭和初期には「鑑賞陶器」という言葉も生まれ、中国陶磁の蒐集が美術愛好家の蒐集対象の主たる一分野となりました。

    さらに戦前の本格的な鑑賞陶磁器コレクションを礎として、引き続き戦後においても蒐集は盛んに行われ、コレクターの増加とともにいくつもの優れたコレクションが形成されました。それはわが国の蒐集家たちが深い見識をもって接し、その崇高な美の世界を追求してきた成果に他なりません。

    今回の展覧会では、「鑑賞陶器」蒐集の過程で形成された中国陶磁コレクションのなかから、「コレクタ-ズ・アイ」ともいうべき観点に立ち、作品が鑑賞されてきた一側面を提示し、その奥深さや幅広さ、美質を堪能し、さらにそれを可能とした日本人の高い美意識、いうなれば美を鑑るこころを感じ取って頂ければ幸いです。
    コメント (1)
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    國立故宮博物院

    2006-11-22 | 陶磁器
    國立故宮博物院 

    何年ぶりかに台北にある國立故宮博物院を訪れる機会を得ました。2回目です。

    國立故宮博物院は、現在は改装中で半分のスペースしか空いていません。しかし2006年5月18日の東側リニューアルオープンしたため非常に高級ホテルのロビーのように広々として綺麗です。入口には「八千年歴史長河」と垂れ幕がかかっていて、中国三千年ではなく、八千年の歴史です。

    今回展示されていたのは、ほぼ常設展のみ。特に明から清時代の陶磁器などの工芸品の傑作が展示がハイライトです。清代の陶磁器は、たまたま静嘉堂文庫美術館でインペリアル・ポースレン・オブ・清朝で少し理解が深まっていたので、世界最高の傑作を見るとその美しさと技巧に感動も新たです。また明代の陶磁器も美しい。また中国漆器も最近興味をもって東京国立博物館で鑑賞していたのですが、木質が違うのでしょうが、レベルの違い、特に清の漆器は精密な細工のされた漆器は、驚くべきものでした。書画は,一室だけ特別展示されていたのですが、時間がなくて鑑賞できず残念。

    なお、12・25に全館リニューアルオープンの予定で、記念特別展「大観」(12/25-3/25)も同時に開催される予定。 大観─北宋書画特別展、大観─北宋汝窯特別展(北宋時代の汝窯が宮廷の御用窯だったのは、1186年から1106年の20年間という短い期間で、世界で70点も現存しないという汝窯の作品のうち、故宮に収蔵されている21点全てが展示。イギリスからも3点の汝窯が展示されるそうだ。)がテーマです。

    さて、國立故宮博物院のWEB http://www.npm.gov.tw/はすぐれものです。
    「現在の展示内容」は、展示のガイドとして。「コレクション」は、個々の作品のガイドとして。
    (旅々台北www.tabitabi-taipei.com/youyou/200605/index.html というサイトも日本語公式ガイドとしてある。)

    「音声ガイド」150元はお勧め。リストをもらえるのでメモがとれます。夕方15時過ぎに訪れたら、これだけはお勧めだという赤いチェックをしたリストをもらえたので、さらに精選して優品を短い時間の中で鑑賞できました。ただ、「現在の展示内容」、「コレクション」「音声ガイド」は、微妙に内容が異なり、今回、「音声ガイド」の作品を中心に見たのですが、「現在の展示内容」の写真にある作品や、「コレクション」に掲載されている作品を見落としていました。どうしても急いで回ると見落としてが出てきてしまいます。また、写真撮影禁止(6月1日から禁止になったそうだ)なのも、ガイドブックがないだけに不便ですね。

    団体旅行やガイドの人に案内してもらうと、それはそれで、最近この作品はオークションでいくらだったというような博物院では表立っていえないような情報が得られるわけですが、やはりじっくり見るには一人で回るしかありません。まあ、日本語の団体向けの説明は、そこらかしこで立ち聞きはできますね。

