夢色の風にのる猫 (1978年) 価格:¥ 735(税込) 発売日:1978-02 |
この本は、手のひらサイズよりやや大きめの、猫の詩画集です。
高校生のとき、大好きだった本でした。
詩は、熊井明子氏、写真は西川治氏だったかと思います。
この本の中の一節でいつも思い出すのは、“私たちは欠けたところのある輪で、猫を抱くと、それがぴったりふさがるのです”という一文です。
ウチの老猫あやは甘ったれなので、抱くとたいてい喜びます。
そうして、こちらの身体の凸凹にぴったりとパズルみたいに身体を合わせようとするので、そのたびに、この詩のことを思い出しました。
けれどあやの具合が悪くなってここ数日は、ちがう詩を思い出すようになりました。
市場の野菜売りのおばさんに、若い女の子が、“私の猫がもう4日も帰らない”と打ち明ける詩でした。夜も眠れないし、食事ものどを通らないと。
するとおばさんは新鮮な赤カブを女の子にあげて、これに塩をつけておあがり、と勧めたうえで、こんなことを言います。
“あんたたちちょっと間違ったね。その猫が人間に生まれるか、さもなきゃあんたが、猫に生れればよかったのに”
“でも人生なんてほんの束の間。来世は、二人とも人間に、でなけりゃ二人とも猫に生まれ変われるだろう”
読んだときは、詩の中の少女と同じくらいの歳で、“人生なんて束の間”という言葉が実感できなかった。
でも、今も分かったわけではありませんが、その一節が、妙に最近、心にしみるのです。
老いた猫と過ごす一日一日も、いっそう大切に思えるのでした。