センター試験の前日のメニューは何にしようかと考えたあげく、
メイン料理は「鰻」にした。
私はここのところ、ひどい歯痛に悩まされていて、肩や首にシップを貼ったり、
鎮痛剤「イブ」にお世話になったりしながらどうにかやりすごし、
それでも夜中には何度も目がさめて何時間も痛くて眠れない日々が続いていたので、
もう我慢できないとばかりに、センター前日に歯医者に行く定めになってしまったのである。
「ああ、一番奥が虫歯ですね。次は神経をぬいてもらいます」
と診察は10分で終わり。痛みの根本に薬を入れてもらって歯医者を後にする。
それから大急ぎで最寄りのデパートへと駆け込む。
もうすぐ彼女が塾から帰ってくるから、今日はちょっとだけ奮発しなければ。
真っ先に目に飛び込んできたのが、葉厚のおいしそうな小松菜だったので、「とようけ茶屋」でお揚げを買った。
明日のお弁当用は縁起を担いで「一口かつ」にしよう。
確か「365日受験生の母ができること」の渡辺あきこさんの料理本にも、
ノリおむすびとカツは入っていたしね!
それから、高野山の「ごま豆腐」。
「ビゴのパン」でカレーパンとメロンパンとフランスパンを買って、
この日の買い物のフェナーレは鰻萬の「鰻蒲焼き」2千円也!
高い!高いが鰻は、たんぱく質もビタミンA・B1・B2も豊富だ。
なにより稀少な静岡産のよく身の締まった鰻が店頭に並べられていたのを見たからには、買うしかないね。
それから晩御飯の買い物を終える頃に、ちょうどメールがあって
駅の駐車場で待ち合わせして、一緒に帰ったのだ。
吐く息が白い。明日は寒くなりそうだ。
7時半には、「小松菜とあげのたいたん」と「胡麻豆腐」と「鰻の蒲焼き」、「ポテトサラダのブロッコリー入」が食卓に並んだ。
センター前日はさすがにテレビは付けないらしい。
そして。食事が終わった後で軽く流す感じで勉強するのかな、と思っていると
なんと前日だというのに、北野天満宮でもらったハチマキを頭に巻いて、塾の日本史の資料問題や
ファイナル演習の5冊分を必至でインプット作業らしい。
おいおい、本気モードですか。
5冊分を一気に覚えた後で、倫理・政治経済にとりかかるって?
本当に大丈夫?
アスリートだって本番のパフォーマンスを成功させるには、
前々日までに仕上げて、前日は軽く流すんじゃないの。
いよいよ心配になってきたが、仕方ない。笑顔、笑顔だ。
彼女は11時にお風呂にはいって、まだ参考書をベッドに持ち込む始末。
「明日は早く1時間前に開場につくから「陰山の倫理政経の半分は目を通せるし…」
唖然とした。
あんた昨日まで一体何やっていたのよ…。
ああ。今晩は眠れるだろうか。
それから私は眠る前に、鉄瓶でお湯をわかし、熱い白湯をいれて飲み干し、
ざわつく気持ちのままで12時半には床についた。