    今回は、時間がなくてタクシーで乗り付けて、タクシーで戻りました。片道250元弱でした。帰りは白タクに色々声をかけられるのですが、まあその手には乗らないほうが無難でしょう。また、ホテルの場所によるのか乗車拒否もされるので、いろいろなタクシーに声をかけるしかありません。




    さて、3階は、時間がなくてじっくりは見ていないが、
    古典文明-銅器時代 (1600-221B.C.E.) では2点の、文字を刻んだ銅器が特に自慢の品だそうだ。

    西周晩期 毛公鼎

    銘文は、「周宣王が即位した際、政治を充実させようと思い、おじの毛公を招いて国家内外の大小の政務にあたらせたところ、自らの利益にこだわることなく勤勉に務めたので、その結果として厚く褒賞した。毛公はそれを子々孫々に伝えるためにこの鼎を鋳造した。」とのこと。

    春秋中期 子犯和鐘1-12

    八点の鐘により構成されている。それぞれに銘が刻されており、合計132文字、晋文公(重耳)が流浪の末、19年後に晋に帰り政権を掌握、晋楚城濮之戦などの重要な史実が記されている。製作者は子犯、即ち晋文公(重耳)のおじの狐偃である。


    新装飾の時代-明代前期の官営工房 (1350-1521)
    まずは、青花がずらっとならびます。「明代における青花磁器の製作は、洪武時期の過渡期を経て、永楽と宣徳の両時期に最盛期を迎えた後、成化に至り細緻化が進み、青花磁器は景徳鎮官窯の中心となった。」とのこと。「明永楽 青花穿蓮龍紋天球瓶」などが中央のガラスケースにいれて特別に展示されています。

    今回、すごいとおもったのはこの「顏色釉及釉上彩」のコーナー。「洪武紅釉、永楽甜白、釉裡紅、緑釉、紫釉、黄釉、孔雀緑釉など、各種の色釉は、明代の官窯に新しい風潮を生じさせ、後世の五彩や豆彩誕生の基礎となる。 釉下彩である青花はしだいに釉上単彩、双彩、三彩などと結び付いて多様な展開を見せ、五彩や豆彩など史上例を見ない各種の新しい技法が完成した。」とのこと。

    まずは、紅釉の名品。モダンなデザインの磁器で現代の北欧のデザインを見ているようです。
  • 明宣 祭紅霽青刻花蓮瓣滷壺一對

  • 明宣 宝石紅僧帽壺

    そして、豆彩(鬥彩)豆彩とは高温で青花で絵の輪郭をつけて焼いたあとに、低温で絵の内部にカラフルに彩色して焼く技法。釉下の青花と釉上彩の色合いは鮮明な対比をなします。清朝の豆彩は静嘉堂文庫美術館で拝見したが、今回のものは、明成化時代の豆彩。
  • 明成化 鬥彩雞缸杯

  • 明成化 鬥彩葡萄杯
  • 明成化 鬥彩花鳥高足杯 

    官民競技的時代-明晩期(1522-1644)
    世宗嘉靖(1522-1566), 穆宗隆慶(1567-1572),神宗万暦(1572-1620),熹宗天啓(1621-1627)思宗崇禎(1628-1643)年間。色彩美と吉祥紋様の流行, 文人が先導した古典趣味と収蔵の風潮,商業繁栄下の独立工匠と民間窯業のテーマで展示されている。

    吉祥紋様の流行のところには、お馴染みの龍とか鳳凰デザインの陶磁器がならぶ。
  • 明 嘉靖 嬌黄緑彩鳳凰方洗


    盛世の工芸-清代 康熙・雍正・乾隆 (1662-1795)
    そして、康煕(1662-1722),雍正(1723-1735),乾隆(1736-1795)時代の工芸。陶磁器だけでも、唖然とする精緻さ。

    漆器:「乾隆時代の剔紅は、明代の伝統的な技法を継承し、細やかな地紋とすっきり明瞭な主紋、重ねられた漆の層の色彩変化を下地に、主題の図案が強調されています。このような重なる彫刻の層をはっきりとさせた技法はしだいに連続した紋様や立体感の強調、始まりと終わりがぼかされた自然な線などの新しい風格へと変化していきました。」ということ。明代の漆器を東京国立博物館でみていて、故宮博物院の明の漆器は、彫りが深いと思いましたが、さらに、この清の漆器は、さらに精緻を極めています。

