ホテルオークラでの
展覧会:ヨーロッパと日本~きらめく女性たち~でフランソワ・ブーシェの《ラブレター》(1745)とジャン・マルク・ナティエの《ラ・フェルテ・アンボー公爵夫人》(1740)を見ていらい、ロココが見たくてたまらなかった。
ミュンヘンのアルテピナコテークでは、ロココといえるものはMaurice Quentin de la Tour (1704 - 1788)の
Mademoiselle Ferrand Meditating on Newtonと Fragonardが1点など数点しか展示してなく一寸残念におもっていたのだが、今回のN.Y.のMETとFrick Collectionで何点かに出会えた。
METでは、
Mezzetin, probably 1718–20
Jean Antoine Watteau (French, 1684–1721)
図版
The Interrupted Sleep, 1750
François Boucher (French, 1703–1770)
図版
The Toilet of Venus, 1751
François Boucher (French, 1703–1770)
図版
Madame Marsollier and Her Daughter, 1749
Jean Marc Nattier (French, 1685–1766)
図版
Frick Collectionでは
邸宅の壁にBoucherと Fragonardの連作をそれぞれ埋め込んだ部屋がある。どちらも夫人用の部屋だが、こんなロココの絵画で飾られた部屋にいると本当にお姫様気分になれるだろう。
Boucher Room - Arts and Sciencesの連作, 1750-52
the Fragonard Room - The Progress of Loveの連作,(J.P.Moraganから75万ドルで購入した。)
そのほかにたとえば、
Boucher - The Four Seasonsの連作, 1755
があります。特にこの《冬》の女性の表情は非常に魅力的です。《夏》は水浴を描きFrick Collectionの唯一のヌードということ。
Boucher, Madame Boucher, 1743
Drouais, François-Hubert (1727-1775) The Comte and Chevalier de Choiseul as Savoyards, 1758
図版はこちら
上記のBoucherの作品は、Madame Boucherを除くとすべてルイXV世の愛人であったポンパドール夫人Madame de Pompadourの依頼による作品。また、FragonardのThe Progress of Loveは、同じくルイXV世の愛妾であったデュバリー夫人の注文によるもの(ただし、この絵は夫人から画家へ返却された)。
このような作品が時を経て、米国の富豪のコレクションに加えられたのは一寸不思議な気もしたが、米国の富豪の邸宅を飾る絵画として、富豪の夫人たちが絵画の購入に意見をした結果として当然かもしれない。つまり、Boucherの描く世界は、史上はじめて女性が発注した絵画であり、女性の好みであったのかもしれない。そのような絵画を富豪の夫人が好んで不思議があろうか。
同時期に収集されたコレクションとして、アルテ・ピナコテークの絵画のロココに力がはいっていないのも、国王ルードヴィッヒ1世やルードヴィッヒ皇太子が収集したからであり、当然かもしれない。
ウィーンの美術史博物館でヌードが多く一寸辟易したが、やはり男性好みの絵が集められたのであろう。Frick Collectionでは、自宅の邸宅にヌードを飾ったりしないというのが20世紀はじめの富豪の道徳観であったのだろう。
ロココの良き家庭を描いた絵画というのも、米国の富豪に好まれたもう一つのロココの分野であろう。ドールエDrouaisのショワーズール家の兄弟を描く絵画は、良き家庭の手本として、米国の富豪の宗教観にあっていたのだろう。
ドールエの隣に、ルノワールRenoir, Pierre-Auguste (1841-1919)の Mother and Children, painted probably c.1876-1878という第二回印象派絵画展に出展された大作が飾られているが、それも、かわいらしい娘を描いた、良き家庭の象徴のような作品であり、通じるものがある。
他のフリック・コレクション訪問のBLOGはこちら