月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

11月、朝の空

2012-11-03 19:05:09 | 春夏秋冬の風


ここ数日、夕方5時になると辺りはもうすっかり暗くなってしまうので、
1日がほんとうに早く終わってしまう気がする。
今朝は、なっちゃんを5時50分に起こして(本人に頼まれたから)、
勉強の邪魔にならないようにご近所の界隈をウォーキングした!
生まれたばかりの朝の空気だ。この冷たさ、気持ちいい!

すると、人間の脳の記憶というのは不思議なもので、
薄い茜色に染まった朝の空を見て、
遠いアメリカの「デトロイト」で見上げた茜色の空を思い出した。

7年前(もうそんなに経つのだ)、
初めての海外出張取材で訪れたアメリカ。

初日。
アメリカの綿花業に携わる商社の人々が開催してくれた歓迎パーティの翌朝に、
5時半に目が醒めてしまって、ホテルの部屋のお風呂に入り、
それから早朝散歩した時に見上げた雲の色や湿気を含んだ冬前の空気の冷たさは忘れない。
そう、水でうすくのばしたような、茜色のきれいな空だった。

あの時も、これから起こりうる不安な想いに押しつぶされそうになりながら、
澄んだアメリカの空気を肺の中いっぱいに吸い込んだのを覚えている。

そうだ、あの時も秋。11月になったばかりだった。

夜が明けたばかりのデトロイト空港に飛行機が降りていくなか、
初めてみるデトロイトの地と飛行場をずっと窓からみていて、
この国の木々の葉はなぜあんなに赤茶色や錆び色をしているのかと…。
よく考えてみたら、
それが初めて見るアメリカの紅葉だったのだ。

ほんとうにビックリするほど日本のそれとは違い、
とても紅葉を美しいとは思えなかった。
おそらく昼夜の寒暖差が日本ほどにくっきりしていないのだろうな。

京都の社寺で見る、緋色や朱や山吹色の美しい葉っぱの色は
10日間旅している間、一度として見なかったな。

カリフォルニアのシエラネバダ山脈から続く広い大地、
山々に木々はなく、丸はだか当然で、日本とは全く違っていた。
けれど、地球規模というか、
スケールが違う大きさ、というのをまざまざと感じた。ハイウェイはガタガタ道で車窓から眺めた広い農地は地平線の向こうまで波打っていて、道路の近くには豚や山羊や羊たちが普通に放牧されていた。

ひとつ思い出すと、記憶の断片が数珠つなぎのように後から後から
湧き上がってくる。
あの時、一緒に旅をした20人もの商社の人々からもらった言葉の数々や、
ものすごく厚みのある、固い、赤身のステーキ肉。甘い濃厚なバタークリームのケーキに、極彩色に飾られた山盛りのデザート。
あれはアメリカで食べたから美味しかったのだろうな、とか。

朝の散歩はいい。きっとたっぷり眠って頭が冴えているから、
記憶も鮮明であるのだろう。


先週、髪を少し切ってパーマをかけた。

自分がこのところ、小さく思えて、オーラが乏しいような気がしたから。

ちょっとだけ、空気を含んだカールでふんわりさせて、

自分をとりまく雰囲気を華やかにしたいなあと思ったのだ。

私がパーマをかけたりカットをしたりする美容室は
北浜の有形重要文化財にもなっている芝川ビル2階の「アトリエ・スタンズ」。
デザイナーはただ一人(四ツ橋の人気店を解体した)、この人とは15年来の付き合いで
かつてはパリコレクションなどで、ヘアメイクも担当したことがあると聞いて新聞記事で
インタビューをさせてもらったこともある。
プロ意識の強い職人肌の人だ。

今週から新しい仕事がまた少し入ってきた。
担当してくれるデザイナーさんは新しい顔ぶれの人も。
それぞれに持ち味があって刺激される。この前から、資料を集めて向き合っていた新規の仕事は、ラフと構成案が決まり、
クライアントの感触もよかった。

仕事も家のことも、充実した11月になればいいな!うん、絶対にそう信じよう。