    陶磁器として、
  • 清乾隆 粉紅錦地番蓮碗;
    全体に紙の如く薄く、錦のように華やかな紋様、色彩は淡く上品で、線はくっきりと描かれており、乾隆官窯の代表作とのこと。ピンクの底釉が華やか。

  • 清雍正 画琺瑯蟠龍瓶;黄色は皇室を象徴し、牡丹は富貴を表しているのでしょう。

  • 清雍正 琺瑯彩花鳥図碗;有田など比べると琺瑯だけあって精緻な文様です。


  • 清乾隆 黄釉粉彩八卦如意転心套瓶; 何と回転します。


    走向現代-清晩期(1796-1911)
    このコーナーには、前回訪問のときに記憶のある有名な作品「肉形石 」「翠玉白菜」などの玉器や「象牙鏤彫提食盒」などどうやって制作したのといいたくなるような象牙による工芸品が並びます。「光緒 緑地魚龍図花式瓶」「嘉慶 紅釉描金蕃蓮罐」など色彩鮮やかな陶磁器も。

    画像はSRCリンクです。
    (11月7日)
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    光悦と樂道入 二つの樂茶碗 ふたりの交友 @樂美術館

    2006-10-21 | 陶磁器
    光悦と樂道入 二つの樂茶碗 ふたりの交友
    2006年9月12日から11月26日
    樂美術館

    「そうだ。京都へ行こう」とJR東海の口車に乗せられて、いや新幹線に乗って、日帰りで行ってしまいました。夏に樂美術館に寄って(記録はこちら)、この秋は、三井記念美術館と樂美術館の共同企画があると知ったときには、また来たいなぐらいに思っていた。三井記念美術館で(記録はこちら)長次郎の茶碗の侘び錆とノンコウ(道入)の光を楽しむ作風の違いを楽しんだときは、まだ誘惑を抑えていました。しかし、9月27日の日経新聞で編集委員の竹田博志氏が、東西の楽焼の展覧会を「これは一足早い眼の正月の到来だ」「長次郎と光悦という楽茶碗の両雄の至芸を心ゆくまで堪能できるのは誠に痛快なことだ」と記事を読んでしまうと、やはり両展覧会とも拝見したくなるのを抑えきれなくなってきた。
    本当ならば、11月にゆっくりと京都を訪れればいいのだが、3日からの連休は宿ももう取れない、23日から飛び石連休は紅葉で京都はごった返しているので、紅葉以外のものを拝見するには落ち着かないということで、時間の取れた、明日は時代祭りという間隙を縫っていってきました。
    到着したのは10時過ぎ。まばらな人出でゆっくりと鑑賞できます。

    当代が、強く意識する光悦の陶芸に的を絞った企画で長年あたためてきたテーマだという。展示は、光悦と道入(ノンコウ)を混ぜて展示している。図録には展示作品がすべては掲載されていないが、メモを取ってこなかったので、図録に収録されている名品のみを列挙して、少しだけご紹介。大満足でした。

