帰って来た野良犬

野良犬、野良猫への餌やりには非難が多い。
私は基本的に野良に手は出さない。
見る、愛でるだけに止める。
無責任な愛は逆に可哀想だと思うからだ。

野良を生んだ背景には人間のエゴがある。
愛されなければ生存が難しいペットを、いや命を
ゴミ同様にポイしたナニヤツかの仕業の生んだ結果。

そのすべてを救う力もないから、哀れを感じながら、
元気で生きよとエールを送る。


近所の奥さんは直接行動に出る。
哀れなワンコを飼う目的で餌付けを開始した。
近所からは非難の雨あられ。
野良は幼児ほどの大きな成犬だった。
恐怖を感じる大きさだ。
しかも、かなり大きくなって捨てられたらしく、
最初は人追いをしていた。
彼女はそこに余計、哀れみを感じたらしい。

犬小屋に首輪も用意されて、半年。
辛抱に辛抱を重ねて後一歩で
飼い犬になってもらえそうな
ところまできて、
事件が起こった。

業を煮やした誰かが
ワンコの頭から薬剤をかけた。

完全な人間不審となり
姿を消したと彼女の口から聞いた。
頭の毛が抜け、食べる事も出来なくなった状態だったと。
私は死をイメージした。


あれから半年か？
今朝のウォーキング途中で
痩せたワンコを見た。
帰りにも同じ場所で座りこんでいた。
前足だけソックスをはいたように白い。
間違いない。
あのワンコだ。
あばら骨が浮いているが、
きっとそうだ。
あそこは彼女がワンコに接触を試みていた場所。
生き抜いて帰って来た。


出勤直前まで待って、
彼女に電話した。

『貴女を待っている』と。

今度こそ、飼い犬に成れますように。




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