    なお図録には、当代樂吉左衛門光悦茶碗の身体性、道入茶碗の視覚性というエッセイが掲載されているが、読み応えがあります。これもお勧め。

    本阿弥光悦
  • 黒樂茶碗 雨雲 重要文化財 三井家伝来 三井記念美術館蔵; 口端の切れ味、釉薬を掛け外し妙の面白さは、昨年に三井記念美術館ではピンときていなかったが(記録はこちら)、1年たつと納得。米国の家具は、新品でも虫食い等をつけ古さを誇張するが、そんなことがふと頭をよぎった。
  • 赤樂茶碗 乙御前 江岑書付 益田鈍翁 平瀬家 森川家伝来; 益田鈍翁が外箱に「たまらぬものなり」と書付し嘆賞したとう。その丸みをおびた姿と口部は片方は端反り、片方は内に抱え込むひしゃげている。造形の妙。図録では横からの写真しかなくその様がよくわからないのが残念。
  • 毘沙門堂 山科毘沙門堂 高野是間 鴻池伝来 ;11/8から展示。残念。
  • 飴釉樂茶碗 紙屋 加賀紙屋家 酒屋宗左衛門; 飴釉のべたべたした面白みとともに、造形は、正面から見て右手の腰の部分が丸みをおびているのに、左手はまっすぐに下りている。当代の樂吉左衛門氏が光悦茶碗を仮名文字にあてはめてみたときに、紙屋は「ぬ」に例えているのもさもありなん。
  • 黒樂茶碗 七里 伊勢屋 益田克徳 益田鈍翁 五島家 五島美術館蔵
  • 黒樂茶碗 東 三井次郎左衛門家伝来 北村美術館蔵
  • 黒樂茶碗 村雲 樂美術館蔵; 現在、東京で展示中。
  • 赤楽筒茶碗 弁財天 三谷宗鎮書付 後藤三右衛門
  • 飴釉樂茶碗 園城 松永耳庵旧蔵
  • 赤樂茶碗 大ふく
  • 赤楽筒茶碗
  • 黒樂茶碗 水翁 頴川美術館蔵
  • 黒樂茶碗 朝霧
  • 飴釉樂茶碗 立峯 樂美術館 
  • 飴釉樂茶碗

    樂道入(ノンコウ)
  • 黒樂茶碗 稲妻 ノンコウ七種之内 不審菴伝来蔵 表千家蔵;表千家では家元襲名の際にだけ用いられる特別な茶碗。見込みにひかる赤釉が稲妻として光る。ぞくぞくとした。
  • 黒樂茶碗 青山 加賀七種之内 青山将監 亀山伊右衛門伝来
  • 黒樂茶碗 獅子 ノンコウ七種之内
  • 黒樂茶碗 桔梗 加賀七種之内 木倉家長右衛門 木谷藤右衛門伝来;見込みの景色が六弁の 桔梗の花のようにみえることから名づけられたという。
  • 黒樂茶碗 木下 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 残雪 了々斎直書 鹿嶋屋広岡家 伝来 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 寿老人 覚々斎書付 鴻池善衛門 馬越恭平伝来
  • 黒樂茶碗 若緑 啐啄斎書付 鴻池家 戸田露吟伝来
  • 赤樂茶碗 禿 如心斎書付 樂美術館蔵
  • 赤樂筒茶碗 山人 一燈書付 樂家旧蔵 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 笹の絵 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 霜夜
  • 黒樂茶碗 羽衣 覚々斎書付 小曽根家旧蔵
  • 黒樂平茶碗 燕児 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 撫牛 樂美術館蔵

    光悦書状
    光悦が樂家を徳川家に引き合わせたのではと推測している書状。利休なきあと、樂家も大変だったようで。辻惟雄氏の「ギョッとする江戸の絵画」でも、狩野山楽は、豊臣家の遺臣だと幕府に狙われ、松花堂昭乗の徳川氏へのとりなしでようやく許されたが、外様扱いだったという話が書かれていました。
  • 曾我又左衛門宛 「茶碗屋吉左父子~」 樂美術館蔵
  • ちゃわんや吉左宛 「ちやわん四つ分ほど~」 樂美術館蔵
  • ちゃわんや吉左宛 「此ちやわんのくすり~」 樂美術館蔵
  • 前田家家臣某 宛 「小袖拝領の文~」 樂美術館蔵

  • 光悦 蓮下絵百人一首和歌断簡 後鳥羽院
    伸びやかな光悦の書が素晴らしい。元は巻子本。前半25首、後半30首は関東大震災で消失。
    GOOGLEするとMIHOMUSUEMやニューヨーク・バーク・コレクション展や出光美術館で昨年秋に開催された「京の雅び・都のひとびと」でも別の箇所が展示されていたようです。
     
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